今回の【試乗レポート】は、「新型 マツダ・アテンザ ワゴン XD L Package(3代目・2WD)」。
2012年にフルモデルチェンジした、Mクラスのステーションワゴン(5ドア)です。マツダが誇るフラッグシップモデルで、この他に4ドア・セダンもあります。
リーマンショック後の世界的な不況の煽りを受け、一時マツダの経営状態は大きく落ち込みます。そこでマツダが取った経営戦略は、「基本から見直した良い車づくりを行う」という高付加価値を狙う戦略です。
この戦略の基づいて開発された「新世代マツダ車」は、エンジンとプラットフォーム(基本骨格)を同時に見直すことで、柔軟な設計が可能となり、限られたコストの中でより高い性能を実現しています。
アテンザは、CX-5に次ぐこの「新世代マツダ車」第二弾。CX-5同様、「スカイアクティブ・テクノロジー」を使ったエンジンとプラットフォームに、「魂動デザイン」によって形作られたスタイリングを組み合わせます。
ロードスターと同じ「人馬一体」の考えで設計された走りが与えられ、ステーションワゴンでありながらスポーティな走りと高い実用性を両立。ディーゼルエンジン搭載車には、近頃珍しい「6速MT」まで用意されます。
現在、国産ステーションワゴン市場はどんどん縮小し、あの「レガシィ」も「アウトバック」というクロスオーバーSUVタイプのステーションワゴンを作るのみ。オーソドックスなMクラスのステーションワゴンは、このアテンザだけになってしまいました。
強いてライバル車種をあげるとすれば、欧州高級ステーションワゴン「アウディ・A4 アバント」や「BMW・3シリーズ ツーリング」、「メルセデスベンツ・Cクラス ステーションワゴン」などになりますが、値段が違い過ぎます。
2018年にビッグマイナーチェンジを実施。内外装の変更とともに、足回りやエンジン、先進安全技術「i-ACTIVSENSE」のアップデートも行われています。
※じっくり読む時間の無い人は、文末の「【試乗レポート】のまとめ」をどうぞ。
「新型 マツダ・アテンザ ワゴン XD L Package(3代目・2WD)」の外観
ボディサイズ、全長4805mmX全幅1840mmX全高1480mm。ホイールベース、2750mm。
フロント
しなやかなフロントノーズに、大型メッシュグリル。なめらかなメッキモールドで、シームレスに連結されるLEDヘッドライト。今回のマイナーチェンジによって、より上質な大人のプレミアムワゴンとなりました。
サイド
薄く前後に引き伸ばされたボディ。ダイナミックな19インチ大径アルミホイール(高輝度塗装)。なだらかに傾斜するルーフラインに、傾斜の強い前後ピラー(柱)。ステーションワゴンの実用性を維持しながら、スポーティで伸びやかなスタイリングを実現しています。美しく均整の取れたサイドビューです。
リア
緩やかに張り出すリアフェンダーに、メッキモールドで左右に連結されるリアコンビランプ。小さく絞り込まれたリアウィンドウ。安定感と力強さを感じさせる後ろ姿。
内装
インパネ周りもフルモデルチェンジに匹敵する大幅なデザイン変更を実施。上質なソフトバッドにメタル調フィニッシャー。ピアノブラック調パネルのコンビネーション。水平を基調にした上質な室内です。
メーターナセルには、新デザインとなった三眼式メーターを配置。スポーティな砲弾型メッキモールドを廃止して、ベーシックなデザインを採用しています。さらにインフォメーションディスプレイの大型化と速度メーター中央への移動も実施。視認性と分かりやすさを向上しています。
センタークラスター最上段には、ナビゲーションや車輌情報などを表示する液晶ワイドディスプレイ。中段のエアコンユニットは、手探りの操作もしやすいダイヤル式。
「新世代マツダ車」から導入された、「適切なドライビングポジション」と踏み込みのしやすい「オルガン式アクセルペダル」。うねりのあるボディによって少々見切りは悪いものの、基本的には運転のしやすい車です。
シート
フロントシートは、マイナーチェンジによって微妙にシート形状を調整。コシのある硬めのクッションと柔軟な表皮のコンビネーションによって、快適な座り心地を実現しています。
リアシートの表皮にも柔軟性があり、シートクッションの硬さも適正。足元、頭上空間ともに広々とした空間が確保され、大人二人で座っても窮屈感はありません。
荷室
荷室には、506リッターに及ぶ広大な空間を容易。家族4人であれば、荷物のかさばるキャンプ遊びも余裕です。さらに床下にも収納が容易され、細々したものを整理するのに便利です。
静粛性
「ナチュラル・サウンド・スムーサー」と「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」の採用によってエンジンノイズを大幅に抑制。ディーゼルエンジン特有のノイズはほとんどありません。
