今回の試乗レポートは「フィアット テムプラ 2.0i.e SX」。
1990年から1996年に渡って製造販売されていた、小型4ドアセダンです。日本国内では、1992年から1993年まで販売されていました。欧州ではこの4ドアセダンの他に、ステーションワゴンもラインナップされていましたが、日本市場への導入はありません。
ベースとなるプラットフォーム(基本骨格)には、フィアット・ティーポと同じものが使われています。アルファロメオ155やランチア・デドラとは、ほぼ内容が同じ兄弟車の関係にあります。
外観
全長4335mmX全幅1695mmX全高1450mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2540mmとなります。
ハイデッキ化されたトランクに繋がるDピラー(前から4本目の柱)の傾斜がなだらかなため、セダンというよりは5ドアハッチバックに近い独特のスタイリングを持ちます。
フロント
直線基調のフロントノーズに、角型の大きなヘッドライトが組み合わされ、端正な印象フロントフェイスに仕上がっています。兄弟車のアルファロメオ155と比較すると、若干大人しい印象です。
サイド
前後に絞り込まれたボディに大きなキャビンが載せられ、モダンでスポーティ、重厚感のあるサイドビューを構成しています。
リア
ハイデッキ化された重量感のあるヒップラインに、特徴的な四角形のリアコンビランプが装備されます。がっしりとした重厚感を感じさせるリアエンドです。
内装
かっちりとした直線で構成された居心地の良い空間。質感はややプラスチッキーで上質さにかけますが、シンプルで嫌味のないデザインに仕上がっています。
眼前には見やすい文字で刻まれた二眼メーターが装備され、使い勝手、視認性ともに問題はありません。
シート
大柄でたっぷりとしたストロークを持つフロントシート。適度なコシと張りがあるため、長時間座っていても身体が痛くなることはありません。
リアシートのサイズもたっぷりとしていて、大人二人が快適に座ることができます。足元、頭上空間ともに十分な空間が確保されています。
荷室
ハイデッキ化されたヒップラインにより、荷室スペースには十分なサイズが確保されています。家族4人であれば、2泊3日旅行も可能です。
静粛性
ロードノイズや風切音はそれほど気になりませんが、エンジン透過音が大きく、遮音性は今ひとつです。
エンジンとミッション
1995ccの直列4気筒DOHCエンジンに、4速ATが組み合わされます。
エンジンは、110ps/5750rpmの最高出力と、16.2kgf・m/3300rpmの最大トルクを発揮します。
車両重量1250kg。10モード/10・15モード燃費は、–km/lとなります。
エンジン
2.0Lのツインカムエンジンで前輪を駆動。低速域からフラットなトルクを発生する扱い安いエンジンです。街中など日常領域での使い勝手に問題はありません。
高回転域まで回しても淀み無く吹け上がり、気持ちの良いエンジンサウンドを聞かせます。
トランスミッション
トルコン式の4速ATを装備。エンジンの有効なトルクを十分に活かして、普通に加速することができます。スムーズかつダイレクトな印象のトランスミッションです。
足回りとハンドリング
前後ともにマクファーソン・ストラット式サスペンションが装備されます。
足回り
適度に引き締まった快適な足回り。サスストロークもたっぷりとしており、多少の段差であればキレイに衝撃をいなします。
ハンドリング
ハンドリングは、乗用車にふさわしい中庸なセッティングです。キビキビとした神経質なところもなく、かといってダルすぎて嫌になる事もありません。ドライバーの操舵に対して素直な反応を返す、リニアなフィールが気持ち良いです。
ただし、最小回転半径が大きく、狭い路地での切り返しには苦労を強いられます。
評価のまとめ
バランスの良い足回りに素直なハンドリング、力強いパワーユニットが組み合わされた扱いやすいセダンです。
室内空間もたっぷりとしているため、ファミリーカーとして使うには持って来いの車となっています。
ただし、このテムプラは正規輸入されていた期間が1年少々と短いため、正規物を中古車市場で見つけるのは極めて困難な状況です。こういう場合、秋ろーなら、同じシャシーを使ったアルファロメオ155を探します。これなら、当時から人気が高く販売量も多かったので、手頃な価格で簡単に見つけることができます。アバンギャルドなスタイリングと官能的なV6エンジンも大きな魅力です。ただし、かなり古いモデルのためそれなりの維持費用を覚悟する必要がありますが。
価格
新車当時の価格 | 3,200,000円