「トヨタ・プリウス」と「トヨタ・アクア」は、共にトヨタを代表するハイブリッド専用車です。ボディ形状はどちらも5ドアハッチバックで、近未来感あふれる「ワンモーションフォルム」を採用してます。
燃費性能も意外と近くて、「トヨタ・プリウス」のベーシックグレード「E」が39.0km/lなのに対して、「トヨタ・アクア」のベーシックグレード「L」が38.0km/lです。
ということで、「トヨタのハイブリッドカーを買いたいんだけど、どっちにしたら良いのか正直分からない」なんて悩んでいる人は多いかもしれません。
そこで今回は、「トヨタ・プリウス」と「トヨタ・アクア」を比較して、それぞれの違いやメリット、デメリットなんかについて詳しく解説していきたいと思います。
比較対象となるグレードは、分かりやすいようにどちらもベーシックな基本グレードを使ってます。「トヨタ・プリウス」が「E」グレードで、「トヨタ・アクア」の方は「L」グレードです。
「トヨタ・プリウス」と「トヨタ・アクア」の最大の違いは「ボディサイズ」
「トヨタ・プリウス」と「トヨタ・アクア」最大の違いは、そのボディサイズです。
「トヨタ・プリウス」のボディサイズが「全長×全幅×全高:4,574mmx1,760mmx1,470mm」なのに対して、「トヨタ・アクア」の方は「全長×全幅×全高:3,995mmx1,695mmx1,445mm」。つまり、全長で+579mm、全幅で+65mm、全高なら+25mm、プリウスの方が大きくなってます。
室内はプリウスの方が大きい
ボディサイズが違うということは、それにともなって室内の広さや荷室の大きさも変わってきます。
プリウスの室内が「室内長x室内幅x室内高:2,110mmx1,490mmx1,195mm」なのに対して、アクアの方は「室内長x室内幅x室内高:2,015mmx1,395mmx1,175mm」。
どちらも「5人乗り」ですが、プリウスの室内の方が前後左右高さすべての面で余裕があります。特にアクアは5ドアクーペ風のスタイリングを小さなボディで実現するため、ルーフが低くめです。座高の高い男性の場合は、リアシートに座ると頭上空間が多少窮屈に感じるかもしれません。といっても、アクアはシートの位置を低くすることで、必要十分のスペースは確保してありますので実用上の問題は無いです。
荷室もプリウスの方が大きい
プリウスとアクア、どちらも駆動用バッテリーをリアシートの下に移動することで、同クラスのガソリン車と遜色ない荷室スペースを確保してます。
もちろん、ふたつの車を比較すれば荷室容量はプリウスの方が大きくて、「奥行きx幅x高さ:890mmx1390mmx715mm」の「502リッター」です。アクアの方は「奥行きx幅:722mmx946mm(高さは未確認)」の「305リッター」しかありません。
どちらの車もリアシートの背もたれを「6:4」で分割して倒すことによって荷室容量を拡大できます。ただし、リアシートの下に駆動用バッテリーがあるので、完全なフラットにはなりません。これを無理やりフラットな構造にすると、シートクッションの厚みが不足して乗り心地が悪くなると思います。
ホイールベースもプリウスの方が長い
さらにホイールベースもプリウスの方が長くて、2,700mmもあります。これに対してアクアは、-150mmの2,550mmです。
ホイールベースが長くなると乗り心地や直進安定性が良くなるというメリットがありますが、短い場合はキビキビと軽快な走りになりやすいというメリットがあります。どちらも一長一短というか、好み次第ってところです。
ただし、プリウスはホイールベースが長いにも関わらず、それなりの軽快感があります。このあたりはトヨタが行ったセッティングの妙ってところでしょう。
これに対してアクアにはキビキビとした軽快感があるものの、直進安定性と乗り心地の良さはあくまでコンパクトカーレベルで、ひとクラス上のプリウスには及びません。
車重はプリウスの方が重い
