初心者や普段あまり車に乗る機会の無い人の場合、「後ろ向き(バック)に駐車するのは苦手だ!」と考えている人は多いです。特に周りに車や人がひしめき合っていたり、駐車場自体が狭く何度も切り返して駐車するような場所ではなおさらでしょう。
そんな場所では後方確認のしにくい「後ろ向き(バック)駐車」より、ついつい車両感覚の掴みやすい「前向き駐車」で停めたくなりますね。ところがこれは大きな間違いで、実際には「前向き駐車」より「後ろ向き(バック)駐車」の方が簡単でしかも安全です。
もちろん車両感覚を掴むための練習やコツは多少必要ですが、それさえクリアすれば難しいことは何もありません。
そこで今回は、そんな「後ろ向き(バック)駐車」について「どうすれば簡単に駐車できるようになるのか」、そのコツと共に練習方法についても解説したいと思います。
土地の広いアメリカでは「前向き」で駐車する事が多い
土地の広いアメリカでは駐車場一台分のスペースがやたらとデカイため(周りの通路も!)、前向きで駐車しても余裕を持って簡単に停めることができます。多少車が斜めになっていても、周りのスペースがたっぷりとあるため「隣の車が近すぎてドアが開けられない!」なんてことにもなりません。
前向きに停めることで通路側にトランクが来るので、「カートから荷物を移すのが楽」という事情もあります。駐車場から車を出す時も、通路の幅が広いので死角の多い後ろ向き(バック)でも比較的安全です。
日本のミニバンに「スライドドア付き」が多い理由とは
これに対して日本の駐車場は、駐車場自体のスペースが狭く周りの通路も細いです。こんな場所で前向き駐車をすると「内輪差(内輪差については後ほど解説します)」のせいで車は斜めになり、とても「余裕を持ってドアを開ける」なんてことになりません。日本市場でスライドドア付きのミニバンが大人気なのは、こういった事情も大きいんです。
斜めになった車を真っ直ぐに立て直そうとしても、通路が狭いので何度も切り返すことになります。その分、周りの車や人と接触するリスクも増大しますので、あまりオススメできる方法とはいえません。
狭い場所では「後ろ向き(バック)駐車」の方が簡単
こういう狭い場所では、前向きに駐車するより後ろ向きに駐車する方が簡単です。狭い通路から進入してハンドルを切りながら後退すれば、狭い場所でも大きく車の向きを変えられるからです。また、前向きに駐車する時に発生しやすい「内輪差」も最小限に抑えられます。
「内輪差」とは
ここで「内輪差」について簡単に説明しておきましょう。
内輪差とは、「前向き駐車」のように狭い場所でステアリングを切って曲がろうとする時、前輪が通った場所(軌跡)よりもさらに内側を後輪が通ることで生じるタイヤ軌跡のズレ(差)のことです。つまり目標物ギリギリをかすめるように前輪を通過させた場合、後輪はその目標物に接触する可能性が高くなります。
「後ろ向き(バック)駐車」が簡単な理由とは
これに対して「後ろ向き駐車」の場合は、後ろ側のタイヤ(ちょっとややこしいですが、この場合は前輪のことです)が舵を切りますので前側のタイヤ(後輪)の外を後ろ側のタイヤが通ります。ということは内輪差が発生しないどころか、前側のタイヤを軸にコンパスのように車の向きを大きく変えられるという訳です。
これが日本の狭い駐車場で「後ろ向き駐車」が推奨される理由です。もちろん、日本の駐車場であっても郊外の大きなショッピングモールなんかは、駐車場もだだっ広いので「前向き駐車」でも大丈夫です。目的の駐車スペースに合わせて臨機応変に使い分けてください。
後ろ向き(バック)駐車の仕方
後ろ向き駐車の仕方について、ここでは「駐車場の通路を直進しつつ、向かって左側の駐車スペースに停めるケース」を例に解説します。
まず、ゆっくりと徐行で直進しながら、左側の駐車スペースから70cmくらいのところを走ります。その後、運転席が目的の駐車スペースに差し掛かったところで右側にステアリングを切り、通路右側ギリギリまで寄せて停車します。この時、ハンドルがまっすぐ(直進状態)になっていると後の操作がやりやすくなります。
この段階であなたの車は、目的の駐車スペースの左前方に車体を左斜めに向けて停車しているはずです。
次に左ドアミラーの上下角度を調整し、左後輪が接地している路面がミラーに映るようにします。ここからまっすぐ後ろに後退を始めますが、速度はクリープよりも若干遅くなる程度にブレーキで調整してください。後ろの安全確認はミラーだけでなく、直接目視を織り交ぜるとやりやすいです。
最適な身体のポジション
車を後退させる時の身体のポジションは、ハンドルのセンター(頂点の真ん中)を右手で握り、左手を助手席の背もたれに掛けると上体が安定します。
クリープより若干遅いスピードでまっすぐに後退をしていると、そのうち左後輪が「駐車スペースの左ライン前方」に差し掛かります。このタイミングで左にハンドルを切り、車が駐車スペースに対してまっすぐになるまで後退してください。車が「まっすぐ」になりかけたらハンドルを直進状態に戻し始め、完全に車が「まっすぐ」になると同時にハンドルも直進状態にあれば理想的です。うまくできない時は、車を前後させて(切り返し)調整しましょう。
駐車の時に一番大切なのは
駐車の時に一番大切なのは、「ゆったりとした気持ちで落ち着いてやる」ということです。ただ、スーパーの駐車場やコインパーキングでは次から次へと車が来るので、どうしても「早く駐車しなくちゃ!」と焦ってしまいますね。こんな時はハザードを点灯させながら駐車してください。ハザードを点灯させておけば周りへのアピールになりますし、自分の気持ちを落ち着かせる効果も期待できます。