現在のオートマチックトランスミッションは、どんどんと多段化が進み、一昔前は4速ATが一般的であったものが、5速や6速と徐々に多段化がエスカレートし、メルセデスベンツでは7速ATが一般的なトランスミッションとなっています。
ついに9速ATまで登場
また、新しいメルセデスベンツEクラスにおいては、ついに9速ATが搭載されるにまでいたっています。この新しいトランスミッションの名前は「9G-TRONIC」といいます。
この「9G-TRONIC」は、トランスミッションの重さを従来と同じに抑えながらも、さらに2段分のギアが追加されているというのがすごいところです。
ギアが9段になったことで変速がスムーズで燃費効率も高くなり、また速く走りたいときは小さなステップで最適なトルクを使いながらスポーティに走ることができるようになります。
メルセデスベンツによれば、今後の縦置きエンジンを搭載するモデルには、全てこの9速ATが搭載されるということです。そのため、ガソリン車用だけではなく、ハイブリッド車用とプラグインハイブリッド車用も同時に提供されるという事です。
オートマッチトランスミッションの理想の形がシフトショックの無い無段変速だとすれば、このトランスミッションの多段化というのは有効なアプローチのひとつといえます。
大排気量エンジンでギアを少なく
ギアを多段化するという動きと逆のアプローチが、「エンジンのトルク大きくフラットにすることで、少ないギアでもスムーズに走れるようにする」という方法です。
これは、1950年代ごろのアメリカ車でよくみられた方法で、大排気量のエンジンに3速ATを組み合わせて、エンジンのフレキシブルで大きなトルク特性を使って、重くて大きなボディをものともせず、力強くゆったりとした走り心地を実現していました。
ただ、大きなエンジンならこの3速ATで十分ですが、これがトルクのピーキーな小排気量エンジンとなると、効率的にパワーを取り出すためにはギアをどうしても多段化してやる必要があります。ところが、当時はコンピューター技術が未熟なため、ギア多段化するにはマニュアルミッションを組み合わせるしかありませんでした。
フラットトルクのエンジンと多段化されたATを組み合わせる
これが現代になると、エンジン技術とコンピューター制御技術が格段に進化し、少ない排気量でも大きくフラットなトルクを持つエンジンや、トルクバンドの狭いエンジンからも効率的にパワーを取り出すことのできる多段化されたATが開発されています。
つまり、小排気量で大きくフラットなトルクを発生するダウンサイジングターボと、効率良く多段化された7速DSGが組み合わされた最新型のVWゴルフ7などは、内燃機関を搭載する自動車としては一つの理想型を示しているといえます。
そのため、こういった現代の車は、「トルクフルでキビキビした走りと、効率の良い燃料消費」という相反する二つの要素を高次元でバランスさせることができるのです。