あなたが普段運転している車には、車の速度を計測するための「速度メーター」が装備されています。速度を正確に把握していなければ、速度が超過して速度違反になってしまうからです。
こういった乗用車の速度メーターは、車の車軸に装備されている計測器で、車軸の回転を検知して車の速度を割り出しています。そのため、タイヤやホイールを交換して、タイヤの外径が大きく変化した場合は、正確な速度を表示することができません。速度メーターに正確な速度を表示するためには、標準サイズのタイヤやホイールが一番という事です。
F1マシンに「速度メーター」はいらない
これに対してF1マシンの場合、通常の速度メーターは装備されません。F1は「どれだけ速く走ることができるか」を競うレースです。一般道のように制限速度を気にして走る必要はありません。つまり、「今、自分が時速何キロで走っているか」なんてことを気にしているF1ドライバーはいないのです。それよりもラップタイムの方が何倍も重要な指標となります。
外気との相対的な速度差を計測するための「ピトー管」
といってもF1マシンの場合は、エンジンの冷却や空気抵抗を考えるため、相対的な外気との速度差を知る必要があります。しかし、これは普通の自動車のような通常の「速度メーター」で計ることはできません。
そのため、「ピトー管」と呼ばれる特別なパーツが、F1マシンのフロント上部に設置されています。
この「ピトー管」は、元々飛行機のために考案されたパーツです。その原理は、このピトー管の先端から外気を取り込むことで、外気と機体の速度差を計測するというものです。
内部には二重に空気の通り道があり、これが管の奥に設置された気圧計で繋がります。正面に向いている空気穴には、そのまま機体との相対速度差を持った空気がガンガン進入してきます。これに対して管の脇に設置された空気穴には、負圧によって相対的速度差がゼロとなった空気が入ります。つまりこの2つの空気を使うことで、外気との相対的な速度差を計測する事ができるのです。
得られた情報はデジタルデータとして、ピットへ無線送信される
この「ピトー管」で得られた外気との相対的な速度差は、通常の場合、ほとんどF1ドライバーに知らされる事はありません。
F1マシンで得られたこのデータは、そのままデジタル信号として無線でピットに送信されます。ピットにはコンピュータが設置されており、F1マシンから送信されてきたデータをリアルタイムで処理、使い勝手の良いビジュアルデータとして表示します。
後は、ピットにいるスタッフがこの情報を元に次の対策や作戦を立案、F1マシンを更に速く走らせるために活用されるという訳です。
テレビ中継で表示されるF1の速度はどうやって計る?
F1マシンに速度メーターが無いことは分かりましたが、それならば、テレビ中継画面に表示されるF1の速度はどのようにして計測しているのでしょうか。
少し前であれば、野球中継と同じようにスピードガンによって計測されていました。しかし現代では、さらに正確に速度を計測するため、コース上に設置された等間隔のラインをマシンのセンサーで検知、GPSの情報と組み合わせて自動的に計算する仕組みに変更されています。