さらに遮音材が追加され、これまで以上の静粛性を確保しています。
エンジンとミッション
2188cc・直列4気筒DOHCディーゼルターボエンジンに、6速ATが組み合わされます。
エンジン:最高出力190ps/4500rpm、最大トルク45.9kgf・m/2000rpm。
車両重量1630kg。WLTCモード燃費、17.8km/l。
エンジン
2.2リッターのディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 2.2」で前輪を駆動(FF)。4リッターガソリンエンジン並のトルクを発生するパワフルなエンジンです。特に極低速域でのトルクは圧倒的で、1.6tあまりのボディを物ともせずグイグイと加速します。マイナーチェンジよって、エンジンレスポンスが向上。速度をコントロールしやすいです。
低速トルクを重視したセッティングのため、エンジンを回してもトルクの盛り上がりはありません。ただし、回転フィール自体は爽快かつ軽やか。ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの特性を掛け合わせたようなフィールです。
トランスミッション
トルコン式の6速ATを装備。ディーゼルエンジン特有の分厚いトルクを活かして、エンジン回転を低めに維持しながらスムーズに加速します。ダイレクトな変速フィールが心地いいです。
乗り心地とハンドリング
前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはマルチリンク式サスペンションを装備。
乗り心地
装着タイヤは、225/45R19。
若干引き締まったしなやかな乗り味。スムーズなライド感で快適性と運動性能のバランスが取れています。19インチタイヤ装着車は硬めの印象で、低速域では多少バタつく感じがあります。乗り心地の良さを重視するなら、17インチ仕様がオススメです。
セダンよりホイールベースが80mm程度短くなりますが、直進安定性に悪影響はありません。フラットな姿勢を維持して真っ直ぐに走り抜けます。
ハンドリング
適度な重さを残した上質なステアリングフィール。質感の高さは電動パワステの中でも出色の出来。ドライバーの操舵に素直に反応して、正確なターンを描きます。
ワインディングに持ち込んでも、大柄なボディを感じることはありません。ヒラヒラとした動きで、スポーツカーのように駆け抜けます。
「G-ベクタリング・コントロール」によって、アクセルを微妙に制御し接地性を高めていますが、どちらかといえば「縁の下の力持ち」といった存在で、派手な制御の演出はありません。言われなければ気づかないくらい薄い制御ですが、確実にアテンザの動的質感を高めています。
最小回転半径は、5.5mとごく一般的なレベル。
その他
先進安全技術は、新型カメラとミリ波レーダーを併用した「i-ACTIVSENSE」を搭載。
このパッケージには、前方の車や歩行者を検知して衝突を回避、もしくは被害軽減をはかる「アドバンス・スマート・シティ・ブレーキ・サポート」や、車線逸脱を検知してドライバーに知らせる「車線逸脱警報システム」、「AT誤発進抑制制御(前後)」などが含まれます。
その他には、道路標識を認識してヘッドアップディスプレイに表示する「交通標識認識システム」も搭載。知らない街をのんきに運転していると、「あれ、この道の制限速度は何キロかな?」なんて事がよくありますが、そんな時に助かる機能です。
【試乗レポート】のまとめ
「新型 マツダ・アテンザ ワゴン XD L Package(3代目・2WD)」は、マツダが誇るMクラスのステーションワゴン。
伸びやかなスタイリングに広々した室内と荷室。トルクフルなエンジンに上質な乗り味。素直でスポーティなハンドリングが与えられ、実用性能と運動性のふたつが見事にバランスしています。
レガシィ ステーションワゴンが、クロスオーバーSUVタイプのみとなり、トヨタ・アベンシスも生産終了となった今。国産車で、このクラスの上質なステーションワゴンを買おうとするなら「アテンザ」しかありません。
「広い室内と荷室を持った車を探しているが、ミニバンは所帯じみて嫌」とか、「ドイツ高級ステーションワゴンの上質な乗り味は魅力だが、価格が高すぎる」なんて人に最適な一台となります。
中古車市場では
2017年式「マツダ・アテンザ ワゴン XD L Package(3代目・2WD)」で300万円前後。2014年式で200万円前後(2018年6月現在)。
新車価格
3,952,800円(消費税込み)