【コラム】静粛性の高い静かな車

静粛性の高い車の画像

車の静粛性というのは、ドライバーや乗員の疲れに大きな影響を与える重要な要素のひとつ。自動車メーカーとしても、全ての車を出来るだけ静かにしたいのは山々です。

といっても静粛性を高めるには、遮音材や吸音材など、重くコストの掛かる部材がたくさん必要になります。加えて、遮音材で重くなったボディをスムーズに走らせるには、エンジンや足回り、ボディ剛性など、様々な部分の強化も必須。結果的に廉価なコンパクトカーや軽自動車ではできる遮音対策は限られます。

つまり現状で静かな車を買おうとすれば、Lクラスサルーンなどある程度以上の高価な車が中心になるわけです。といっても自動車メーカーも「安いんだからうるさいのは我慢な」なんて事は考えていません。エンジン音を気持ちよく聞かせたり、コストを抑えながらなるべく静かな車作りを行ったりと、できる範囲で可能な限りの遮音対策を実施しています。

今回はこういった遮音対策について、高級車だけでなく廉価なコンパクトカーについても含めて幅広く紹介したいと思います。

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記憶に残る静粛性の高い車たち

僕が今まで所有してきた車の中に、印象に残るほど静かな車は残念ながらありません。ただ、知人の車に乗ったり試乗した車の中には、ビックリするくらい静かな車が何台かあります。
その中でも特に印象的なのが、「現行型クラウン(14代目)」と「BMW750iL(3代目)」の二台。

現行型クラウンは、そのフラットで柔らかな乗り心地の良さにも驚かされますが、静粛性の高さがスゴイです。外部からロードノイズやエンジンノイズが侵入してくる事はほとんど無く、遠くで僅かに低周波の共鳴音が聞こえるだけです。

ただ、このクラウンをドライバーズカーとして欲しいかと問われれば、ちょっと考えてしまいます。誰かに運転してもらいながら助手席や後席に乗っているだけなら確かに快適ですが、運転している実感や楽しさが希薄なんです。「静か」というよりも「無音」といった感じでしょうか。

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難しいノイズ(騒音)の処理

静粛性と一言でいうのは簡単ですが、実際はそう単純なものではなく、「騒音(ノイズ)」、「突き上げ」、「バイブレーション」といった3要素が複雑に絡み合っています。

この中でも特に対策が難しく、かつ重要な要素が「騒音(ノイズ)」です。このやっかいな「騒音」を消し去るには、エンジン自体のノイズを小さくする事と、ボディに遮音材や吸音材をたっぷりと仕込む以外に確実な方法はありません。

先程のクラウンの場合は、ボディ全体に大量の遮音材や吸音材が施されており、全車重の約5%程度をこういった遮音関係の部材が占めるといわれる程です。

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静かさの種類が違うBMW750iL(エンジン音やロードノイズの処理が素晴らしい)

静粛性といっても、単純に音が車内に侵入しなければそれで良いというモノではありません。エンジンノイズやロードノイズを完全に遮断して無音状態を作り出してしまうと、逆に運転している実感や楽しさが感じられなくなるというジレンマがあるからです。

例えば、ほぼ「無音」状態を作り出しているクラウンに対して、BMW750iLは「静かだなあ」と感じさせつつも、ある程度のエンジン音やロードノイズの侵入を許します。

ただし、エンジン音が侵入してくるといっても人間の五感に訴えかける気持ちの良い音に調整してあるため、かえって上質感や運転する楽しさを感じさせることが出来るのです。

「鈴虫の鳴き声」や「風鈴の音」を聞くことで、かえって静かさや情緒を感じてしまう。そういった情緒的「静かさ」に近いものがあります。

「欧米の人は鈴虫の鳴き声をただの騒音として感じる」といった説を耳にする事がありますが、本当でしょうか?少なくとも自動車作りにおいては、そういった説は間違っているように思います。

