今回は8代目になる「新型スズキ アルト F」を試乗レポートします。昔のスズキの軽自動車を彷彿とさせるようなレトロな顔をしています。
外観
水冷2ストロークエンジンをリアに搭載したRRの軽自動車、3代目スズキフロンテ(GT-W)に似たレトロなフロントマスクです。
アルトはフロンテから派生したモデルですから、意図的にもチーフとして引用したのでしょう。
そのため、団塊の世代の方の中には、懐かしい思いでこの車を見ている人もいるのではないでしょうか。
これは、ホンダN-ONEと同じ手法ですね。
Aピラーが大きく傾斜しており、左前方に死角が多いです。またCピラーも傾斜が大きく、さらに太いデザインなので左後方にも大きな死角があります。
背が低く、ぐっとキャビンが絞り込まれたデザインですが、居住スペース以外が絞り込まれているだけなので、最低限のスペースは確保されています。
後部座席に人が乗る場合は、屋根が短い分、頭の後ろに日差しが当たりやすくなります。夏はちょっと厳しそうです。
この絞り込まれたキャビンは、デザイン上の大きなポイントになっていますが、同時に鋼板の使用量を減らすとか、軽量化などの効果もあります。
実はこの絞り込まれたキャビンのデザインは、初代アルトのキャビンがモチーフになっています。
ボディ各部に、こういった過去のデザインからの引用が目立ちます。
内装
質感は軽自動車として標準的なレベルで、値段相応なものです。
部品を共用化しているので仕方がないのですが、ステアリングとインパネのデザインがちぐはぐで、ちょっと気持ち悪いです。
できれば、ステアリングをもっと単純でふくよかな円のデザインにするなどして、使い回しても違和感のない処理にして欲しいです。
インパネも、変に上質に見せようとしていて、かえって貧乏くさくなっています。
シートは昭和の軽自動車を思わすような安っぽいデザインですが、これは安い自動車なのでこれでいいと思います。
座り心地は、小さいながらも上手く体重を分散してくれる良いシートです。長距離は無理でしょうが、この車の使われ方を考えれば十分だと思います。
シート表皮のプリントが、田舎臭くて悲しい気持ちになります。ざっくりした無地の素材にすれば、コストを上げずおしゃれに出来ると思います。
フロントドアが開閉具合に応じて、2段階の角度で止まる工夫がしてあり、これは狭い駐車場で便利だなと思いました。
エンジンルームを短く設計し、その分室内長を長くしていますが、前後が絞り込まれているためあまり恩恵は感じられません。
エンジンとミッション
DOHC12バルブ吸排気VVTエンジンと5AGSというロボタイズドATが組み合わされます。
この5AGSは、マニュアルミッションに自動シフトチェンジ機構がついたオートマチックの一種です。
AT限定免許で乗れますが、きびきびしたマニュアルシフトのような操作感を楽しめます。
ATとMTの利点を合わせ持つ優れたミッションです。
マニュアルシフトすると小気味よくて楽しいミッションですが、機械まかせにすると燃費を重視した緩慢なシフトスケジュールになります。
CVTモデルより若干エンジン出力が強化されています。
620kgの超軽量ボディとの相性は抜群で、軽いボディを軽快に走らせます。。
足回りとハンドリング
ロールしつつも腰砕けになるようなことはなく、じわっとグリップしながら旋回します。程よい硬さのしなやかな足回りです。
軽量な車重が影響して、ハンドリングは自然で素直な特性で変な癖もありません。
若干の突き上げ感がありますが、値段を考えると妥当なものです。
車重が軽い事が、全ての運動性能に良い影響をあたえています。
評価のまとめ
最近のハイト系軽自動車を見慣れているせいか、ぐっと絞り込まれたキャビンに窮屈さを感じていまします。
しかし、その分明らかに他社のライバル達よりボディは軽量です。
この軽量なボディが全てに好影響を与えており、燃費、ハンドリング、乗り心地全ての要素が高次元でバランスしています。
値段も安くコストパフォーマンスも良いです。
あとは、安いなりにおしゃれなセンスを身に付けてくれれば完璧です。
主要諸元と価格
全長X全幅X全高 | 3395mmX1475mmX1475mm
JC08モード燃費 | 29.6km/l
価格 | 840,000円(税込み)