アトキンソンサイクルとは
一般的に良く知られている4ストロークエンジンは、「吸気」「圧縮」「燃焼」「排気」の4つの行程を繰り返しながら、混合気の燃焼エネルギーを運動エネルギーに変えて、エンジンを作動させる「オットーサイクル」と呼ばれるエンジンです。
またオットーサイクルでは、この4つの行程におけるピストンのストローク量は、4つの全ての行程で同一です。
これは、エンジンがピストンとコンロッドを使って、燃焼エネルギーを取り出している限り変わりません。
ピストンとコンロッドによる物理的なストローク量が、常に変わらないからです。
つまり、混合気を圧縮した圧縮比と、燃焼により得られたエネルギーによる膨張比は、同じだけしか得られないという事です。
しかし、もし混合気を圧縮したストローク量(圧縮比)以上に、燃焼により得られたストローク量(膨張比)を長くする事ができれば、今まで廃熱として捨てられていたエネルギーを、運動エネルギーとして取り出す事ができ、効率の良いエンジンが作れる事になります。
この理論を元に作られたエンジンが、「アトキンソンサイクルエンジン」という訳です。
ホンダのEX link
実はこのエンジンのアイディアは、ジェームズ・アトキンソンにより、既に1882年に考え出されていました。
この技術者の名前を取って「アトキンソンサイクル」という名前が付けられたのです。
しかし、当時の技術では制作が困難で、実現にはいたりませんでした。
それから、100年以上の歳月が流れ、ついに「復リンク式高膨張比エンジン」としてこのエンジンを開発していたホンダが、2011年に「EX link」として開発に成功し、汎用エンジンとして商品化を実現しています。
この「EX link」の仕組みは、コンロッドとクランクシャフトの間に、「トリゴナルリンク」というマルチリンクを設置し、このトリゴナルリンクのおむすび型の一カ所にコンロッド、もう一カ所にクランクシャフト、最後の一カ所にスイングアームを取り付けます。
このスイングアームの反対側には、クランクシャフトの半分のスピードで回転する「エキセントリックシャフト」という軸が装着されています。
この、クランクシャフトとエキセントリックシャフトの回転差により、アトキンソンサイクルのピストンストロークは、圧縮の際のストローク(圧縮比)は短く、燃焼・膨張の際のストローク(膨張比)は長くとる事が出来るようになっています。