【コラム】静粛性の高い静かな車

静粛性の高い静かな車

エンジンノイズやロードノイズ、風切り音が小さくて静かな車のことを「静粛性が高い」なんて言いますが、車が静かだとドライバーに与えるストレスが減って結果的に疲れにくくなります。「快適性や上質感を感じさせる」という効果も大きいです。そんなこともあって自動車メーカーとしても全ての車をできるだけ静かにしたいんですが、コストや重量、ボディサイズなんかを考えるとそう簡単じゃありません。

長距離運転でも疲れない車

【コラム】長距離運転でも疲れない車(ランキング付き)

2016年7月28日

静粛性を高めるのに一番効果的なのは、遮音材や吸音材をたっぷりと使うことです。ただし、それだと重くコストの掛かる部材が沢山いります。そんなこんなで重くなったボディをそれなりに走らせるためには、エンジンの出力向上や足回りとかボディ剛性の強化も必要です。まあ、ボディサイズが大きくていくらでもコストの掛けられる高級車ならそう大きな問題じゃないですけど、ボディが小さくコストの安いコンパクトカーとか軽自動車じゃ、かなり厳しいんですよねえ。

ということでそれなりに静かな車を買おうとするなら、どうしてもLクラスサルーンとかの高級車になっちゃいます。とはいえ、「なんだよ、結局良い思いをするのは金持ちだけじゃないか」なんて諦める必要はありません。コンパクトカーや軽自動車だって、限られたコストの中でなるべく静かに快適な走りができるようにと最大限の工夫がされてます。

今回はそんな自動車の「静粛性」や「遮音対策」について、高級車だけじゃなくて軽自動車からコンパクトカーまで幅広く触れながら解説してきます。

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記憶に残る静粛性の高い車たち

僕が今まで所有した車は、5ナンバーから3ナンバーのいわゆる大衆車ばかりです。そんなわけで、静粛性に関しては印象に残るほどのものはありませんでした。ただし、試乗した車や知人から借りた車を入れれば話は別です。

その中でも特に印象深いのは「トヨタ クラウン(14代目)」と「レクサス LS 500h(5代目)」、それから「BMW 750iL(3代目)」の三台。

現行型クラウンはそのフラットで柔らかな乗り心地の良さにも驚かされますが、なんといっても静粛性の高さがスゴイです。外からロードノイズやエンジン音が侵入してくることはほとんどありません。レクサスLSはそれをさらに進化させた感じです。

とはいえ、この静かで快適な車をドライバーズカーとして欲しいかと言われれば、ちょっと考えてしまいます。誰かに運転してもらって助手席や後席に乗る分には確かに快適ですが、自分で運転している実感や楽しさといったものが少々希薄なんですねえ。「静か」というよりも「無音」といった表現のほうがしっくりくる印象です。

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難しいノイズ(騒音)の処理

静粛性と一言でいうのは簡単ですが、実際はそう単純なものではなく、「騒音(ノイズ)」、「突き上げ」、「バイブレーション」といった3要素が複雑に絡み合っています。

この中でも特に対策が難しく、かつ重要な要素が「騒音(ノイズ)」です。このやっかいな「騒音」を消し去るには、エンジン自体のノイズを小さくする事と、ボディに遮音材や吸音材をたっぷりと仕込む以外に確実な方法はありません。

先程のクラウンの場合は、ボディ全体に大量の遮音材や吸音材が施されており、全車重の約5%程度をこういった遮音関係の部材が占めるといわれる程です。

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静かさの種類が違うBMW750iL(エンジン音やロードノイズの処理が素晴らしい)

静粛性といっても、単純に音が車内に侵入しなければそれで良いというモノではありません。エンジンノイズやロードノイズを完全に遮断して無音状態を作り出してしまうと、逆に運転している実感や楽しさが感じられなくなるというジレンマがあるからです。

