あなたが車のカタログを眺める時、どんなところを中心に見ていますか?まあ、普通はスタイリングとか価格、室内や荷室の使い勝手くらいでしょう。車好きなら、馬力やトルク。家族を預かるお父さんやお母さんなら、燃費や安全性能も気になります。
しかし、車にはその特性を左右する要素が他にもいくつかあるんです。
今回はそんな要素の中から、「最終減速比(ファイナル)」についてなるべく分かりやすく解説してみたいと思います。
「最終減速比(ファイナルレシオ)」は車のキャラクターを表す
エンジンから出力された回転力は、トランスミッションを経て変速され、ディファレンシャルギアでさらに減速されて、タイヤホイール(駆動輪)へと伝えられます。このディファレンシャルギアで減速されるギア比の事を、「最終減速比(ファイナル)」と呼びます。
「最終減速比(ファイナルレシオ)」は、その車のキャラクターを特徴づける大きな要素です。最終減速比が大きければエンジンを比較的高回転まで回しながら走る車であり、逆に、最終減速比が小さければその車はエンジンをあまり回さずに走る車であるということが分かります。
また、一般論として最終減速比が小さな車は、「最高速度の高いハイスピードカーに多い」という傾向があります。
しかし、ハイスピードカーとして有名なフェラーリの最終減速比は以外と大きめで、比較的エンジンを高回転まで回しながら走ります。逆にポルシェの最終減速比は小さく、エンジンをあまり回さずに走る車です。
少し前のドイツでは、最終減速比が小さく、エンジンを回さなくても高速で走ることのできる車がもてはされていました。いわゆる「高速を主体としたクルマづくり」というやつです。これに対して曲がりくねった細道の多いイギリスでは、最終減速比が大きく、エンジンをガンガンぶん回してキビキビと走る車が好まれていました。
こういった傾向はグローバル化の進んだ現代でも残っており、ドイツ車には今でも高速走行を得意とする車が多いです。
オーバーオールギアを比べる
車のキャラクターを数値から読み解く時、最終減速比を比べるだけでは片手落ちで、変速比と最終減速比をかけ合わせた数値「オーバーオールギア」も比べる必要があります。
例えば、スバルBRZの最終減速比は「4.1」ですが、5速の変速比は「0.713」です。これを掛け合わせて「オーバーオールギア」を求めると「2.9233」となります。
フェラーリとポルシェの場合も「オーバーオールギア」が大きく異なっており、この2つの車のキャラクターが大きく異なっていることをハッキリと示しているのです。
エンジンの小さな車はオーバーオールギアが大きい
小排気量エンジンの場合、このオーバーオールギアの値が大きくなる傾向にあります。小さなエンジンを高回転までしっかりと回してやることで必要なパワーを稼ぎ、車を力強く走らせようとしているんです。いわゆる「ハイギアード」というやつですね。まあ、現在ではこの手の車は少なくなりましたが、走るのが好きな人には好まれます。
逆に排気量が大きく低速から中高速まで分厚いトルクを発生するエンジンの場合は、エンジン回転を高める必要があまり無いので、オーバーオールギアを小さく抑えることができます。その結果、ノイズもバイブレーションも小さくなり、相対的に燃費も良くなりやすいです。
ダウンサイジングターボ
最近は大排気量エンジンと小排気量エンジンのメリットを併せ持つ、「ダウンサイジングターボ」というエンジンが増えています。これは排気量の小さなエンジンにターボを組み合わせた技術で、小排気量エンジンでありながら、低速からターボをしっかりと効かせることによってフラットで分厚いトルクを発生させるのです。
ダウンサイジングターボを搭載したエンジンは、小排気量エンジンでありながら「オーバーオールギア」を小さくすることができます。エンジンをあまり回さなくても必要なトルクが得られるので、ノイズやバイブレーションが小さく、燃費も良いんです。まあ、簡単に言ってしまえば、「小排気量エンジンと大排気量エンジンの良いとこを詰め合わせた」ということになりますね。