1997年に登場した初代プリウスは、量産車初のハイブリッドカーとして登場し、世界中にハイブリッドシステムを広めた功労者です。
最近の人には想像もつかないと思いますが、それまで車の自慢というと、パワーとか見た目のカッコよさ、ボディの大きさなんかが主流だったんですが、これに「燃費の良さ」が加わるほどプリウスの登場は革命的な出来事でした。振り返ってみると、確かにこのあたりから一般の人にも「エコ」の意識が芽生え始めたような気がします。
「エコ」というと、ちょっと偽善的な感じもありますが、自動車にとっては自分の存在を揺るがすほどの重要な問題なんです。
普通の自動車はガソリンを燃やして走っていますが、そのガソリンは今後どこかのタイミングで必ず枯渇します。当然ながら、ガソリンが無くなれば自動車は走れません。トヨタはこの問題の中期的な解決策としてハイブリッドカーを開発。名車プリウスが生まれたという流れです。
ということで今回は、この名車プリウスについて、1997年に登場した「初代プリウス」から2014年に登場した「4代目プリウス」まで、順を追って紹介したいと思います。
初代プリウス
1997年に登場した「初代プリウス」は、量産車初のハイブリッドカーとして登場した中小型の4ドアセダンです。
パワーユニットには、新しく開発した1.5リッター4気筒エンジンと30kw交流電気モーターを搭載。エンジンとモーターをプラネタリーギアで接続し、ハイブリッドシステム全体でCVTのような働きを担う「電気式CVT」を組み合わせてます。
エネルギー効率に優れる「シリーズ・パラレル方式」を採用
ハイブリッドシステムには、電気モーターとエンジンを巧みに使い分けて駆動する「シリーズ・パラレル方式」を採用。走り出しは電気モーターだけを使ってスムーズに走り、スピードが乗ってくるとエンジンの力を併用して力強く加速する仕組みです。駆動力を分配する必要があるんで構造は複雑ですが、その分、エネルギー効率に優れるというメリットがあります。
カタログ上の燃費は「28.0km/l(10・15モード)」で、当時のコンパクトカーや軽自動車を軽く上回っていました。
圧倒的な静けさ
電気モーターのフラットなトルクを使って鋭く加速するんで、見た目のイメージとは裏腹にもっさりした感じはありません。低速域や停止状態ではエンジンノイズを全く発生しませんので、まさに「シーン」といった言葉で表現できるほどの圧倒的な静けさがあります。現在ではハイブリッドカー以外にもアイドリングストップを搭載している車があるんで、そんなに不思議じゃありませんが、当時、試乗した時は本当にビックリしたもんです。
試乗の後、すっかり「プリウス」に魅了された僕は、友達とか知り合いに、「乗ってるだけでカッコいい、次世代の車だ」と吹聴してまわったのを覚えています。
近未来感と実用性を両立した革新的スタイル
初代プリウスの魅力は、革新的なハイブリッドシステムだけじゃなくて、そのスタイリングとかパッケージングにもあります。
これがカローラのように普通の形をしたセダンだったら、「ハイブリッドカーといえばプリウス」というような黄金時代を築くことはできなかったでしょうねえ。
スタイリングは、カリフォルニアにあるトヨタのデザインセンター「CALTY」が担当。ノーズとキャビンがなだらかなラインで一体化したワンモーションフォルムですが、ルーフが高く、側面が垂直に切り立っているんで、意外に室内は広いです。大人4人で乗っても十分な余裕があります。大きなニッケル水素バッテリーを搭載している割に、荷室も広く、家族4人で2泊3日旅行くらいなら楽勝です。
僕は1995年卒業なんですが、当時デザイン科の卒業制作でプリウスと同じようなデザインの車を作った覚えがあります。プリウスのプロトタイプが1995年に発表されていますので、どこかでその開発資料(スケッチとかモックアップ)を見て潜在意識の中に残っていたんでしょうねえ。いや、ほんと、決してパクったわけじゃないです!
