【試乗レポート】新型トヨタ ノア(3代目)ちょっと控えめ、だけどカッコいい [DBA-ZRR80WAPXSP]

トヨタノア前面画像

今回の【試乗評価】は「新型 トヨタ ノア Si (7人乗り・3代目)」。
2014年にフルモデルチェンジした、Mクラスのミニバン(5ドア)です。

2001年に登場した「初代ノア」は、先代の「タウンエース ノア」から派生したモデルで、先行して発売されていた「イプサム」のFFプラットフォームを使ってました。同時に兄弟車種となる「ヴォクシー」も発売され、こっちの方が「ノアよりちょっとだけ厳つい」というデザインが受けて大ヒット。オリジナルの「ノア」を上回る販売台数を記録してます。

トヨタ・ヴォクシー ZS 煌のフロント

新型 トヨタ・ヴォクシー ZS 煌(3代目・80系)【評価レビュー】マイナーチェンジによって精悍さを増したスタイリング [DBA-ZRR80W]

2018年2月12日

さらに、今回のモデルチェンジでは「エスクァイア」というゴージャスな兄弟車も追加されました。つまり、ヴォクシーと併せて3兄弟体制となったわけです。少しだけキャラクターをずらしたモデルを発売して、ユーザーの細かいニーズに応えるというのは、昔からトヨタの得意とする戦略でございます。まあ、こういう手法はある程度の経営規模が無いと難しんで、小さなメーカーだと真似しにくいってものありますけど。

初代ノアが発売されて20年近くが経ちましたが、今でも日本はミニバンブーム真っ只中。というより「定番商品になった」と言ったほうが良いかもしれません。ただし、同じミニバンといってもその内容はちょっとだけ変化していて、背の低いスタイリッシュ系の人気はイマイチで、背の高い箱型ミニバンの方が売れてます。

その中でも5ナンバーサイズ(エアロ付きは3ナンバー)に収まる「ノア&ヴォクシー」の売上は好調で、ライバルの「日産セレナ」と人気を二分する勢いです。

じっくりと読む時間の無い人は、文末の「【試乗レポート】のまとめ」をどうぞ↓
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「新型 トヨタ ノア Si (7人乗り・3代目)」の概要

今回の3代目ノアは、初代から受け継ぐ「5ナンバーサイズ」とか「背の高い箱型ミニバン」、「3列シート」などのコンセプトをそのまま使ってます。いわゆるキープコンセプトモデルってやつですね。

加えて、ホイールベースの延長(+25mm)や全長の拡大(+100mm)で、2代目以上の実用性や走行安定性も実現してます。先代のコンセプトやスタイルを継承しながら、ボディを僅かに拡大させるというのは、好調なモデルでよくある手法です。まあ、せっかく売れてる商品なのに、方向性を大きく変える必要はありませんからね。

ノアのような5ナンバーサイズ・ミニバンは、最近売れ筋のモデル(軽ハイト系ワゴンとかコンパクトカーなど)の中では利幅が大きいんで、商品開発にも力が入ってます。車の基本性能はもとより、室内には小物入れやらカップホルダーなんかがふんだんに装備されて、至れり尽くせりって感じです。

さらに今回のモデルから、このクラス初となる「フル・ハイブリッド・システム」も搭載されました。先代「セレナ」にも一応「ハイブリッド」はありましたが、あちらは機能を限定した「マイルド・ハイブリッド・システム」なんで、ノアのハイブリッドシステムとは仕様が違います。

プラットフォームなど

新開発の「低床プラットフォーム」を採用してます。床が低くなったおかげで、室内の広さと乗り降りのしやすさが向上。同時に低重心化にもなってるんで、走行安定性も良くなりました。

ライバルは

ライバルは、国産の5ナンバーサイズ・ミニバン。「日産・セレナ」や「ホンダ・ステップワゴン」などです。

マイナーチェンジ情報

2017年にマイナーチェンジを実施。新形状グリルや薄型LEDヘッドライトの採用など、フロントまわりを中心にデザインの手直しが行われ、重厚感を強調したデザインになりました。

