キャブレターは燃料を噴射する装置としてはきわめて優れた仕組みでしたが、さらに効率的なシステムを作り出そうとして考えられたのが、今回解説する「燃料噴射装置」です。
一般には「フューエルインジェクション」とか、単に「インジェクション」と呼ばれています。
燃料噴射装置とは
キャブレターの場合、ベンチュリー部分を通過する気流は、狭い空間を通過する事で加速してさらに負圧を生じます。
そして、燃料は燃料タンクから細い管を通ってチャンバーと呼ばれる小さなタンクに送られ、この負圧とチャンバーに掛けられた圧力によって吸気管内に噴射される仕組みです。
これが「燃料噴射装置」の場合は、燃料を燃料タンクからパイプを通してインジェクションまで送り、ポンプによって加圧してやることでインジェクターから吸気管内へ噴射する仕組みです。
第二次世界大戦中に開発される
燃料噴射装置が初めて用いられたのは、第二次世界大戦中の戦闘機からです。ドイツのメッサーシュミットに搭載され、背面飛行などの負圧時でも安定した燃料供給力を持っていました。この技術は日本やイタリアにも伝えられライセンス生産されていました。
ディーゼル用を流用
ディーゼルエンジンは点火プラグを用いない筒内噴射による燃焼システムでしたので、この燃料噴射装置が先行して使われていました。
初期のガソリンエンジン用の燃料噴射装置も、このディーゼル用の装置を流用したものです。
しかしガソリンエンジン用の燃料噴射装置はディーゼルエンジン用とは違い、吸気管内に燃料を噴射するだけですので小さな圧力が掛かれば十分です。そういう事もあって、その後は徐々にガソリンエンジン専用の燃料噴射装置が使われるようになりました。
電子制御式に移行
近年になるとコンピューター技術が発達し、インジェクションから供給される燃料の量を細かく調整できるようになっています。
これによりアクセルの開度や、気象条件、路面状況などを統合的に解析して、最適な燃料量をエンジンに供給できるようになっています。
結果的にクリーンな排ガスと高い燃費性能、大きな出力を持った高い性能のエンジンが作れるようになりました。
さらに効率の良い直噴タイプ
この技術はさらに発達し、より細かく燃料噴射を制御しようと考案されたのが、「燃料直噴型エンジン」です。
これはこれまで吸気管内に噴射していた燃料を、燃焼室内で直接噴射する事によって、よりきめ細かい燃焼状態のコントロールが可能になる技術です。