「トヨタ RAV4」と「スバル フォレスター」はどちらもミドルクラスのクロスオーバーSUVです。
現行型はどちらも5代目になりますが、初代の登場は「トヨタ RAV4」のほうがちょっとだけ早く、1994年。「スバル フォレスター」はその3年後の1997年に出てます。
初代「トヨタ RAV4」はジープタイプ(見た目が)の小型クロスオーバーSUVで、当時の若者に絶大な人気がありました。「スバル フォレスター」はそれとは少し毛色が違っていて、ステーションワゴンとクロスオーバーSUVの中間的な立ち位置。といってもこちらもニッチな市場を掴んで結構な人気がありました。
それから数世代の代替わりを経て、現行型はどちらも北米市場に合わせて一回り大きくなってます。この手の車は日本より北米でよく売れるんで、まあ、そっちに寄せるのは当然でしょうねえ。
このようにどちらの車も現行型のコンセプトは近いんで、購入する段階で迷う人は多いです。ということで今回は、ミドルクラスSUVの二車「トヨタ RAV4」と「スバル フォレスター」を比較して細かく解説していきます。「どっちの車が自分に合っているのか、いまいち分からない」なんて悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
「トヨタ RAV4」と「スバル フォレスター」を比較すると
まず始めに、「トヨタ RAV4」と「スバル フォレスター」と比較した時に大きな違いとなる4点について解説し、その後、細々とした部分について触れていきます。
※忙しくて時間の無い人は、この章と最後だけ読んでください。
最大の違いはパワートレーン
「トヨタ RAV4」と「スバル フォレスター」を比べた時の一番の違いは、なんといってもそのパワートレーンでしょう。
ガソリン車とハイブリッド車の二本立てになってるのは同じだけど、その内容に大きな違いがあるんです(その後、RAV4にはPHVバージョンも追加)。
例えばガソリンエンジンの場合。「トヨタ RAV4」がオーソドックスな「2.0リッター直列4気筒ガソリンエンジン」を積んでいるのに対して、「スバル フォレスター」はスバル独自の「2.5リッター水平対向4気筒エンジン」を搭載。当然ながら排気量が大きい分、「スバル フォレスター」の方がパワフルです。
ハイブリッドシステムの構成も違っていて。「トヨタ RAV4」は2.5リッター直列4気筒エンジンに強力な電気モーターを組み合わせる「シリーズパラレル方式」ですが、「スバル フォレスター」は2.0リッター水平対向4気筒エンジンに小さな電気モーターを組み合わせる「パラレル方式」を使ってます。ということでハイブリッドシステムの出力はガソリンエンジンと逆で、「トヨタ RAV4」が大きいです。
スタイリング重視なら「トヨタ RAV4」
スタイリングの方向性としては、どちらもアウトドア感を強調した力強いデザインです。
ただし、「トヨタ RAV4」はリアウィンドウを強く傾斜させたクーペルック寄りなのに対して、「スバル フォレスター」はリアウィンドウが立ち気味になるオーソドックスなプロポーション。デザイン重視なら「トヨタ RAV4」、かっこよさと実用性のバランスを取るなら「スバル フォレスター」といった感じになってます。
ボディサイズは「トヨタ RAV4」の方が若干大きい
ボディサイズは、「トヨタ RAV4(ハイブリッドG)」が「全長4600mm x 全幅1855mm x 全高1685mm(ホイールベース2690mm)」。ハイブリッド車の最小回転半径は5.5m。ガソリン車が5.7m。
「スバル フォレスター(アドバンス)」のボディサイズは「全長4625mm x 全幅1815mm x 全高1715mm(ホイールベース2670mm)」。最小回転半径5.4m。
「トヨタ RAV4(ハイブリッドG)」の方が幅が広く全高が低いので、いわゆる「ロー・アンド・ワイド」なカッコよさがありますねえ。運転している時に大きさを感じるのは、主に全幅とかホイールベースの長さなんで、「トヨタ RAV4(ハイブリッドG)」のほうが若干大きく感じました。
