「トヨタ・アルファード」は、トヨタを代表するLLクラスの高級ミニバンです。これに対して「トヨタ・ヴォクシー」は、同じトヨタのミニバンだけど、5ナンバーサイズの大衆的なクラスになります。
ということで価格を最上級グレード同士で比べると、「トヨタ・アルファード ハイブリッド エグゼクティブラウンジS」が7,641,700円。「トヨタ・ヴォクシー ハイブリッドZS 煌Ⅱ」で3,443,000円と、アルファードの方が420万円近くも高いです。
ただし、アルファードの最廉価グレードとヴォクシーの最上級グレードを比べると、アルファードが3,438,600円でヴォクシーが3,443,000円とほとんど同じ。というか逆にアルファードの方が若干安くなっちゃいます(もちろん装備内容は全然違う)。
どうせ価格が変わらないんなら、「大きくて立派なアルファードにしよう」なんて人もいるでしょう。今回はそんな人に向けて、アルファードとヴォクシーを比較してみました。購入の参考になったら嬉しいです。
「トヨタ・アルファード」と「トヨタ・ヴォクシー」の違い
冒頭でも書いた通り、「トヨタ・アルファード」と「トヨタ・ヴォクシー」ではクラスが全然違います。
「トヨタ・アルファード」は350万円前後から750万円前後のLLクラス高級ミニバン。トヨタではクラウンと並ぶ高級車という位置づけになってます。これに対して「トヨタ・ヴォクシー」は、250万円前後から350万円前後の価格帯に入る5ナンバーサイズの大衆ミニバンです。
クラスが違うんで、ボディサイズも当然同じじゃありません。アルファードが「全長4945mmx全幅1850mmx全高1935mm」なのに対して、ヴォクシーは「全長4695mmx全幅1695mmx全高1825mm」と一回り以上も小さいです。それに伴って室内の大きさや荷室スペースにも歴然とした差があります。車にかかってるコストも大分違うんで、走りから乗り心地、上質感といったものもアルファードの方が上です。
ただし、両車のボディスタイルはよく似ています。どちらも直線を基調にした箱型ミニバンで、スライドドアを装備する5ドアハッチバック。3列シートを装備しており、セカンドシートが3人座りベンチシートになる「3列8人乗り」と、セカンドシートが左右に独立した「キャプテンシート」を備える「3列7人乗り」があります。さらにスタリングはどちらも最近流行りの「マイルドヤンキー系」です。
かつて「クラウン」の下に同じ系統の下位モデル「マークX」があったように、今では「アルファード」の下に「ヴォクシー」もしくは兄弟車の「ノア」という布陣になっているわけです。
スタイリングを比較
基本的に両車は同じ系統のデザインですが、ボディサイズの違いからアルファードの方が伸びやかなスタイリングになってます。細部(ディティール)の仕上がりもより多くのコストが掛けられるアルファードの方が上質です。
ボディサイズ
アルファード
「アルファード 2.5X」が「全長4945mmx全幅1850mmx全高1935mm」。「ホイールベース3000mm」。
ヴォクシー
「ヴォクシー X」は「全長4695mmx全幅1695mmx全高1825mm」。「ホイールベース2850mm」。
フロント
アルファード
アルファードのフロントマスクには、「竜の鱗」や「戦国武者の甲冑」を思わせる、格子柄の大型グリルが付いてます。ヘッドライトもマイナーチェンジで複雑な形状(C字型)に変更され、緻密さが増してます。LLクラス高級ミニバンにふさわしい重厚感あふれるデザインって感じです。
ヴォクシー
これに対してヴォクシーは、かなりさっぱりしたお顔です。直線基調の折り目正しいデザインですが、アルファードのような重厚感はありません。二段構えのヘッドライトや、カクカクとしたデザインのフロントマスク、分厚いメタルガーニッシュを上下に組み合わせたグリルバーなど、それなりの威圧感はあります。
もうちょっと押し出し感が欲しいという場合は、エアロパーツを標準装備した「ZS系」を選んでください。台形型のフロントバンパーや、エアロフィン付きフォグランプベゼル、薄いメッキモールド(シルバー)が装備されるんで、かなりいかつい感じになります。
サイド
アルファード
アルファードのAピラー(一番前の柱)は、ノーズ(鼻先)先端から立ち上がって、強く傾斜しながらルーフへと繋がるため、実際よりノーズが長く見えます。ホイールベースが長く、サイドウィンドウの上下幅も短いため、ヴォクシーなどの大衆ミニバンと比べればかなり優雅な仕上がりです。コストの掛かるサイドパネルのうねりも巧みに表現されていて、全体的にしっとりとした重厚感があります。