その他には、高剛性ガラス接着剤の採用によるボディ剛性の強化(スポット溶接の打ち増しなどは無し)。スライドドアのシール見直しによる静粛性能の向上。ショックアブソーバーの改良による、足回りの再調整なんかが行われてます。

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外観

従来は、厳つい顔の「ヴォクシー」に対して、穏やかな「ノア」というハッキリしたキャラクター分けになってましたが、今回から「ノア」もちょっとだけ重厚感のあるデザインになってます。これに専用エアロの付く「Si」を選択すれば、さらに精悍な印象が強まります。といっても「ヴォクシー」ほどのに「厳つさ」は無いんで、「精悍なデザインが好きだけど、ヴォクシーじゃ厳つすぎるなあ」と悩んでいた人には嬉しい選択肢となるでしょう。

「厳つい」デザインの意外な実用性

ミニバンに興味の無い人からすると、「なんであんな厳ついデザインが売れるのかなあ」と不思議に思うかもしれませんが、これには以外な実用性もあるんです。例えば、最近「煽り運転」や「無謀な割り込み」なんかが話題になりますが、こんな時こそヴォクシーの「厳つい」デザインが本領を発揮します。

ミニバンは体積が大きいので、それでなくてもある程度の威圧感がありますが、これにヴォクシーのような「厳つい」デザインが組み合わされると、さらに威圧感が増して煽り運転や無謀な割り込みをされにくくなるんです。

その他には、スペース効率をギリギリまで突き詰めた箱型ミニバンは、スタイリングが単調になりがちで、あまりシンプルが過ぎると商用車のようになってしまいます。ということで、限られたスペースを使ってハッキリした個性を出すには、ヴォクシーのような「厳つい」系の方がやりやすいってのもあるんです。

フロント

今回「ノア」のスタイリングテーマは、ヴォクシーと同じ「エモーショナルボックス」です。簡単に言えば、「箱型ミニバンなのに感情を揺さぶるデザイン」って感じでしょうか。

ノアのフロント周りには、バキバキにメッキ塗装された大型フロントグリルを装備。これはノアだけの専用アイテムなんで、ヴォクシーと比べるとノアの方が重厚な感じになってます。

サイド

短いノーズに、背の高い居住スペースを組み合わせた箱型デザイン。基本的に直線が多いんで、精悍な印象です。「Si」を選ぶとこれにエアロが付くんで、さらにキリッとした感じになります。

サイドから見るとほとんどヴォクシーと同じなんで、オーナーじゃないと見分けるのは難しいです(ちらっと見えるライト類くらいしか違いが無い)。

リア

「大きくて四角いリアエンドに、巨大なリアウィンドウ」といった具合に、箱型ミニバンは各社同じようなデザインになりがちなんです。

そんな中「ノア」は、リアウィンドウの左右に縦型リアコンビランプを付けたり、メッキガーニッシュに「NOAH」の文字を刻んだりと、なんとか個性を出そうと工夫してます。そんなこんなで、ノアならではの堂々とした重厚感とか、穏やかな感じがなんとなく出てるんじゃないでしょうか。

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内装

トヨタノア内装画像

プラスチックの素材感を活かした、シンプルで実用性の高い室内。ミニバンというのは家族や友達をたくさん乗せてガシガシ使う車ですから、へんに高級感があるより、こういったデザインの方が気を使わなくてすむんで扱いやすいと思います。

ボディが四角くてノーズが短く、目線も高いんで、車両感覚が掴みやすいですねえ。さらに、フロントウィンドウ両端の柱(Aピラー)が細く、傾斜も緩いんで、斜め前方の死角は小さめ。ということで、運転のしやすい車になってます。

四角いボディのおかげで、室内の広々感はかなりのもんです。加えて、3代目からは新開発された「低床プラットフォーム」を使ってますから、床が低くい分、乗り降りがしやすいです。床の低さには、「室内を縦方向に拡げる」とか、「重心が低くなって、走りが安定する」なんてメリットもあります。

