今回は「新型 ホンダ アクティ トラック SDX(4代目)」を試乗レポート。
2009年にフルモデルチェンジしたフルキャブオーバータイプの軽トラック(2ドア)です。
先代の3代目アクティは、室内空間の拡大と走行安定性を向上させるため、ロングホイールベース(前輪と後輪の間が長い)に加えてボディ先端ギリギリに前輪を配置する「セミキャブオーバー方式」を採用。さらにフロント先端に短いノーズを設けることで安全性能も向上させていました。
これは他社の軽トラックには無い意欲的な設計だったのですが、逆にその設計が災いして「ボディの腹を擦りやすい」とか、「小回りが効かない(最小回転半径4.5m)」、「荷台の前後長が短い」といったデメリットを生んでいます。
農家の作業車として使われることの多い軽トラックにとって、狭い農道での使い辛さは致命的です。結果的にはこのデメリットが原因となり、ライバル他社に多くの既存ユーザーを奪われることになります。
今回登場した4代目アクティは、先代のデメリットを潰すため再びホイールベースを短縮(1900mm)。前輪をボディ先端ギリギリからシートの真下へと戻し、オーソドックスな「フルキャブオーバー方式」の軽トラックへと回帰しています。
安全性能向上のため設けられていた「短いフロントノーズ」は無くなりましたが、巧みなボディ設計によって先代同様の安全性能を維持。広い室内空間を確保したまま、荷台の前後長も拡大しています。
※じっくり読む時間の無い人は、文末の「【試乗評価】のまとめ」をどうぞ↓
「新型 ホンダ アクティ トラック SDX(4代目)」の外観
ボディサイズ、全長3395mmX全幅1475mmX全高1745mm。ホイールベース、1900mm。
フロント
鼻先が短くなり、オーソドックスな軽トラックらしさを取り戻しました。キリッとした角型ヘッドライトが組み合わされ、高い信頼性を表現しています。
サイド
前輪がボディ先端ギリギリから運転席の真下に移動。同時にホイールベースも短くなり、キビキビとした軽快感を感じさせます。ボディサイドにバッテリーが露出しているため、外部電源を取る時に便利です。
リア
四角い荷台に、角型リアコンビランプ。何世代にも渡って使い続けられた、アクティ伝統のリアエンド。道具感あふれるシンプルな形状が頼もしいです。
内装
ブラック樹脂で統一されたシンプルな室内。センタークラスター最上段には、AM/FMラジオ+小物入れ。2DINタイプなので、後付でナビゲーションの装着も可能です。中段にはエアコンユニット。大きなダイヤル式で手探りでの操作も簡単。
小物入れやトレー、ドリンクホルダーなど収納関係も充実しています。
Aピラー(一番前の柱)の位置が若干前寄りになり、室内空間を拡大。さらにタイヤハウスがキャビンの真下に移動したため、足元空間にも余裕が生まれています。
シート
薄型のシートクッションを装備。110mmの前後スライド機構が運転席に装備されますが、リクライニング機能はありません。これで長時間ドライブは勘弁してもらいたいですが、軽トラックの使用用途(短距離作業)を考えれば必要十分なシート構造です。
荷台
ガッシリとした構造のフロアにしっかりと防錆処理が施され、ガンガン作業に使ってもへこたれない堅牢な荷台構造を実現しています。軽トラックは一度購入したら壊れるまで使い倒される運命にあります。こういった作業に直接関わるパーツは、とにかく頑丈なのが一番です。
静粛性
エンジンが後輪の前、荷台の真下にレイアウトされるため、ドライバーからエンジンが遠く意外と静粛性能は高いです。ただし、風切り音やロードノイズはそれなりに響きます。
エンジンとミッション
656ccの直列3気筒SOHCエンジンに、5速MTが組み合わされます。
エンジンは、最高出力45ps/5500rpm、最大トルク6.0kgf・m/5000rpmを発揮。
車両重量780kg。JC08モード燃費は、18.4km/l。
エンジン
656ccのツインカムエンジンで後輪を駆動(MR)。エンジンがフロントアクスルよりも後方、後輪の前にレイアウトされる本格的なミッドシップレイアウト。しっかりと後輪にトルクが掛かるため、安定したドライブが可能です。
やや高回転型のエンジンながら低速からフラットなトルクを発生。超軽量ボディと相まって、キビキビとした小気味いい走りをみせます。
エンジンの吹け上がりもスムーズで、意外とスポーティ。どこまでも淀み無く回ります。
トランスミッション
5速マニュアル・トランスミッションを装備。剛性感のあるダイレクトなフィール。シフトストロークも短いため、手首の返しだけでスパッとシフトチェンジが決まります。
1速はローギアードな設定で、力強い発進をサポート。あぜ道やぬかるんだ泥道の走破性を高めていいます。
足回りとハンドリング
前輪にマクファーソンストラット式サスペンション、後輪にド・ディオン式サスペンションを装備。
足回り
作業用の軽トラックですが、軽量ボディにそこそこしなやかなサスが組み合わされ、不快に感じる事はありません。
ハンドリング
ややステアリングセンターに曖昧な部分があるものの、ステアリングフィール自体は軽快で素直。
ボディ先端ギリギリにあったタイヤハウスは、シートの真下へと移動しています。そのおかげでタイヤの切れ角が増し、狭い場所でも簡単に切り返しができるようになりました(最小回転半径、3.6m)。
加えて、ホイールベースも短縮された為キビキビとした印象を強めています。ただ、タイヤがお尻の真下にあるので、普通の自動車とはちょっとハンドリング感覚が異なります。まあ、慣れれば特に問題ありませんが。
評価のまとめ
秋ろーの実家にも、昔、フルキャブ方式の軽トラックがありました。軽量なボディとしっかりとした低速トルク、ミッドシップを活かした軽快な身のこなし、さらにダイレクトな操作フィールを持つマニュアル・トランスミッションが装備され、お金の無い若者でも手軽に運転を楽しむことのできる貴重な車でした。
この新しいホンダ・アクティにも、当時の軽トラックを思い出させる車の根源的な楽しさがあります。といっても軽トラックですから、走りだけを楽しむために買う人はまずいないでしょう。純粋に軽自動車で走りを楽しみたい人には、「スズキ・アルトワークス」や「ホンダS660」といったスポーティモデルがオススメです。
先代ホンダ・アクティは、ホイールベースの拡大を中心とした改良が災いとなり、他社ライバルに既存ユーザーを奪われています。今回のモデルチェンジでは、先代の反省点をもとにホイールベースを短縮。小回り性能の高さや広い荷台など、「道具としての使い勝手を重視した」オーソドックスな軽自動車に回帰しています。
アクティは、「仕事や農作業にガンガン使いたい」と考えている人にピッタリな一台です。また、田舎ではアクティのような軽トラックを日常の足として使うこともい多いです。そういったシティコミューターとしての使い勝手の良さもアクティトラックの魅力でしょう。
中古車市場では
2017年式「ホンダ アクティ トラック SDX(4代目)」で70万円前後。2014年式で万円前後(2018年7月現在)。
新車価格
830,000円(消費税込み)