今回の旧型レポートは「ダイハツ アプローズ リミテッド」。
1989年から2000年に渡って製造販売されていた、コンパクトな5ドア・ハッチバック・セダンです。
トヨタカローラの車台を使って開発された「先代シャルマン」に対し、実質的な後継車となるこのアプローズでは、基本骨格からすべてダイハツが独自に開発しています。
ただ、初期モデルにあった燃料系の不具合により、火災事故が続発、これを当時の朝日新聞が大々的に報道したため大きく売上を落とすことになります。
その影響はモデル末期まで続き、アプローズはこの一台限りで消滅してしまいました。
外観
全長4310mmX全幅1660mmX全高1375mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2470mmとなります。
一見主張の弱い地味目の外観ですが、よく見るとラインや面のバランスがすばらしく、登場から25年以上経った今でも、おしゃれで上品な趣があります。
このアプローズのデザインがすごいのは、ここまで高い完成度を持ちながらも、他の日本車と全く似ていない独創性にあります。
フロント
適度な丸みを伴った箱型のフロントノーズに、角の丸められた四角いヘッドライトが組み合わされます。地味ながら、なんともいえない趣のある表情です。
サイド
端正なフォルムを持つ、美しいサイドビュー。このアプローズの面白い点は、セダンのシルエットを持ちながらも、リアゲートとリアウィンドウが一体となって開くハッチゲートとなっている点です。
5ドアハッチバックは、リアゲートが大きく開くため、高い積載性の良さを持つ優れたボディ形式です。しかし、なぜか日本市場では受けが悪く、売上は今ひとつです。
そこでダイハツは、5ドアでありながらセダンのように見えるボディスタイルを採用したのです。確かにこのボディ形式なら、見た目の良さと使い勝手の良さを両立させる事ができます。
リア
四角いトランクスペースに、きっちりとした直線で描かれた角型リアコンビランプが装備されます。デザイン的に大きな特徴は無いものの、ボディには緩やかなカーブが与えられています。面のバランスや全体のプロポーションも綿密に計算されているため、上品で美しい印象のリアエンドとなっています。
内装
プラスチッキーな質感のインパネ。古い日本車によく見られる直線基調のデザインです。
広々とした視界と見切りの良いボディによって、極めて運転のしやすい車です。
シート
適度な厚みを持った快適なフロントシートです。クッションにはしっかりとしたコシが与えられており、長距離ドライブでも快適にこなすことができます。
リアシートには、適度な傾斜を伴った座面とたっぷりとした大きさのシートバックが装備され、成人男性が座っても快適に過ごすことができます。頭上、足元空間ともに十分な余裕があります。
荷室
ノッチバック・セダンのシルエットを持ちながらも、実際はリアゲートとリアウィンドウが一体となって開くハッチバックゲートを備えます。
ハッチゲートの大きな開口部によって、大きな荷物の出し入れも簡単です。
静粛性
クラス標準レベルの静粛性。ロードノイズ、風切音ともによく抑えられています。
エンジンとミッション
1589ccの直列4気筒OHCエンジンに、4速ATが組み合わされます。
エンジンは、120ps/6300rpmの最高出力と、14..3kgf・m/4800rpmの最大トルクを発揮します。
車両重量1050kg。10モード/10・15モード燃費は、12.0km/lとなります。
エンジン
1.6Lエンジンで前輪を駆動。フラットなトルクと軽量ボディにより、そこそこ力強い走りをみせます。急な上り坂や合流ポイントでは、若干のパワー不足を感じます。
トランスミッション
トルコン式の4速AT。小さなシフトショックを伴った、スムーズな変速フィールです。
足回りとハンドリング
前後ともにマクファーソン・ストラット式サスペンションが装備されます。
足回り
適度に引き締まった快適な乗り心地です。目地段差ではコツコツと路面の衝撃を伝えますが、角がまろやかに丸められているため、不快な印象はありません。
高速域での安定性も高く、まっすぐに直進していきます。
ハンドリング
ハンドリングセンターからドライバーの操作に対して正確に反応して、自然にノーズの向きを変えていきます。穏やかな印象のステアリングフィールです。
コーナリングの連続するワインディングでも、フラットな姿勢を維持しながら軽快に駆け抜けていきます。
また、コンパクトなボディと最小回転半径の小ささを活かして、狭い路地でもクルリと切り返すことができます。
評価のまとめ
端正なボディと、バランスの良い走りを持った完成度の高い傑作車です。ところが、モデル初期の不具合がマスコミに注目されてしまい、最後まで売上を伸ばすことの出来なかった不運な車でもあります。
この程度の不具合は、工業製品である自動車にはつきものですが、工業製品について深い知識の無いマスコミによって大々的に報じられたため、この車の印象はもとより、ダイハツ自体のイメージも大きく毀損する事になります。
現に、当時のダイハツはしっかりとリコール対策や顧客へのアフターフォロー等も万全に行っており、なんら咎められるような部分はありません。
「あまり目立つ車は好きではないが、カローラやサニーなど無個性な選択はしたくない」、「普段は通勤や買い物に使い、週末は家族でドライブを楽しむ」といった人にピッタリとハマる車です。
価格
新車当時の価格 | 1,807,000円