フロントウィンドウの両側にある柱を「Aピラー(フロントウィンドウ両端の柱)」なんて呼びますが、最近の車はボディ剛性を稼ぐためこの「Aピラー」が太くなってます。それから「流線型のかっこいいデザインにするため」とか「空力特性を良くするため」なんて理由もあって、「Aピラー」を強めに傾斜させている車も多いです。
ただし、この手の「Aピラー」は、同時に「斜め前方に死角を作りやすい」というデメリットを抱えてます。その他にも「アイポイント(目線)が低い」とか「インパネ上端やショルダーライン(サイドウィンドウ下端)が高い」なんてのも視界を悪くする原因です。視界が悪い車は「運転はしにくい」し、「疲れやすい」しと良いところがありません。安全運転にも良くないです。
逆に視界が良ければ、それとは逆。運転がしやすく疲れにくいんで、安全運転につながります。実際に購入する時はどうしても「価格」や「燃費」、「かっこよさ」なんてのを優先しがちですが、そこはグッとこらえて「視界の良い車を選ぶ」っていう視点も持ってみてください。
今回の【コラム】では、そんな「視界の良さ」をテーマに、「どういった車だと視界が良いのか」。その他には「車の視界を悪くする原因」とか、逆に「良くする原因」について。おまけとして「視界の良い車の選び方」についても解説していきます。「そろそろ車を買い替えようかなあ」なんて人は参考にしてみてください。
秋ろーが初めて乗った視界の良い車「三菱・ギャラン」
僕が生まれて初めて自分のお金で購入した車は、1998年式の「三菱・ギャラン」です。教習所で初めて乗った車も同じ年式の「ギャラン」でした。三菱自動車と聞くと、どうしても「リコール隠し」や「燃費偽装」なんかの印象が強くイメージも悪いんですが、車自体の出来はそれほど悪くありません。
特に僕が購入した「ギャラン」は、逆スラント(傾斜)したノーズにボクシーでカッコいいフォルム、軽やかに吹け上がるツインカムエンジン、素直なステアリングフィール、それから適度に引き締まったスポーティな乗り味が相まって三拍子も四拍子も揃った魅力的な車でした。肝心の視界の良さもかなりのもんで、運転に不慣れな人が乗る「教習車」としてされるのも当然だと思います(特に岡山県内では採用する教習所が多かった)。
車の視界を良くする6つの要素
ギャランの視界が良い理由としては、「ボディ形状が角ばっているのでボディの端を目視で確認しやすい」、「Aピラーが立ち気味でドライバーに近く、斜め前方に死角を作りにくい」、「着座位置がセダンにしては高いため、必然的に目線も高く視界が広い」、「ダッシュボード上端やショルダーラインが適度に低い」といった事があげられます。
後方視界については、「リアウィドウが近く面積が大きい」とか、「運転席から見たCピラーもしくはDピラー(リアウィンドウ両端の柱)の面積が小さい」といった要素があります。
教習所ではこの車のおかげで、割と早く車両感覚がつかめるようになりました。これが視界の悪い車だったらもうちょっと手こずったかもしれません。
視界の悪いプレリュード
逆に視界の悪い車として印象深いのは、僕が2台目の車として購入した1995年式 ホンダ・プレリュードです。この車はダッシュボード上端が低く前方の視界はそれなりに広いのですが、ゆるく傾斜したフロントノーズによってボディの端がまったく見えません。さらにリアエンドもトランク上端が高く流麗なクーペルックだったため、リアウィンドウが小さく後方視界は非常に小さかったです。バックする時は、ドアを少し開けてそこから覗いて後方を確認していました(この方法は危険が伴いますので、後方視界が悪い車に乗る時はリアビューカメラなどを活用してください)。
プレリュードのように視界の悪い車は、運転に不慣れな初心者のうちはオススメできません。視界が小さく制限される部分やボディの端が見えない部分が多く、長年の運転による経験や勘によって補う必要があるからです。
クロスオーバーSUVは視界が良い
最近試乗した車の中で視界の良い車といえば、「スバル・レガシィ アウトバック」と「スバル・フォレスター」です。
この手のクロスオーバーSUVは、ボディサイズの大きさにも関わらず意外と車両感覚がつかみやすく、視界も広々としています。というのも、クロスオーバーSUVは「普通の車よりも最低地上高が高められているため、必然的に目線が高くボディの端が見えやすい」とか、「Aピラーが立っているため斜め前方に死角を作りにくい」といった視界を良くするための要素をいくつか兼ね備えているからです。
以前この【コラム】では、「初心者におすすめの車」としてコンパクトカーを紹介していますが、視界の良さから考えると「クロスオーバーSUV」も初心者や車両感覚を掴むのが苦手な人にオススメできそうです。