それから、なんといっても見逃せないのが、逆スラント(傾斜)したBピラー(2番目の柱)です。これがあるだけで、ひと目で「アルファード(ヴェルファイア)だ!」ってなっちゃいますもんね。
ヴォクシー
これに対してヴォクシーは、短いノーズにアルファードに比べれば立ち気味のAピラー。短めのホイールベース。上下幅の大きいサイドスクリーン(相対的にキャビンが大きい)など。優雅なアルファードと比べれば、少々ズングリしたフォルムになってます。
といっても、この手の車はこういった道具感も魅力なんで、デメリットにはなりませんけどね。いわゆる、ボクシーな魅力ってやつです。
リア
アルファード
四角いリアエンドに大きなS字型のリアコンビランプ、分厚いガーニッシュ(シルバー)が左右のリアコンビランプを繋いでます。アルファードもヴォクシーも基本的には「箱型ミニバン」なんで、全体のシルエットはよく似てます。ただ、アルファードの方が全幅が広いということもあって、どっしりとした感じです。
ヴォクシー
四角いリアエンドやメタリック調のガーニッシュ、ブラックアウト(黒く塗装することで見えにくくなる)されたDピラー(一番後の柱)といった要素はアルファードと同じですが、ヴォクシーのほうがシンプルでおとなしい感じになってます。基本的に直線基調のデザインなんで、道具感もこっちの方が強いです。アルファードは高級車なんで、当たり前っちゃ当たり前ですけど。
インテリアを比較
全体の雰囲気とか運転のしやすさ
アルファード
アルファードのインテリアは直線を基調にしたガッチリ系のデザイン。もちろん、樹脂パッドの質感は上質だし、パネルの合わせ目もピッタリ合ってるんで、質感は超高いです。
目線が高くボディの見切りが良いんで、運転はしやすいと思います。目線が高いといってもハイエースのように「よっこらしょ」と登る感じじゃありません。低床プラットフォームのおかげで、乗り降りも割と楽です。
シートレイアウトは、セカンドシートが左右に独立した(キャプテンシート)「3列7人乗り」と、セカンドシートが横3列で連結される(ベンチシート)「3列8人乗り」の二種。「いつも大人数で移動する」なんて特別な事情が無い限り、「3列7人乗り」の方がセカンドシートがゆったりとするんでオススメです。
ヴォクシー
ヴォクシーのインテリアには、アルファードほどの高級感はありません。まあ、それはクラスが違うんで当然なんですけど。
直線を基調にしながらも、適度に曲線をあしらったモダンなデザインになってます。助手席グローブボックスの下には大きなトレーがえぐられていて、手袋とかマフラー、小さなバッグをガボッと無造作に突っ込むのに便利です。
目線が高く、ボディが四角い。しかも、ボディサイズは5ナンバー(基本ボディ)におさまるくらいなんで、車両間隔がつかみやすいです。このへんの取り回しのしやすさは、アルファードより5ナンバーサイズのヴォクシーに分がありますね。
シート
アルファード
アルファードはセカンドシートに大きな開口部(スライドドア用の)があるんで、どちらかといえばフロントの方がボディががっちりしていて乗り心地も良いです。助手席には1160mmのロングスライド機構とオットマンも付いてます。
左右に一席ずつ独立したキャプテンシートには、上級グレード用の「エグゼクティブラウンジシート」と普通のキャプテンシートがあります。「エグゼクティブラウンジシート」はサイズが一回り大きく、ベンチレーション機能などの快適装備も付きますが、柔軟性は普通のキャプテンシートの方が上です。まあ、このあたりはアタリが付いてくることで、大きく変わる可能性はありますが。
サードシートは先代よりもクッションのストロークが増して、ずっと座りやすくなりました。それでも、フロントやセカンドに比べれば落ちますが、Mクラスミニバンにありがちな緊急用シートじゃありません。
ヴォクシー
ハイブリッド車の場合、駆動用バッテリーはフロントシートの下に収められますが、そのせいでシートが薄くなることは無いです。クッションには適切なストロークとコシがあります。表皮にもうちょっとしっとりとした柔軟性が欲しい気もしますが、クラスを考えたら十分でしょう。そういう贅沢さを味わいたい人は、アルファードとかの高級車を買ったほうが良いです。
セカンドシートはフロアが低く、ドア開口部も大きく開いているんで、乗り降りがしやすいです。サードシートを折りたたんで左右に跳ね上げれば、さらにセカンドシートを後までスライドさせて足元空間を拡げられます。ボクシーなボディ形状のおかげで、頭上空間や足元空間は広いです。室内幅の限られる5ナンバーサイズですが、左右に独立した「キャプテンシート」を選べば幅方向の窮屈感もありません。
