欧州でプレミアム・ミッドサイズセグメントの市場は年々拡大を続けています。その中には歴史のあるメルセデスベンツやBMWを筆頭に、ブランド価値を高めながら市場への影響力を強めているアウディの姿も見られます。
加えて、シュコダ、フォルクスワーゲン、オペル、フォードなどのミッドサイズ大衆車の売れ行きも好調で、ミッドサイズセグメント市場の活性化を大きく後押ししています。
目次
- 大衆車よりも高級車の方が売れている
- プレミアムメーカーの創意工夫
- お得な値付けの高級車
- ミッドサイズセグメントから撤退した日本車メーカー
- 2016年11月における欧州ミッドサイズセグメントの販売台数と順位
大衆車よりも高級車の方が売れている
その中でも特徴的なのは、主流となる大衆車クラスのミッドサイズセグメントは1%の増加に留まりますが、利幅の大きなプラミアム・ミッドサイズセグメントの車は8%以上の増加を示しているという事です。これは、中間層の景気が悪いわけではありませんが、それ以上に富裕層により多くの富が集中しているという事を表しています。
この傾向は今年限りのことではなく、今後しばらく続くとみられています。そのため、今後、各メーカーにもこの顧客層に合わせたマーケティングと商品開発が求められるでしょう。
実際に販売を担当している営業サイドからは、当然この顧客ニーズに合わせた販売戦略の立案が行われていますが、市場動向の動きが早すぎて追いついていない状況です。
そのため、プレミアムクラスに準ずる立ち位置をとる、フォルクスワーゲン・パサートや、フォード・モンデオにも一部の顧客が流れ始めています。
プレミアムメーカーの創意工夫
このプレミアム・ミッドサイズセグメント好調の影には、富裕層における景気の拡大だけではなく、ドイツ高級車メーカー勢の地道な努力があります。
BMWは今までの伝統的なラインナップを見直し、スポーティで使い勝手の良い5ドアモデル「3シリーズGT」を導入したり、セダンでありながらクーペのような美しいスタイリングを持つ「4シリーズ」などを発表して成功を収めています。
これはアウティや、メルセデスベンツにおいても同様で、近年ドイツ高級車メーカーの間で流行している手法です。
お得な値付けの高級車
また、その他のプレミアム自動車メーカーも、現在主流のプレミアム・ミッドサイズセグメントより少し安い価格帯の市場にもその販路を広げようとしています。それは、「アルファロメオ・ジュリア」や、「ジャガーXE」といったモデルです。
この車たちは、サイズこそミッドサイズセグメントに属していますが、価格は3シリーズやCクラスといったプレミアムモデルよりも、若干お得な値付けがされています。といっても大衆車よりは高いわけですから、「Cクラスは買えないけど、ジュリアなら買える、といっても大衆車ではないのでそれなりの満足感も得られる」といった、絶妙なさじ加減が与えられています。
ミッドサイズセグメントから撤退した日本車メーカー
現在、売れ行きの好調な欧州ミッドサイズセグメント市場ですが、すでにフィアット、ホンダ、日産自動車などはこの市場から撤退しています。ホンダにはアコード、日産自動車にはスカイラインといったミッドサイズセグメントのモデルはありますが、どうも、あと一歩、欧州の人に買ってもらえるだけの魅力が足りません。
それは、低速トルクのある扱いやすいエンジン、しっかりとした足回りなどに加えて、上質な内外装といった車の基本的な魅力です。
このあと一歩の魅力が備われば、現在アルファロメオが新しく販路を広げようとしている、「ちょっとお得な高級車」といったセグメントにこそ、日本車に最適な市場となるはずです。
2016年11月における欧州ミッドサイズセグメントの販売台数と順位
(1)フォルクスワーゲン・パサート [189091台]
(2)メルセデスベンツ・Cクラス [162546台]
(3)アウディA4 [152029台]
(4)BMW 3シリーズ [132495台]
(5)シュコダ・スパーブ [79533台]
(6)オペル・インシグニア [68495台]
(7)フォード・モンデオ [66979台]
(8)BMW 4シリーズ [63686台]
(9)ボルボ S60/V60 [47429台]
(10)アウディA5 [40913台]
(参考:Automotive News Europe)