ただし、「スバル フォレスター(アドバンス)」の方が全高が30mm高いので、実際の存在感はどちらもそんなに変わりません。
室内が広いのは「スバル フォレスター」
ボディサイズは「トヨタ RAV4(ハイブリッドG)」の方が若干大きいのですが、逆に室内は「スバル フォレスター(アドバンス)」の方が少し広いです。
実際の数値を比較してみても、「トヨタ RAV4(ハイブリッドG)」が「室内長1890mm x 室内幅1515mm x 室内高1230mm(荷室容量 580L)」。
「スバル フォレスター(アドバンス)」が「室内長2100mm x 室内幅1545mm x 室内高1270mm(荷室容量 509L)」。
「スバル フォレスター(アドバンス)」の方が、210mm長く、30mm広い、40mm高くと、全方位で余裕があります。
荷室容量は「トヨタ RAV4(ハイブリッドG)」の方が71L大きいです。ただし、「トヨタ RAV4(ハイブリッドG)」の荷室容量はデッキボード(床板)を55mm下げた状態での計測で、リアウィンドウも強く傾斜しているので、実際の使い勝手はそんなに変わらないと感じました。
動力性能を比較
「トヨタ RAV4 ハイブリッドG(ハイブリッド)」
2487cc 直列4気筒エンジンに電気モーター、電気式無断変速機の組み合わせ。フルタイム4WD。
エンジン、最高出力178ps/5700rpm、最大トルク22.5kgf・m/3600-5200rpm。
電気モーター、最高出力174ps、最大トルク32.9kgf・m。
車両重量1690kg。JC08モード燃費、25.8km/l。
2.5リッターエンジンと電気モーターの組み合わせで、3リッターガソリンエンジン並の出力を発揮。低速から中速にかけてのトルクがフラットで分厚いので、ガソリンエンジンより扱いやすいです。
ベースユニットはカムリと共通の「シリーズパラレル方式」。強力な電気モーターと大容量リチウムイオンバッテリーがあるんで、EV走行も余裕です。
電気モーターとガソリンエンジンを複雑に制御してエネルギー効率を最大限に高めてますが、そのせいで操る実感のようなものは希薄になってます。ドライブフィールの楽しさは、ガソリン車や純粋な電気自動車の方が上だと思いました。このあたりの事情はプリウスと同じですね。
「フォレスター」のハイブリッドシステムは、2リッター水平対向エンジンに小さな電気モーターを組み合わせる「パラレル方式」で出力も小さいです。ただし、エンジンを主体に制御しているため、操る楽しさを求めるならこっちでしょう。
「トヨタ RAV4 アドベンチャー(ガソリン)」
1986cc 直列4気筒エンジンに、CVTの組み合わせ。フルタイム4WD。
動力性能は、最高出力171ps/6600rpm、最大トルク21.1kgf・m/4800rpm。
車両重量1630kg。JC08モード燃費、-km/l。WLTCモード燃費、15.2km/L。
1.6tあまりの重量級ボディに2.0リッター自然吸気エンジンを載せるんで、有り余るほどのパワーはありません。といっても組み合わされるCVTが優秀で、必要十分な活発さはあります。低速ではCVTとは別に用意された発信用ギアを使って力強く加速、そこからCVTに切り替わってスムーズでそこそこの勢いが続く感じです。
まあ、それでも、1.5tのボディに2.5リッター水平対向エンジンを搭載する「フォレスター」と比較すれば、見劣りしちゃいますけど。
エンジンフィールは爽快で、高回転まで気持ちよく吹け上がります。いわゆる「スッキリ系」ってやつです。
「スバル フォレスター アドバンス(ハイブリッド)」
1995cc 水平対向4気筒エンジンに電気モーター、CVT(無段変速機)の組み合わせ。フルタイム4WD。
エンジン、最高出力145ps/6000rpm、最大トルク19.2kgf・m/4000rpm。