サードシートはデザインが平板で、シートクッションも薄め。短距離移動用のシートって感じです。といっても、このタイプのシートにありがちな、「太ももが浮き上がって体操座りみたいになる」なんてことはありません。やや背もたれの高さが足りないものの、シートサイズ自体は十分。大人でも普通の姿勢で座れます。
荷室
アルファード
アルファードの荷室は、サードシートを一番後まで下げるとほとんどありません。といっても、それは乗員の足元を最大限に拡げた時のはなしです。元々、上下方向に余裕があるんで、多少シートを前にスライドさせるだけで、結構な荷物が積めるようになります。
さらに、サードシートを左右に跳ね上げて折りたためば、広大な荷室空間が出現します。その分、斜め後方の視界は悪くなりますが、シートの位置や厚さ、形を工夫してあるんでそんなには気になりません。
ヴォクシー
サードシートを出していると、荷室スペースは最小限になります(サードシートがリアドアぎりぎりまで下がるから)。それでも、サードシートの下が大きく空いているんで、日帰り旅行とか買い物くらいなら、なんとかなりそうです。
さらに、サードシートを畳んで左右に跳ね上げれば、広大な荷室空間ができあがります。シートの操作はレバー式で、軽い力でできます。このあたりは、いかにも「よくできた日本車」って感じになってます。
静粛性
アルファード
アルファードは高級車なんで、基本的に静粛性は高いです。ただし、高速域ではボディの大きさが災いして、風切り音が若干大きくなります。それから、廉価グレードに搭載される2.5リッターエンジンは、アクセルを強めに踏み込むと多少ノイジーな感じです。
ヴォクシー
マイナーチェンジで、エンジンノイズが大分抑えられてます。ドアシール(ドアとボディの間に挟まるゴム)の改良によって、ロードノイズや風切り音も小さくなりました。
遮音性が高く、エンジンノイズも小さめ。急な上り坂ではノイズ、バイブレーションともに若干高まりますが、気になるレベルじゃありません。もちろん、静かさじゃ高級車のアルファードが上ですけど(ベーシックな2.5だとしても)。
動力性能の違い
「アルファード」のパワーユニットは、「2.5リッター直列4気筒」と「3.5リッターV型6気筒」、「ハイブリッド(2.5リッター直列4気筒+電気モーター)」の3種。これに対して「ヴォクシー」は、「2.0リッター直列4気筒」と「ハイブリッド(1.8リッター直列4気筒+電気モーター)」の2つを持ってます。
今回は、この中から価格の近いアルファード用「2.5リッター直列4気筒」と、ヴォクシー用「ハイブリッド」を比較しました。
アルファードの「2.5リッター直列4気筒エンジン」
アルファードの「2.5リッター直列4気筒エンジン」は、最高出力「182ps/6000rpm」。最大トルクは「24.0kgm/4100rpm」を発揮。「車重を考えるとちょっと物足りないかなあ」という気持ちましたが、全然そんなことはありません。低速から以外なほどトルクがあって乗りやすいです。車重が1920kg(Xグレード)なんで、パワーウェイトレシオは「10.55kg/ps(少数点以下四捨五入)」になります。
日常域で使うには十分な動力性能で、ノイズ、バイブレーションもよく抑えられてます。ただし、高速域からの再加速や急な上り坂では、若干エンジンノイズを高めやすいです。
ヴォクシーの「ハイブリッドシステム」
ヴォクシーの「ハイブリッドシステム」は、エンジンが最高出力「99ps/5200rpm」、最大トルク「14.5kgm/4000rpm」を発揮。電気モーター側で最高出力「82ps」、最大トルク「21.1kgm」を発揮。システム総合出力は「136ps」になります。車重が1630kgなんでパワーウェイトレシオ(車重を馬力で割った値)は「11.99kg/ps(少数点以下四捨五入)」です。
パワーウェイトレシオは、「1ps(馬力)で何kgの車重を支えているか」という数値なんで、値が小さければ小さいほどパワフルです。アルファードのパワーウェイトレシオは「10.55kg/ps」なんで、数値上はアルファードの方がパワフルということになります(実際はそう単純じゃあないけど、ひとつの指標としては十分参考になる)。
基本的には「3代目プリウス」と同じシステム構成で、1.8リッター直列4気筒エンジンに駆動用モーターと発電用モーターを組み合わせてます。いわゆる「シリーズ・パラレル方式」とよばれるシステムで、電気モーターとエンジンを複雑に制御して効率よく駆動力を引き出すのが特徴です。
ただし、ヴォクシーはプリウスより大分車重が重いんで、ギアをローギアードなセッティングに振って、低速のトルク不足を補ってます。そのおかげで日常領域では全く力不足を感じません。少々の坂道なら物ともせずにグイグイと力強く登っていきます。
燃費
