駐車禁止の場所に車を停めて荷物の積み下ろしをする時、「その作業の間だけ運転席に人を乗せておけば駐車違反にならない」と言う人がいます。
しかし、これには何の法的根拠も無く、今までこの方法でお巡りさんに捕まった事が無ければ単に運が良かったか、あるいはお巡りさんに「これくらいで捕まえていたのではキリがない」とお目溢しをしてもらっていただけでしょう。
今回は、そんな駐車が違反となる場合と、合法、もしくはお目溢ししてもらえる場合の違いについて解説します。
「駐車」と「停車」の違い
道路交通法上の定義では、人の乗り降りや荷物の積み下ろし、故障による継続的な停車はすべて「駐車」とみなされます。そのため、ドライバーが運転席に「座っている」とか「座っていない」といった事は関係なく、駐車禁止の場所ではすべての「駐車」が道路交通法違反となるのです(ただし5分以内の車両停止は除く)。
これに対して「停車」の定義は「駐車」に該当しない車両の停止のことで、案内板の確認などで一時的に車両を停止させている状態のことをいいます。もちろん、安全確認のために一時的に停止している場合も「停車」に含まれますから、駐車違反に問われることはありません。
「駐車禁止」となる場所について
また「駐車禁止」となる場所は、道路標識で明示的に駐車を禁止されている場所はもちろんの事、車を駐車せる事によって路上に3.5m以上の幅員を確保できない場所。横断歩道から5m以内の場所や、バス停から10m以内、曲がり角から5m以内の場所。トンネル内などは駐車禁止の標識が無くても「駐車禁止」です。
さらに急な坂道や坂道の頂上付近では、「駐車」だけでなく「停車」も禁止されています。
少々の駐車には「お目こぼし」が期待できる?
5分以上の車両停止は「駐車」となるといっても、6分、7分程度ですぐに「駐車違反」となることは滅多にありません。また、荷物の積み下ろしのための駐車であっても、運転席に人が座っていれば大目に見てもらえる事が多いです。
ただし、これは「厳密に法を適用していたのでは社会活動が円滑に進まない」という事を警察が考慮した上で、あくまでも融通をきかせて「お目溢し」をしているだけです。何ら道路交通法上の根拠はありません。
「運転席に人が座っていれば駐車違反にならない」という都市伝説が広まった背景
「運転席に人が座っていれば駐車違反にならない」という都市伝説が広まった背景には、最近実施されている「民間監視員」による駐車禁止の取締があると思われます。
といっても、この「民間監視員」に駐車禁止の取締をする法的権限はありません。つまり、厳密には駐車違反を取り待っているのではなく、「人が乗っていない放置車両を警察に報告している」だけなのです。
「運転席に人が座っていれば駐車違反にならない」というのは、この民間監視員の報告範囲「運転席に人が座っていると放置車両にならない」が誤って拡大解釈され、誤解されて伝わったのが原因でしょう。
大手運送会社は検挙されない?
その他の路上駐車にまつわる都市伝説として、「大手の運送会社が路上駐車をしても検挙されないのは、裏で政治家と話がついているからだ」というものがあります。
しかし、少し前の報道で「ドライバーの駐車違反を知人が身代わりした(いわゆる身代わり出頭)」なんて話もありますので、この都市伝説には何の根拠も無かったようですね。
つまり、「これは仕事だから、これくらいならお目溢しされるだろう」と安易に判断して駐車違反を繰り返していると、ある日突然検挙されてもおかしく無いという事です。
運送会社に雇われて働いている人にはどうしようもありませんが(この場合も雇用者が駐車スペースを確保するなどの配慮が必要)、普通の人は駐車を禁止されている場所はもちろんの事、人の迷惑になりそうな場所には停車すべきではありません。