電気モーター、最高出力14ps、最大トルク6.6kgf・m。
車両重量1640kg。JC08モード燃費、18.6km/l。
「フォレスター」のハイブリッドシステムは、2.0リッター水平対向エンジンに小さな電気モーターを組み合わせた「パラレル方式」。先代XVのシステムをベースにエンジンを直噴化し、バッテリーにはリチウムイオン電池を使ってます。
「フォレスター」のガソリンエンジンと比較するとパワーは控えめですが、エンジンを主体に運用するシステムのためドライブフィールは絶品。リニアな加速感とスムーズさが上手いこと両立してます。まさに電気式ターボって感じです。
「パラレル方式」にも関わらず、電気モーターだけで走行する「EV走行」も可能。まあ、もちろん、「シリーズパラレル方式」のようにはいきませんが。
「スバル フォレスター X-ブレイク(ガソリン)」
2498cc 水平対向4気筒エンジンに、CVT(無断変速機)の組み合わせ。フルタイム4WD。
動力性能は、最高出力184ps/5800rpm、最大トルク24.4kgf・m/4400rpm。
車両重量1530kg。JC08モード燃費、14.6km/l。
排気量が500cc拡大され、エンジン自体も直噴化。スムーズで気持ちの良いエンジンになりました。低速から中高速域まで、全域で出力が向上してます(まあ、排気量が大きくなってるんでパワフルになるのは当たり前だけど)。
RAV4より軽い1.5tのボディにパワフルな2.5Lエンジンを組み合わせているんで、走りは活発です。
大幅に軽量化されたCVTとの相性も抜群で、この手のトランスミッションにありがちなぼんやりしたフィールが無くなってます。先代のCVTも良くできてたけど、そこからさらに一歩進んだ感じです。
ハンドリングを比較
「トヨタ RAV4 ハイブリッドG(ハイブリッド)」
CH-RあたりのコンパクトSUVと比較すれば、ゆったりとした味付け。それでもロール自体はしっかりと抑えられていて、ステアリングを切った分だけ素直に曲がっていきます。
「RAV4」には後輪の左右でトルクを自動制御する「トルクベクタリング機構」が付いているので、このあたりがしっかり働いているんでしょうねえ。
最小回転半径は、5.5m。まあ、このクラスならこんなもんでしょう。
「トヨタ RAV4 アドベンチャー(ガソリン)」
ハイブリッド車に比べればボディが軽量(それでも1.6t以上あるが)なんで、ハンドリングはさらに自然な感じです。ただし、低い位置に重いリチウムイオン電池が無いんで、低重心感はありません。普通のガソリン車って趣です。
最小回転半径は、5.7m。5.4mのフォレスターと比較すれば、少々大回り。
「スバル フォレスター アドバンス(ハイブリッド)」
シンメトリカルAWDの美点を活かして、電気モーターやリチウムイオンバッテリーを左右対称に配置。もちろん、それが低い位置にあるんで重心が低く左右のバランスも良いです。
結果的に重心の高いSUVとは思えないほどハンドリングが自然で、運転しやすいと感じました。ドライバーが思った通りのラインを描きやすいんです。俗に言う「運転がうまくなった感じがする」ってやつですね。
「スバル フォレスター X-ブレイク(ガソリン)」
基本的に素直な特性はハイブリッド車と共通。さらにハイブリッドと比較すれば100kg以上も軽量なんで、こっちの方が軽快です。
リアの接地性が高く、コーナリング中に多少の凸凹を通過しても姿勢を乱しにくい。万が一姿勢を乱しても、変化が一定で予測しやすいのでその後の制御もしやすいです。
最小回転半径はハイブリッドと共通で、5.4m。先代よりはわずかに拡大してるけど、それでもライバルと比較すれば小回りが効きます。
乗り心地を比較
「トヨタ RAV4 ハイブリッドG(ハイブリッド)」
足回りは前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にダブルウィッシュボーン式サスペンションを装備。タイヤサイズは、前後ともに225/60R18。