価格は大バーゲンプライスの215万円から
車両本体価格はベーシックなグレードで215万。ナビパッケージを装着すると227万円。システムのコストや開発費なんかを考えると「大バーゲンプライス」というか「大赤字」のはずですが、同クラスのベーシックカーと比較すると2倍くらいの値付なんで、どうしても割高感があります。さらに、ハイブリッドシステムやバッテリーの信頼性に対する心配なんかもあって、2代目以降のプリウスのようには売れてません(月間平均販売台数は1000台くらい)。ただし、プリウスは実験的な色合いの強い車ですから、そういったことを考えると十分な結果だと思います。
2代目プリウス
2003年に登場した「2代目プリウス」は、初代の4ドアセダンから一転して5ドアハッチバックになってます。
普遍的なカッコよさがある
モデルチェンジのタイミングでボディ形状が変わるというのは、珍しいんですが、ノーズとキャビンが繋がったように見えるワンモーションフォルムや、トライアングル・シルエット、スパッと切り落とされたリアエンドなど、プリウスらしい特徴はそのまま残ってます。
初代のフォルムは近未来的だし、合理的な利便性も高いしと、なかなかカッコいいデザインだったんですが、2代目のスタイルはより広く一般にも受け入れられるような普遍的カッコよさがあります。
ボディサイズもひと回り拡大され、ギリギリで3ナンバーサイズを超えちゃいました。これは、主要マーケットである北米からの要望によるものですが、それでもまだまだコンパクトなサイズに収まってるんで、狭い日本の道路でも使いやすいです。
ハイブリッドシステムは先代の進化版「THS-Ⅱ」
ハイブリッドシステムは初代の「THS」を進化させた「THS-Ⅱ」。エンジンは先代の改良型なんで、形式自体は変わりません。これに出力50kwの新型電気モーターを組み合わせ、システム全体としての出力とエネルギー効率を向上させてます。
駆動用バッテリーは、先代と同じニッケル水素バッテリー。「EVモード」を選択すれば、電気モーターだけを使った走行もできます。10・15モード燃費は初代から大きく向上して「35.5km/l」になりました。
ドライブフィールが向上
ドライブフィール自体も向上していて、特に中速域からの加速が良いです。初代は中高速域からさらにアクセルを踏み込むと、ガーガーとうるさいエンジンノイズを響かせていましたが、このあたりも改良されてグッと静かになってます。普通にボーッと走らせるだけなら、ハイブリッドカーだと気づかない人もいそうです。
初代は燃費を稼ぐためタイヤが細く、キャンバー角も弱めだったため、高速域での直進安定性がいまいちでした。2代目プリウスではそのあたりが解消され、結構まっすぐ走ります。
疲れにくいシート
シートはコシのあるクッションを使った座りやすい構造です。これなら、長距離ドライブでも疲れにくいと思います。
ボディサイズとともにホイールベースも2700mmに拡大されて、室内空間はずっと広くなりました。ただ、ルーフがリアエンドに向かって緩やかに下降しているんで、後席の頭上空間はちょっとばかり窮屈な感じです。内装カラーが明るい色調から落ち着いたトーンに変わったこともあって、初代ほどの開放感もありません。
プリウスが自動で駐車してくれる
ハイブリッドカーならではの、電気モーターと電動パワーステアリング、電子制御技術を応用した自動駐車システム「インテリジェント・パーキング・アシスト」を世界で初めてオプション設定しています。モニターを使って停めたい場所を設定すれば、後はプリウスが自動でアクセル操作とステアリング操作をやってくれます。ドライバーはブレーキで速度を調整するだけなんで、誰でも簡単に縦列駐車ができちゃいます。
ベーシックグレードで215万円から
価格はベーシックグレードで215万円からと、初代のまま据え置きになってます。これに自動駐車システム「インテリジェント・パーキング・アシスト」を含んだ「G-BOOK対応DVDボイスナビゲーション付きEMV」を付けると238円です。
3代目プリウス