メーターナセル

メーターナセルには、見やすいグラフィックで構成された3目メーターを内蔵。中央が速度計で、左が回転計、右が燃料計の並びです。速度計の下には小さな液晶パネルがあって、走行距離やシフトポジションなんかも表示してます。

センタークラスター

センタークラスター最上段には、車輌情報やエアコンの作動状況なんかを表示する「マルチインフォメーションディスプレイ」をレイアウト。その直下には、ナビゲーション地図やオーディオ情報などを表示する「大型液晶ディプレイ」があります。

その直下、送風口を挟んで、最下段に「インパネシフト」と「エアコンの操作ユニット」が並んでます。エアコンは僕の好きな「ダイヤル式」じゃ無いけど、スイッチ自体が大きく若干上を向いてることもあって、操作性は悪くありません。

シート

フロントシートは、大きめのフレームにストロークのあるクッション。柔軟な表皮が組み合わされるんで座り心地が良いです。

セカンドシートには、広々とした足元と、広大な頭上空間。さらに「7人乗り仕様」には、専用の「スーパーリラックスシート」が付いてます。こいつは、左右のシートが横一列に連結された「ベンチシート」と違って、それぞれのシートが独立しているんで、一人一人がゆったりと座れます。その分、シートの乗車定員は一人分減って、2人乗りとなります。いわゆる「キャプテンシート」ってやつですね。

セカンドシートにたっぷりとした空間とスライド機構のための余白を与えてるんで、相対的にサードシートのスペースは小さくなります。シート自体も小さく、クッションも薄いんで、長時間ドライブには向きません。まあ、こういったクラスのサードシートは、緊急の時にパカっと広げて便利に使うためのものですから、これくらいあれば十分でしょう。

荷室

サードシートを拡げていると荷室スペースはかなり小さくなります。それでも、サードシートの下にポッカリと空いた空間があるんで、積み方を工夫すれば、家族4人で日帰り旅行くらいならなんとかなるでしょう。

まあ、普段はサードシートを跳ね上げて、折りたたんでおく事が多いでしょうから、それなら荷室スペースは広大です。このモードなら、荷物のかさばるキャンプ遊び(家族4人で)も余裕だと思います。

静粛性

マイナーチェンジで、静粛性向上に効果のある、エアロパーツやスライドドアまわりのシールを追加。元々、エンジン音自体が静かだし、ロードノイズの対策も上手いんで、このクラスとしては静かな部類に入ります。

エンジンとトランスミッション

1986cc・直列4気筒エンジンを搭載。
最高出力152ps/6100rpm、最大トルク19.7kgf・m/3800rpmを発揮。

車両重量1600kg。JC08モード燃費、16.0km/l。

エンジン

2.0リッターエンジンで前輪を駆動(FF)。

1.6tの大柄なボディに2リッターのガソリンエンジンですから、有り余るほどのパワーはありません。といっても、街中を普通に走るくらいならこれで十分でしょう。出足も軽快でスムーズ。アクセルの踏み込みに応じてリニアにトルクが高まるんで、「扱いやすいなあ」って感じです。出足から中高速域まで、なめらかな曲線を描きながら気持ちよくトルクが伸びていきます。

マイナーチェンジで若干ノイズが低減されたこともあって、初期型に比べると、ちょっとだけフィールに上質感があるのも嬉しいポイントです。

トランスミッション

ベルトとプーリーの組み合わせによって無断階に変速するCVTを装備。

街乗りで普通にアクセルを踏み込むくらいなら、自然で違和感のない変速を行います。変速ステップの無いCVTなんで、ギクシャクとした段付き感とも無縁。スムーズで扱いやすいトランスミッションです。

ただし、きつくアクセルを踏み込むと、エンジン回転が先に高まって、その後、ノロノロとスピードが上がっていく「ラバーバンドフィール」が発生します。といっても従来よりは控えめになってるし、こういった特性はエネルギー効率を高めていることの「裏返し」でもあるんで、実際のところ大した問題じゃないです。スポーティな車にこのトランスミッションが付いてたら、ガッカリですけど。