流石に最新のクロスオーバーSUVだけあって、一般道での走りはとっても快適。本格的クロスカントリーSUVみたいな「クセ」もありません。
硬いボディにストロークのある上質なサスが連結されていて、多少の段差ぐらいじゃ不快に揺すられるこは無いです。
「カムリ」由来のストロングハイブリッドの出来も良く、車内はとっても静か。大きなバッテリーのおかげで、EV走行(電気モーターだけで走る)の割合も多めになってます。
「トヨタ RAV4 アドベンチャー(ガソリン)」
足回りは前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にダブルウィッシュボーン式サスペンションを装備。タイヤサイズは、前後ともに225/60R18。
ハイブリッド車より大きな19インチタイヤを装備してますが、こっちも本格的SUVのような嫌な「クセ」は無いです。ハイブリッドよりも多少乗り味は硬めですが、乗用車に近い乗り心地で静粛性も高いと感じました(もちろんハイブリッドの方が静か)。
「スバル フォレスター アドバンス(ハイブリッド)」
足回りは前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にダブルウィッシュボーン式サスペンションを装備。タイヤサイズは、前後ともに225/55R18。
乗り心地はやや硬め。ただし、ガソリン車よりは110kg重いので、同じ大きさのタイヤならハイブリッド車の方が乗り心地は柔軟です。硬いといっても路面からの衝撃はしっかりと吸収され、不快な突き上げ感もありません。RAV4と同様、乗用車に近い快適な乗り味に仕上がってます。
「スバル フォレスター X-ブレイク(ガソリン)」
不快な衝撃を硬いボディで受け止めつつ、残った揺れはしなやかなショックで打ち消すのはハイブリッドと同じ。ハイブリッド車に比べれば多少乗り味は硬めですが、乗用車に近い乗り味で快適性は高いです。
走行安定性も進化していて、深いコーナーでもそんなにボディを傾けません。安定した姿勢でシューッと走り抜けるので、運転がうまくなったような気がしちゃいます。
最後に価格を比較しながらまとめると
最廉価グレードなら「トヨタ RAV4」の方が安い
ガソリン車のスタンダードグレード同士を比較すると、
「トヨタ RAV4 X(ガソリン・フルタイム4WD)」が2,887,500円(税込み)で、
「スバル フォレスター ツーリング(ガソリン)]は2,860,000円(税込み)とそんなに変わりません。
ただし、「トヨタ RAV4」には廉価なFFモデル(2,656,500円(税込み)があるので、これと比較すれば20万円以上も「RAV4」の方がお安くなります。
悪路走破性はいらないけど、とにかくクロスオーバーSUVの雰囲気だけ味わえれば十分という人におすすめのグレードです。
ハイブリッドは「スバル フォレスター」の方が安い
ハイブリッド車は、「トヨタ RAV4」の最上級グレード「ハイブリッドG(4WD)」が3,888,500円(税込み)で、スタンダードグレード「ハイブリッドX(4WD)」が3,514,500円(税込み)。最廉価グレードとなる「ハイブリッドX(FF)」なら3,261,500円(税込み)」になります。
これに対して「スバル フォレスター」のハイブリッド車は「アドバンス(4WD)」のみのモノグレード構成。価格は3,157,000円(税込み)と、「トヨタ RAV4」のFFモデルと比較してもかなりお安いです。ただし、「スバル フォレスター」のハイブリッドシステムは「トヨタ RAV4」よりシンプルな「パラレル方式」になってるので、単純に価格だけでは比較できません。
ハイブリッドらしい燃費の良さや電気モーターの分厚いトルク感が好きなら「トヨタ RAV4」。エンジンを主体にした自然なドライブフィールや、価格の安さを重視するなら「スバル フォレスター」という感じです。