中嶋悟といえば、日本人初の年間を通してシーズン参戦したF1ドライバーとして有名です。その走行スタイルは沈着冷静で、どんなアクシデントに見舞われても自分のスタイルを見失うことはありません。そのため、繊細なマシンコントロールと理性を必要とする、ウェットコンディションを最も得意としていました。
普段の性格もこの走行スタイルをそのまま表したような人で、生真面目かつ非常にきれい好きな人として知られています。
酒もタバコも一切口にせず、普段から一流アスリートらしい節制した食生活を送っています。お酒のCMに出演した時には、5杯もビールを飲まされフラフラになってしまったそうです。
この中嶋悟の性格を端的に表すエピソードとして、次のようなお話が残っています。
ブラジルの水道から、直接水を飲んではいけない
ブラジル・リオデジャネイロで行われるF1GPは、当時最高の人気と実力を誇るF1ドライバー、アイルトン・セナの母国という事もあり、大きな盛り上がりを見せていました。
ただし、当時のリオデジャネイロは上下水道の整備が遅れており、水道水を直接蛇口から飲むことはできません。普段日本の水道水を飲みなれている軟弱な日本人が直接口にすると、立ちどころにお腹を壊してしまうほどです。
当時このブラジルGPに参戦していた中嶋悟は、普段のきれい好きな性格とプロドライバーとしての体調管理意識もあって、生水を直接飲むということはありません。
料理もしっかりと火の通った食材以外は口にせず、歯磨きに使う僅かな水でさえ、特別に用意したミネラルウォーターを使うという徹底ぶりです。
レース直前に最適な食べ物
普段の中嶋悟は三度の食事が全部肉でも良いという程の大の肉料理好きです。しかし、レース直前は意図的に炭水化物だけを食べるようにしています。というのも炭水化物は消化吸収が早く、効率的にエネルギーを供給し続けることができるからです。
特にブラジルGPの前は、日本製のカップ焼きそばしか口にしません。カップ焼きそばであれば、沸騰させたミネラルウォーターを使うだけで衛生的ですし、食材自体も日本から直接持ち込むことができます。加えてほとんどの栄養素が炭水化物からできているため、レース前の栄養補給にピッタリなのです。
40を過ぎるとカップ焼きそばのような油でベタベタの食べ物は、ちょっと胃にモタれます。これをレース直前に食べて「消化に良い」なんて、中嶋悟の胃袋もF1なみの高性能な胃袋だったのかもしれません。