ボディが大きければ車重も重くなります。ということで、プリウスの車両重量が1,320kgなのに対して、アクアは1,060kgしかありません。
車重が重ければその分燃費が悪くなったり、タイヤがチビやすくなったりというデメリットがありますが、反面、乗り心地に重厚感が出るというメリットもあります。
ただし、プリウスはアクアより高性能なハイブリッドシステムを採用することで、アクアより若干燃費が良いです。乗り心地に重厚感が出るというのはその通りで、プリウスにはアクアには無いしっとりとした重厚感があります。
外観
プリウスとアクアは、ボディサイズの違いはあるものの、どちらも「ワンモーションフォルム※」を基本にした近未来的なスタイリングです。
※ノーズからルーフ、リアエンドにかけて、一筆書きで描いたような一体感のあるスタイリングのこと
ただし、プリウスの方が高価な車なんで、面の処理が複雑だったり、ボディパネルとボディパネルの合わせ目が均一だったりしてひとクラス上の上質感があります。
同じワンモーションフォルムでも微妙に違う
同じワンモーションフォルムといっても、アクアの方が全長が短いんで室内に余裕が無く(特に後席の室内高)、ルーフをリアエンドにかけてなだらかに下降させることができません。その点プリウスは全長が長いんで、リアエンドにかけてルーフをなだらかに下降させても室内を圧迫しにくいです。
ということでアクアの場合は、ルーフ後端がリアエンドの高い位置でスパッと切り落とされた形になってます。この辺が、プリウスとアクアのスタイリング上の一番大きな違いです。
内装
内装デザインは、どちらも「センターメーター」とセンタークラスター上にある「大型液晶ディスプレイ」を基本にした近未来的デザインになってます。
車格や車両価格が違うんで、内装の質感はプリウスの方が上です。ただし、アクアもヴィッツと比較すれば上質だし、プラスチックの素材感を活かしたケレン味のない仕上がりが心地いいです。
プリウスのシフトレバーは電子制御式ですが、アクアは昔ながらのコラムシフト。先進性をアピールするハイブリッド専用車としては、コラムシフトだとちょっと古めかしい感じがあります。
収納自体の数はアクアの方が多いですが(助手席オープントレイとかメーターサイドボックスとか)、プリウスは一個一個の容量自体が大きいんで、どっちも使い勝手は良いです。
どちらの車も着剤位置が低い
プリウスは、先代よりも若干アイポイントが低くなってますが、視界の広さに特段の問題はありません。ドアミラーとAピラー(サイドウィンドウ両脇の柱
)の間には小さな三角窓が設置してあるんで、斜め前方の死角も最小限に抑えられてます。
これに対してアクアは、着座位置が低く視界も狭め。ただし、ボディ自体が小さくノーズも短いんで取り回しに苦労することはありません。こちらもドアミラーとAピラーの間に小さな三角窓があるんで、斜め前方の死角も最小限です。
アクセルペダルが左に寄っている
両車に共通する欠点として、アクセルペダルが車体中央側(左)に寄りすぎているんで少し違和感があります。ステアリングコラムも若干遠くて、腕が伸び切った感じになります。これには「エアバックを安全に作動させるため」というまっとうな理由がありますが、ちょっと操作しづらいです。
個人的にはアクアの違和感の方が強いと思いますが、このあたりはその人の体型とかにもよるんで、自分でディーラーに出向いて直接確かめるしかありません。
パワートレーン
プリウスとアクアはどちらもハイブリッド専用車で、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせた「THSⅡ」というハイブリッドシステムで駆動してます。
ただし、ボディサイズや車重の違いから、プリウス用はパワフルな「1.8リッター直列4気筒DOHCエンジン+電気モーター」というシステムを使ってます。アクア用は「2代目プリウス」のシステムを小型軽量化してリファインした「1.5リッター直列4気筒DOHC+電気モーター」です。
ハイブリッドシステムは、どちらも「シリーズパラレル方式」
