東京では雪が降り積もることは滅多にありません。そのため、突然雪が積もるとどうして良いか適切な対処が分からず、気軽にサマータイヤで路上に乗り出したドライバーが、スタックやスリップを起こして交通全体に大混乱をもたらします。
乾燥したアスファルトのグリップ力が100だとすると、柔らかな雪が降り積もった状態のグリップ力は20です。ここからさらに一度溶けた雪が凍りつくことでアイスバーン(凍結路)に変化すれば、グリップ力は10以下となってしまいます。
こんな状態の路面を普段と同じような装備と気持ちで走れば、スタックやスリップが起こるのは無理の無いはなしです。
雪国のタクシードライバーに学ぶ
こういった東京のドライバーに対して、東北や北海道のドライバーは流石に雪道の走りに慣れています。
特に雪国のタクシードライバーの場合は、雪が積もっていても結構な速度でガンガン飛ばしています。
これには雪国のプロドライバーならではの様々なテクニックや経験、雪に対して万全の装備など、数々の要素があります。うかつに素人が速度だけを真似していると大きなしっぺ返しを食らうことになります。
ただ、そういったプロのテクニックの中には、素人にも使える安全で簡単なテクニックもあります。その中でも一番簡単でオススメのテクニックは、「轍を選んで走る」というものです。
轍の中は前に走った車によって硬く踏み締められています。適度な凸凹もあるためグリップもしやすく、滑りやすい雪道の中では比較的安定して走ることができる場所です。
わだちの無い、新雪の走り方
これに対して、雪が降ったばかりでまだ誰も走っていないような新雪の道は、そのまま適当に走ると滑りやすく危険です。こういった道を一番最初に走る場合は、速度を控えめにしながら、ゆっくりと新雪を踏みしめるように走ってください。
前輪が踏み締めた「轍」を続けて後輪が通過するため、適当にダラダラと走るよりもぐっと車の挙動が安定します。
また、走り出す時はギアを2速に入れておきます。1速で走り出すと強いトルクがタイヤに掛かり、スリップしやすくなるのです。ATでスノーモードのある場合は、スノーモードを活用します。これも原理的には2速スタートと同じです。
雪道でスタックした時は
雪道でスタックした時は、ギアを2速に入れてゆっくりとアクセルを踏み込みます。これでもタイヤが滑って脱出できない時は、タイヤと雪の間にグリップの媒介となるものを挟みます。
周りに木切れや石がある場合はそれをタイヤの下に敷き詰めます。ゴム製のタイヤチェーンやフロアマットでも構いません。ただし、急激にアクセルを踏み込むとタイヤが木切れや小石を跳ね上げて、車のボディや周りの人にダメージを与えることがあります。車の後ろに人がいる時は、退避してもらってから車を動かしてください。
後輪が滑り出したら、反対側へステアリングを切る
雪道で後輪が滑り出した時は、後輪が滑る方向とは逆にステアリングを切ります。例えば、後輪が右へ滑り出した場合は、左にステアリングを切るという具合です。こうすることで車のスリップを抑え、車の挙動を安定させる効果があります。
といっても、雪道ではこういったテクニックを使わないで済むように、速度を抑えて余裕のある運転をすることがなによりも大切です。また、雪道を走る予定がある場合や、雪のシーズンに入る前にはサマータイヤからスタッドレスタイヤに交換して万全の準備をしておきましょう。
坂道がアイスバーンになっている時や、高速道路で「チェーン装着車以外通行止」規制が出されている場合は、スタッドレスタイヤだけでは走れません。雪のシーズンに入る前には、スタッドレスタイヤと合わせてスノーチェーンの準備もお忘れなく。