そうはいってもこの手のクロスオーバーSUVはボディサイズが大きく、小回り性能ではコンパクトカーに劣ります。購入する前に必ずディーラーで試乗して、できれば自宅のガレージや会社、よく使うスーパーの駐車場などにも入れてみましょう。
自宅への乗り入れが難しい場合は、車の寸法をカタログやウェブサイトで確認し、自宅駐車場のサイズに当てはめてシミュレーションを行います。しかし、実際に車庫入れをする時はそれ相応の余裕スペースが必要です。普段その駐車場を使っているドライバーにアドバイスしてもらえればベストですが、そうでなければ経験の豊富なベテランドライバーに意見を聞いてください。
視界が良い車の選び方
視界の良い車を選ぶには、何台か気になる車に試乗して比べてみるのが一番です。そうはいっても全ての車に乗ってみるわけにはいきませんし、試乗中は緊張や興奮で正確な判断が下せない事もあります。
そこで最後に、そんな時に役立つ判断基準として、いくつか分かりやすい要素をまとめてみました。視界の良い車を選ぶ際の参考にしてください。
Aピラーの幅が薄く立ち気味で、ドライバーに近い
Aピラーの幅が薄く立ち気味であれば、斜め前方に死角を作りにくいです。さらにドライバーに近い位置にピラーあるとフロントウィンドウが大きく見え、視界が広くなります。頭を少し動かすだけでピラーに隠された部分を見ることも簡単です。
ダッシュボード上端(フロントウィンドウ下端)が適度に低く、ショルダーライン(サイドウィンドウ下端)の位置もそれに合わせて低い
ダッシュボード上端やショルダーライン上端の位置が低いと、斜め下方向の死角が小さくなります。
アップライトなポジションで目線が高い
目線が高くなることでも斜め下方向の死角が小さくなります。さらに遠くの方まで見通せるようになり、近くの車が小さければ目線を遮るものもありません。
ボディの端が直接目視で確認できる
ボディデザインが直線基調で角ばっていたり、目線が高い場合は、ボディ端を直接目視で確認しやすくなります。つまり、車両感覚がつかみやすいというわけです。
リアウィンドウが大きく、ドライバーに近い
フロントウィンドウと同様に、リアウィンドウが大きくドライバーに近い場合も視界は広くなります。ステーションワゴンやミニバンよりセダンの方が後方を確認しやすいのは、このためです。
CピラーもしくはDピラー(一番後ろの柱)が、ドライバーから見て薄い
一番後ろの柱をドライバーから見た時、薄く見えるほうが後方斜め後ろの死角は小さくなります。実際のDピラーが広くてもドライバーの目線から見れば小さく見える事も多いので、単純にボディデザインから判断するのではなく、運転席に座ってみることが大切です。
これらの要素を参考にカタログを眺めると、流麗なスタイリングを持つクーペなどは除外され、アップライトなポジションを持った背の高い車や、四角い形状に近いスタイリングの車などが残ります。ただし、カタログを眺めているだけでは正確な事は分かりません。何台かリストアップできたら、ディーラーに出かけて行って試乗させてもらいましょう。その際はここにリストアップされている項目のチェックもお忘れなく。軽い興奮状態にある試乗中よりも、ショールームに置いてある車で確認した方が正確に判断できることもあります。できれば、両方のシュチュエーションで確認できれば万全です。
視界の悪さを補助する便利なアイテム
そうはいっても、「今の愛車の視界が悪くて困っているんだ」という人もいるでしょう。おまけとして、そんな人のために役立つ「視界の悪さを補助するアイテム」をいくつか紹介しておきます。
コーナーポール
フロントバンパーの角に設置して、車両感覚をつかみやすくするためのアイテム。メーカー系ディーラーで扱うディーラーオプションと、カー用品店などで販売されているアフターパーツがあります。手頃な価格ならアフターパーツですが、スッキリとボディにマッチさせるにはディーラーオプションを装着するしかありません。
コーナーセンサー
リアバンパーに装着する対物センサー。壁や車に近づくと警報音を発して知らせます。距離に応じて音が変わるため、壁にぶつける事はありません。
フロントビュー・カメラ
ボディ先端に装着して、左右の死角から接近する人や車を車内のモニターに映し出します。見通しの悪い十字路へ進入する時などに便利な機能です。
リアビューカメラ
車の後端に装着。リアウィンドウごしからは見ることのできない、後方下側の映像を車内のモニターに映し出します。後方死角の大きいミニバンやワンボックス、クーペに装着すると便利です。
アラウンドビューモニター
車の周囲に装着されたいくつかのカメラの映像を統合して、車を上から見下ろしたような映像に合成。車内のモニターに映し出す装備です。車周辺の映像を一度に確認できるため、徐行で車庫入れをする時などに便利です。