基本的な仕組みは、どちらもガソリンエンジンと電気モーターを複雑に組み合わせて駆動する「シリーズパラレル方式」。エンジン主体で駆動しながら電気モーターは補助的なアシストに徹する「パラレル方式」とか、エンジンは発電に専念して駆動は電気モーターが担う「シリーズ方式」と違って、「シリーズパラレル方式」は低速から中高速域まで全域で好燃費を叩き出します。
ただし、ドライブフィールだけで比べると、エンジンの感触を残す「パラレル方式」や、電気モーター独特のダイレクト感とスムーズさが強く出る「シリーズ方式」の方が面白いです。
プリウス用のハイブリッドシステムは、ガソリンエンジン換算で2.0リッター並の出力
プリウス用のハイブリッドシステムは、アクア用よりパワフルで、自然吸気のガソリンエンジンに換算すると「2.0リッター」なみの加速力があります。
システムのエネルギー効率や出力特性を任意に変化させる「ドライブモード」は、「ノーマル」と「パワー」、「エコ」の3種。+αとして、電気モーターだけで走行する「EVモード」も設定。「ノーマルモード」でも必要十分以上のパワーがあるんで、普通に走るだけなら平坦路から街中、山坂道、高速道路まで「ノーマルモード」に入れておくだけで事足ります。アクセルレスポンスも良好で、軽くアクセルペダルを踏み込むだけで思った速度がすぐに出ます。しかも、速度変化がスムーズなんで、ギクシャクした荒々しさはありません。
高速域からの加速も得意種目で、こちらも穏やかにアクセルを踏み込むだけで十分な加速が得られます。
アクア用のハイブリッドシステムは、ガソリンエンジン換算で1.8リッター並の出力
対するアクアのハイブリッドシステムは、自然吸気エンジンに換算すると1.8リッター並みの加速力です。ただし、アクアはプリウスよりボディがコンパクトで軽量(1060kg)なんで、パワーが不足することは無いです。トルクの出方もスムーズで、モーター走行からのエンジン始動も自然。ガソリン車から乗り換えても違和感がありません。この辺は、プリウスにも共通するトヨタ系ハイブリッドシステムの美点ですね。
ドライブモードは、「エコモード」と「EVモード」の2種。普通に平坦な街中を走るだけなら、「エコモード」で十分だと思います。「EVモード」は電気モーターだけを使って走るモードで、電気モーターならではのトルク感でグイグイ加速します。
「エコモード」で穏やかに走ればグッと燃費が良くなりますが、逆に乱暴なアクセル操作をすると流石に「エコモード」でも燃費が悪化します。ドライバーの操作に影響されやすいシステムです。
プリウスは静かな車
アクセルを強く踏み込んでフル加速すれば、エンジンノイズを高めますが、音質自体は不快なものじゃありません。普通に街中を流すだけならエンジンノイズも小さく、とっても静かな車です。ロードノイズや風切音もよく抑えられています。
プリウスほどじゃないけど、アクアも静か
アクアのエンジンノイズも小さめです。モーター走行からのエンジン始動もスムーズで、ボーッと運転しているといつ始動したのか分かりません。
ただし、プリウスに比べるとロードノイズが大きく、エンジンが静かなだけにそのへんが余計気になります。
燃費性能はどちらも同じくらい
プリウスの方が車重が重くエンジンも大きいので、普通に考えると燃費は悪そうですが、実際はプリウスもアクアの燃費性能もほとんど変わりません。逆に、若干ですがプリウスの方が良いくらいです。これは、プリウスにより高性能なハイブリッドシステムが搭載されているからです。
プリウスの燃費
ベーシックな「E(前輪駆動)」グレードで、39.0km/l(JC08モード)。
売れ筋グレードの 「S(前輪駆動)」なら、37.2km/l(JC08モード)。
グレードに関わらず4WDモデルだと34.0km/l(JC08モード)になります。
アクアの燃費
ベーシックな「L(前輪駆動)」グレードで、38.0km/l(JC08モード)。
それ以外のグレードなら、34.4km/l(JC08モード)になります。
乗り心地とハンドリング