燃費性能は、アルファード Xが「11.6km/l(JC08モード)」で、ヴォクシー ハイブリッド ZSが「23.8km/l(JC08モード)」。やっぱり、ボディが軽量でハイブリッド化もされてる「ヴォクシー」の方が、2倍以上も燃費性能が良いですね。
その他、それぞれの代表的なグレードについても、燃費性能を下の表にまとめてみました。
アルファード
2.5 X(FF・8人乗り) | 11.6km/l |
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3.5 SC(FF・7人乗り) | 10.8km/l |
ハイブリッド X(4WD・8人乗り) | 19.4km/l |
ヴォクシー
X(FF・8人乗り) | 16.0km/l |
---|---|
ハイブリッド ZS(FF・7人乗り) | 23.8km/l |
乗り心地の違い
アルファード
アルファードの足回りは、フロントに「マクファーソン・ストラット式サス」。リアに「ダブルウィッシュボーン式サス」がはまってます。
マイナーチェンジで構造用接着剤の使用範囲が広がり、窓ガラス用の接着剤もより高剛性なものに変更されました。ダンパーの減衰力なんかも見直されて、全体的に見れば乗り心地が良くなってます。
18インチタイヤ装着車は剛性感をともなう重厚な乗り味。16インチタイヤを装着するベーシックグレードは、18インチ装着車より柔軟性が高く柔らかです。
目地段差や橋脚ジョイントでは、硬いボディとしなやかなサスによって嫌な振動はしっかりと遮断。高速域での安定性も高く、どっしりと腰を落ち着かせたまま真っ直ぐに走り抜けます。こんな時は、「ああ、良い車に乗っているなあ」って感じがして最高です。このあたりは、ヴォクシーでは感じられないアルファードならではのメリットだと思います。
ヴォクシー
ヴォクシーの足回りには、フロントに「マクファーソン・ストラット式サス」、リアに「トーションビーム式サス」を装備。
マイナーチェンジで、フロントウィンドウやバックドアガラスの接着剤が強化され、ボディ剛性が増してます。ついでにダンパーの減衰力も見直されました。
「ハイブリッドZS」は車重が重いこともあって、路面からの突き上げ感が気になります。収まりの悪い揺れもあるし、目地段差からの襲撃のそれなりに伝えてしまいます。ただし、ダンパーの改良によって、小さな凸凹感は結構抑えられてます。
ヴォクシーは価格の手頃な大衆車なんで、やっぱり乗り心地はアルファードのが良いです。
ハンドリングを比較
アルファード
アルファードのハンドリングは、重量級ミニバンとは思えないほど素直です。操舵に対する反応は基本的に穏やかで、正確なラインで思った通りに走ってくれます。キビキビとした軽快感は無いけど、しっかりとしたハンドリングなんで運転しやすいです。
背が高いこともあってコーナーではそれなりにボディを傾けますが、姿勢変化が穏やかで予測もつけやすいので安心して切り込んでいけます。
「3.5」や「ハイブリッド」に比べると「2.5」は相対的に鼻先が軽いので、その分曲がりやすい印象です。
ヴォクシー
ヴォクシーもミニバンにしてはよく曲がる印象です。
ただし、アルファードの縦横比が正方形に近いとすると、ヴォクシーは高さの比率が大きい長方形になってます。要するにアルファードよりも踏ん張りが効かないんで、ロールが大きくスポーティな走りは苦手。とはいえ、常識的な速度内なら十分気持ちの良い走りができます。
コーナーの連続するワインディングでは多少走りにくいですが、速度を抑えて走れば問題ありません。まあ、ヴォクシーを買うような人が、そんな場所でギュンギュン走ることも無いでしょうし。
同クラスのミニバンと比較すればフロアが低く(最低地上高360mm)、高速域でも安定してます。安定性と乗り心地、ハンドリングのバランスが取れた良い車です。
価格を比較
アルファード
クラスの違う「アルファード」と「ヴォクシー」ですが、不思議なことに「アルファード」のベーシックグレードと「ヴォクシー」の最上級グレードは同じ価格帯になってます。
この2つを比べて選ぶ場合、上質な乗り味や見た目の威圧感を求めるなら「アルファード」。取り回しの良い外観や効率の良いハイブリッドシステムが欲しいなら「ヴォクシー」って感じになるでしょう。
2.5 X(FF・8人乗り) | 3,438,600円(税込み) |
---|---|
3.5 SC(FF・7人乗り) | 5,061,100円(税込み) |
ハイブリッド X(4WD・8人乗り) | 4,466,000円(税込み) |
ヴォクシー
X(FF・8人乗り) | 2,556,400円(税込み) |
---|---|
ハイブリッド ZS 煌Ⅱ(FF・7人乗り) | 3,443,000円(税込み) |