コンパクトカーでは、あえてノイズを聞かせる

このような「遮音材をふんだんに詰め込んで騒音(ノイズ)を徹底的に消し去る」といった手法は、ボディが小さくコストの安いコンパクトカーでは使えません。そこで欧州の大衆車メーカーが取った対策は、「エンジンノイズやロードノイズを消すのではなく、逆に気持ちよく聞かせてやろう」といった逆転の手法です。

フィアット500に搭載される「ツインエア」は、ガーガーとうるさい2気筒エンジンですが、エンジン音に快活で気持ちのいいチューニングが施されており、運転しているだけで楽しくなります。自動車黎明期の古き良き趣を感じさせるエンジンです。

ちょっと古い車ですが「三菱ミニカ(4代目)5MT」にも、こういった素朴な味わいや運転する楽しさがありました。

日本の小型車やコンパクトカーの最大の美点は耐久性の高さですが、静粛性についてもかなりのレベルにあります。といっても小型車ですから、コストの掛かる遮音材がふんだんに盛り込まれているわけではありません。工作精度の向上や細かな改良を積み重ね、エンジン自体のノイズを小さくしているのです。こういったコストを掛けない静粛技術については、トヨタの右に出るものはありません。クラウンの高い静粛性能も、このような基礎技術の集積によるところが大きいです。

今後の静粛性対策技術

最新型の「BMW i8」や「ホンダ・S660」には、スピーカーから擬似的なエンジンサウンドを発して、多気筒エンジンのような官能的エンジンサウンドを作り出すというシステムが搭載されています。「ホンダ・S660」の場合は、iPhoneと車(センターディスプレイ装着車のみ)を接続することで「マクラーレンF1(MP4/5)」や「ホンダ・NSX-R」など、かつて名車と言われた車たちのエンジンサウンドも楽しむ事ができます。

この他のデジタル技術を使った静粛性対策としては、「ノイズキャンセリング技術」があります。この技術は、騒音に人間には聞こえない逆位相の音をぶつけ、人工的に騒音を聞こえなくするといった仕組みです。これにはコンサートフォールやヘッドフォンなど、すでに実用化されている音響技術が応用されています。

BOSEのノイズキャンセリング技術

具体的な例としては、音響機器メーカー「BOSE」が製造販売する「QuietControl 30」というヘッドフォンがあります。

このヘッドフォンの中には周囲の音を検知するセンサーがあり、このセンサーの情報をもとに逆位相の音を発生。騒音にぶつける事で、物理的に不要なノイズを消し去る仕組みです。

さらにスマートフォンにダウンロードした専用アプリと連携させれば、ノイズキャンセリング(遮音)効果を自在にコントロールする事も可能。音楽を聞きながら仕事に集中したい時には「ノイズキャンセリング効果」を高めておき、隣の人とミーティングをしたい時には「ノイズキャンセリング効果」を低くするといった使い方ができるのです。

これは車に使われている「ノイズキャンセリング・システム」も同様で、車内の会話や音楽はしっかりと聞き取れるが、車外から侵入するノイズは遮断するという微妙な調整が行われています。

車の省エネ化を進める上でボディの軽量化は重要な要素。加えてコンパクトカーの場合はコスト要件も大切です。ノイズキャンセリング技術を使えば、こういった要素を阻害することなく比較的簡単に遮音対策が可能です。

また、最近はトヨタ・プリウス日産・リーフを始めとする、始めからあまりエンジン音を発生しない静かな電動車が増えています。ただし、こういった電動車は逆にエンジンが静かすぎて「ロードノイズや風切音が気になる」とか、「歩行者に気づかれにくい」といった新しい問題も生んでいます。

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ABOUTこの記事をかいた人

akiroo

クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

ブログの内容はあくまで秋ろーの個人的見解です。実際に車や商品、サービスを購入する際は、自分で試乗や調査をして確かめることをオススメします。

記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

現在、古い「試乗関連」の過去記事を全面書き換え中。その分、新しい記事の投稿が少なくなります(2018年4月〜)