プリウスのハンドリング
プリウスのハンドリングは重厚感のあるしっかり系です。ドライバーの操作に対して素直な反応で応えてます。これまでのトヨタ系大衆モデルと比較すると、明らかにステアリングの正確性が増してます。初期型にはキビキビとした軽快感がありましたが、マイナーチェンジ後の後期型はこのあたりの特性が抑えられ若干穏やかな印象です。
リアサスが、先代のトーションビーム式からダブルウィッシュボーン式に、プラットフォームも最新の「TNGA」に変わって、走りの質も一段階向上してます。
リアの接地性も高まっており、コーナリング中も姿勢を乱しません。重心が低いこともあって、路面に吸い付くような感じです。このあたりの低重心感は、スポーティモデルの「86」以上だと思います。
アクアのハンドリング
アクアのハンドリングは、プリウスのようなしっかり系じゃありませんが、ドライバーの操作に素直な反応で答える感じはプリウス以上。プリウスよりはキビキビとした軽快感があります。普通のコンパクトカーにしては結構スポーティです。ただし、マイナーチェンジ後はこのあたりの特性が若干抑えられ、穏やかになってます。
アクアの足回りは、フロントにストラット式サス。リアにトーションビーム式サス。前後共にスタビライザーで強化されてますが、構造が簡素なためプリウスのような重厚感はありません。
低い位置に駆動用バッテリーを搭載しているため重心が低く、路面追従性も高いです。コーナリング中は多少ボディを傾けますが、姿勢変化が穏やかで予測しやすいため、不安な感じはありません。
プリウスの乗り心地
乗り心地は少し硬めで、低速では路面からの衝撃を伝えます。燃費性能を重視したエコタイヤを履いているため、空気圧が高くなってるのが原因です。ただし、衝撃の吸収が上手いんで不快な感じはありません。
アクアの乗り心地
前期型は設計が古いため、「TNGA」プラットフォームを使った最新のトヨタ車と比較するとボディが緩く剛性が低いです。硬めのサスセッティングと相まって、路面からの揺れや小さな衝撃を処理しきれず変な雑味を残します。長時間ドライブだと少々疲れますが、街中など短距離重視の使い方なら問題ありません。
ただし、マイナーチェンジによってこのあたりのネガは多少改善されてます。サスペンションの動きがスムーズになって、少し乗り心地が良くなりました。プリウスのような上質感はありませんが、路面からの衝撃も上手く処理してます。硬さや嫌な雑味が抑えられた感じです。
価格
プリウスは中小型車の5ドアハッチバックで、アクアはコンパクトカーです。プリウスには大きなボディを効率良く走らせるため、パワフルなエンジンと電気モーター、大容量の駆動用バッテリーが積まれてます。これに対してアクアはボディが軽いんで、プリウスよりも小さなエンジンと電気モーター、容量の小さな駆動用バッテリーでも十分に走れます。
車としての格も違うんで、結果的にプリウスの方が車両価格は高いです。
プリウスの価格
「E(前輪駆動)」グレード:2,518,560円(税込み)
「S(前輪駆動)」グレード:2,565,000円(税込み)
「A(前輪駆動)」グレード:2,842,560円(税込み)
マイナーチェンジによって若干値上げされましたが、通信モジュール「DOM」の採用や「Tyota Safety Sense」の標準装備など、内容を考えると実質的には値下げになってます。
アクアの価格
「L(前輪駆動)」グレード:1,785,240円(税込み)
「S(前輪駆動)」グレード:1,886,760円(税込み)
「G(前輪駆動)」グレード:2,052,000円(税込み)
ベースグレードで1,785,240円(税込み)という価格は、コンパクトカーにしてはかなり高価です。1年で1万キロ程度の走行では、車両価格の差を燃費で取り戻すのは難しいです。コスパだけで考えれば、素のヴィッツを買ったほうがお得です。それでもアクアが選ばれるのは、ハイブリッドカーの所有感やステイタス、独特のドライヴフィールなんかに魅力があるからでしょう。