2009年にモデルチェンジした「3代目プリウス」は、先代と同じMクラスの5ドアハッチバックです。「トライアングル・シルエット」と「ワンモーションフォルム」もそのまま先代から受け継いでます。
インサイトの価格競争
3代目プリウスは、同時期に発売された「ホンダ・インサイト」との価格競争なんかもあって、結構話題になったモデルです。「ホンダ・インサイト」はフィットをベースにしているためプリウスよりも安いのはあたり前なんですが、ひとクラス下のインサイトと同じくらいの価格にするため、かなり強引なコストダウンが行われてます。
その影響もあってプリウスの最廉価グレードは、サスペンションからパワーステアリングまで、車の重要な部品が上級グレードとはまったくの別物です。
といってもひとクラス上のモデルがインサイトと同じくらいの価格で買えるんですから、プリウスが負けるはずありません。プリウスのブランド力やハイブリッドシステム自体の性能差もあって、その後インサイトは徐々に失速。一時はモデルとしても消滅することになります。
プリウスとアクアの間くらいを狙えば、インサイトにも勝機があったんでしょうが、なにしろ登場のタイミングが悪すぎです。
エンジンと電気モーターの出力が向上
ハイブリッドシステムに組み合わされるエンジンは、1.5リッターから1.8リッターに拡大。電気モーターの出力もアップして、さらにトルクフルになりました。燃費も先代からわずかに向上して「38.0km/l」になってます。
燃費や出力は向上しているんですが、コストダウンの影響で乗り心地とか質感はいまいち。後期モデルではこのあたりのネガが改善されているんで、中古で3代目プリウスを購入する場合は後期モデルのほうがオススメです。
中古プリウスの買い方については、下の記事でさらに詳しく解説してます↓良かったらどうぞ。
「ステーションワゴン」と「プラグインハイブリッド」が追加
3代目プリウスから派生モデルとして、室内と荷室を拡大してステーションワゴンに仕立てた「トヨタ・プリウスα」と、電気自動車のように充電ステーションからの充電にも対応したプラグインハイブリッド「トヨタ・プリウスPHV」が登場してます。
「3代目トヨタ・プリウス」の【試乗レポート】については、下の記事でさらに詳しく解説してます↓
4代目プリウス
「4代目プリウス」は、2015年にモデルチェンジしたMクラスの5ドアハッチバックです。
先代の欠点を丁寧に潰した
パワーや出力を向上させながら、先代の欠点であったドライブフィールや乗り心地、質感の低さを改善してます。欧州では、質感の高さに定評のある「VWゴルフ」とか「VWポロ」がライバルなんで、先代のままじゃあどう逆立ちしたって勝ち目はありませんからねえ。
アグレッシブすぎる外観
プリウス伝統の「トライアングル・シルエット」や「ワンモーションフォルム」を守りながら、全高を低めスポーティな印象を強めてます。スタイリング自体はこれまでのプリウスに無い、アグレッシブなデザインになってます。
新世代アーキテクチャー「TNGA」を採用
基本となるプラットフォームには、新世代アーキテクチャー「TNGA」を採用。軽量高剛性ボディと低められた重心によって、高い運動性能と乗り心地の良さを両立しました。実際に試乗してみれば分かりますが、ちょっとしたスポーツカー張りの地に張り付いた感じがあります。
ステアリングインフォメーションが豊富で、舵の効き方も自然、低重心の効果もあって、かなり運転が楽しいです。
室内の広さは先代並み
全高が低いといっても、それにともなってフロアも低くなってるんで、室内の広さ自体は先代と変わりません。荷室にも十分な余裕があるんで、家族4人なら2泊3日旅行も余裕です。
シートにも適度なコシがるんで、長時間座っていても疲れにくいです。ただし、僕は人よりガッチリ体型なんで、ちょっと窮屈な感じがありました。
静粛性がさらに向上
遮音性が高く、エンジンノイズ自体も静かなんで、静粛性はかなり高いです。ハイブリッドカーはエンジンが静かな分、ロードノイズや風切り音が気になるんですが、このあたりもしっかりと抑えられてます。
「4代目トヨタ・プリウス」の【試乗レポート】については、下の記事でもさらに詳しく解説してます。よかったら見てください。