乗り心地とハンドリング

前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはトーションビーム式サスペンションを装備。

乗り心地

装着タイヤは、205/60R16。

基本的には適度に引き締まったスポーティな乗り味ですが、マイナーチェンジでショックアブソーバーの減衰力が調整され、若干マイルドになりました。

デコボコした路面なんかでは衝撃を室内に伝えやすいし、バタバタとした上下動も気になるけど、衝撃の角が程よく丸いんで不快なレベルじゃありません。

それから、足回りが程よく引き締まったおかげで、「腰高感が抑えられ、高速域でも結構安定して走れる」なんてメリットもあります。安定感の高さはライバルのセレナと良い勝負でしょう。

ハンドリング

モデルチェンジによって、ステアリングやサスのセッティングが見直され、ボディ剛性も大幅に強化。自然で扱いやすいハンドリングとなりました。さらに低床プラットフォームの採用で、重心も低くなってますから、ノーズの向きを変えやすいってのもあります。ライバルのセレナと比較しても曲がりやすい特性です。

コーナーの連続するワインディングに持ち込んでも、無駄に煽られない分、割とスムーズに走り抜けちゃいます。背の高いミニバンなんである程度のロールは許しますが、姿勢変化が自然で予測しやすいんで、運転していても不安になりにくいんです。もちろん、スポーツカーのような速度域じゃありませんけど。

素直なハンドリングに対して、リアの接地性が高く、コーナリング中も比較的安定してます。乗り心地と快適性、ハンドリングのバランスが取れた良いセッティングです。

最小回転半径は、5.5m。ボディサイズを考えれば標準的なレベルですが、目線が高くノーズも短いので車両感覚自体は掴みやすいです。

先進安全技術

先進安全技術は、レーザーレーダーと単眼カメラを組み合わせた「Tyota Safety Sennse」を装備してます。

予防安全技術としては、衝突を予測して回避、もしくは被害低減をはかる「プリクラッシュセーフティ(歩行者検知機能付き)」や、車線からのはみ出しを警告する「レーンディパーチャーアラート」。

運転支援技術としては、ハイビームとロービームを自動で切り替える「オートマチックハイビーム」とか、先行車の発進を検知して知らせる「先行車発進告知機能」なんかが付いてます。

【試乗評価】のまとめ

「新型 トヨタ ノア Si (7人乗り・3代目)」は、Mクラスのミニバン(5ドア)です。

5ナンバーサイズに収まる箱型ボディに3列7人乗りシートを搭載してるんで、室内の広々感とか使い勝手は抜群。四角いボディを活かした精悍なスタイリングもカッコいいです。

1.6tの大柄なボディに2リッター自然吸気エンジンですから、爆発的な動力性能はありませんが、街中など日常ユースならさほどの問題はありません。アクセルの踏み込み量に応じてリニアにトルクが立ち上がるんで、速度の制御がしやすいです。

乗り心地はやや硬めで引き締まった感じがありますが、不快なレベルにはありません。ハンドリングは素直でミニバンとしては正確な部類。もちろん、スポーツカーのようなキビキビ感は無くて、適度な穏やかさを伴うバランスの良いセッティングです。

「家族のために使い勝手の良い箱型ミニバンを探している」とか、「ヴォクシーじゃ、ちょっとばかり厳つすぎるなあ」なんて考えていた人にピッタリな車だと思います。

中古車市場では

2018年式「トヨタ ノア Si (7人乗り・3代目)」で250万円前後。2015年式なら220万円前後(2019年3月現在)。

新車価格

2,792,880円(消費税込み)

ABOUTこの記事をかいた人

クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

ブログの内容はあくまで秋ろーの個人的見解です。実際に車や商品、サービスを購入する際は、自分で試乗や調査をして確かめることをオススメします。

記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

修正ばっかりしてると新記事の投稿ができないんで、新記事3に対して修正1くらいの割合でやってます(2019年6月〜)