例えば、ほぼ「無音」状態を作り出しているクラウンに対して、BMW750iLは「静かだなあ」と感じさせつつも、ある程度のエンジン音やロードノイズの侵入を許します。

ただし、エンジン音が侵入してくるといっても人間の五感に訴えかける気持ちの良い音に調整してあるため、かえって上質感や運転する楽しさを感じさせることが出来るのです。

「鈴虫の鳴き声」や「風鈴の音」を聞くことで、かえって静かさや情緒を感じてしまう。そういった情緒的「静かさ」に近いものがあります。

「欧米の人は鈴虫の鳴き声をただの騒音として感じる」といった説を耳にする事がありますが、本当でしょうか?少なくとも自動車作りにおいては、そういった説は間違っているように思います。

コンパクトカーでは、あえてノイズを聞かせる

このような「遮音材をふんだんに詰め込んで騒音(ノイズ)を徹底的に消し去る」といった手法は、ボディが小さくコストの安いコンパクトカーでは使えません。そこで欧州の大衆車メーカーが取った対策は、「エンジンノイズやロードノイズを消すのではなく、逆に気持ちよく聞かせてやろう」といった逆転の手法です。

フィアット500に搭載される「ツインエア」は、ガーガーとうるさい2気筒エンジンですが、エンジン音に快活で気持ちのいいチューニングが施されており、運転しているだけで楽しくなります。自動車黎明期の古き良き趣を感じさせるエンジンです。

ちょっと古い車ですが「三菱ミニカ(4代目)5MT」にも、こういった素朴な味わいや運転する楽しさがありました。

日本の小型車やコンパクトカーの最大の美点は耐久性の高さですが、静粛性についてもかなりのレベルにあります。といっても小型車ですから、コストの掛かる遮音材がふんだんに盛り込まれているわけではありません。工作精度の向上や細かな改良を積み重ね、エンジン自体のノイズを小さくしているのです。こういったコストを掛けない静粛技術については、トヨタの右に出るものはありません。クラウンの高い静粛性能も、このような基礎技術の集積によるところが大きいです。

今後の静粛性対策技術

最新型の「BMW i8」や「ホンダ・S660」には、スピーカーから擬似的なエンジンサウンドを発して、多気筒エンジンのような官能的エンジンサウンドを作り出すというシステムが搭載されています。「ホンダ・S660」の場合は、iPhoneと車(センターディスプレイ装着車のみ)を接続することで「マクラーレンF1(MP4/5)」や「ホンダ・NSX-R」など、かつて名車と言われた車たちのエンジンサウンドも楽しむ事ができます。

この他のデジタル技術を使った静粛性対策としては、「ノイズキャンセリング技術」があります。この技術は、騒音に人間には聞こえない逆位相の音をぶつけ、人工的に騒音を聞こえなくするといった仕組みです。これにはコンサートフォールやヘッドフォンなど、すでに実用化されている音響技術が応用されています。

BOSEのノイズキャンセリング技術

具体的な例としては、音響機器メーカー「BOSE」が製造販売する「QuietControl 30」というヘッドフォンがあります。

このヘッドフォンの中には周囲の音を検知するセンサーがあり、このセンサーの情報をもとに逆位相の音を発生。騒音にぶつける事で、物理的に不要なノイズを消し去る仕組みです。

さらにスマートフォンにダウンロードした専用アプリと連携させれば、ノイズキャンセリング(遮音)効果を自在にコントロールする事も可能。音楽を聞きながら仕事に集中したい時には「ノイズキャンセリング効果」を高めておき、隣の人とミーティングをしたい時には「ノイズキャンセリング効果」を低くするといった使い方ができるのです。

これは車に使われている「ノイズキャンセリング・システム」も同様で、車内の会話や音楽はしっかりと聞き取れるが、車外から侵入するノイズは遮断するという微妙な調整が行われています。

車の省エネ化を進める上でボディの軽量化は重要な要素。加えてコンパクトカーの場合はコスト要件も大切です。ノイズキャンセリング技術を使えば、こういった要素を阻害することなく比較的簡単に遮音対策が可能です。

また、最近はトヨタ・プリウス日産・リーフを始めとする、始めからあまりエンジン音を発生しない静かな電動車が増えています。ただし、こういった電動車は逆にエンジンが静かすぎて「ロードノイズや風切音が気になる」とか、「歩行者に気づかれにくい」といった新しい問題も生んでいます。

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クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

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記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

修正ばっかりしてると新記事の投稿ができないんで、新記事3に対して修正1くらいの割合でやってます(2019年6月〜)