自動車を買うときに外装デザインは気にするのに、なぜか内装デザインには無頓着な人が多いのです。
しかし、実際自動車に乗ってしまえば、外装デザインを目にすることはありません。
ほとんどの時間を内装デザインの前で過ごすことになります。
ドライバーにとってのその車の印象は、内装が決めるといったも過言ではありません。
内装デザインは後回し
しかし、ユーザーが外装デザインばかりを基準に車を選んでいるものですか、メーカーもあまり内装デザインに力を入れようとはしていません。
会社に入ってきたばかりの新人にやらせる仕事だという認識です。
予算が削られれば、一番に経費を減らされるのもこの内装デザインの部門です。
こういう状況ですから、いつまでたっても日本車の内装デザインのレベルが上がらないのです。
ガチャガチャとしたおもちゃのようなポリシーの無いデザインが多いです。
しかし、最近は少しこの傾向にも変化が出てきています。
トヨタのレクサスブランドなどは、アメリカ人の考えたヨーロッパ調ともいうべきデザインで、なかなか上質です。
ランドクルーザーもレクサスとは違う路線ですが、レザーとウッドの使い方が絶妙で、新しい日本的な高級感を生み出すことに成功しています。
マツダの内装デザインも素晴らしいです。現代的解釈のポストモダンともいうべき内装で、知的な大人の雰囲気を醸し出しています。
内装デザインの上手い国
他の国に目を移すと、フランスやイギリス、イタリアなどの内装デザインは素晴らしいです。
フランス車はこれといった特別豪華な素材は使わないのですが、イミテーションを使ってこれみよがしに豪華に見せようという事はしません。
安いビニールのような素材やシンプルなファブリック、安っぽい質感のプラスチックなどを使い、とてもポップでおしゃれな内装を作り上げます。
一朝一夕に真似出来ない圧倒的なセンスというものがあるのも事実ですが、それ以上に素材の良さを引き出すシンプルな調理法を心得ているということが大きいです。
安い素材で一生懸命豪華に見せようとすればする程、貧乏臭く、格好わるくなってしまいます。
イタリアで一番印象に残っている内装デザインは、フィアットパンダです。
フランスのデザイナーと同様に、これもやはり特別高価な素材は使っていません。
内装の一部はボディパネルがむき出しになっています。しかし、これが安っぽいかといわれると、そういう事はありません。
かえって、このボディパネルがおしゃれに見えてしまうのです。
インパネも横に伸びた棚の様なシンプルな形なのですが、日本車のように無駄なラインや曲線であがいている感じが全くありません。
しかし、これが絶妙で素晴らしい工業デザインを作り上げています。
簡素な素材のシートも、シンプルでとてもおしゃれなデザインです。現代から見ても古さを全く感じません。
ドイツは内装デザインが苦手
ただ、海外でも内装デザインの下手な国があります。かの自動車大国ドイツです。
今でこそメルセデスベンツは、モダンで現代的な内装を得ていますが、ちょっと前まではまるで石造りの石盤のような、無骨で味気の無いデザインばかりでした。
これは、バウハウスに始まる近代ドイツデザインの流れで、古典的な造形と、現代工業的モダンデザインを無理に融合したのが原因です。
それなりにポリシーもあり、質感も高く、合理的で使いやすいのですが、どうしても野暮ったくなってしまいます。
国民のセンスが表れる内装デザイン
内装デザインが今一なのは、メーカーのせいばかりではありません。
ユーザーが日頃から自分の部屋のインテリアに興味を持つ様になれば、マーケットリサーチが大好きなメーカー達は「これは大変だ」と、内装デザインにも力を入れ出すでしょう。
ある意味、自動車の内装デザインには、その国のユーザーのセンスが表れているものなんです。