世界初の2ストロークエンジン
世界初の2ストロークエンジンは1858年に、ベルギー出身のジャン・ジョゼフ・エティエンヌ・ルノアールが開発しました。
「ルノアール・エンジン」とも呼ばれます。
石炭から生成された照明器具用のガスを燃料として使うもので、自動車用ではなく、工場等の動力源として用いられていました。
自動車用2ストロークエンジンは、1880年にイギリス人のデュカルト・クラークにより開発されました。
「クラーク・サイクル・エンジン」とも呼ばれています。
現在の2ストロークエンジンとは異なり、排気バルブと吸気バルブを備えた複雑な構造を持っていました。
現在、主に使用されているシンプルな構造の2ストロークエンジンは、1889年にロンドンのジョセフ・デイにより開発されたものです。
「デイ式2ストロークエンジン」とも呼ばれています。
燃焼効率をある程度犠牲にしつつ、構造を簡略化、並びに小型化することに成功した革新的なエンジンです。
当時は、小型の自動車やオートバイで盛んに用いられましたが、燃焼効率の悪さや騒音、振動などの大きさから徐々に廃れ、現在、国内の自動車では用いられていません。その後オートバイでは使用されていましたが、2000年以降の排ガス規制の強化により、国内では製造されなくなりました。
現在では小型であることが必要不可欠な、芝刈り機や草刈り機、小型発電機など汎用エンジンとしてのみ製造されています。
2ストロークエンジンの仕組み
その仕組みは4ストロークとは違い、2つの工程(ピストンが1往復)で、1度の爆発をするというエンジンです。
4ストロークの場合は、4つの工程(ピストンが2往復)で一度の爆発ですから、その分大きな力を得ることができます。
簡単に構造を説明すると、2ストロークエンジンは上部のシリンダー室という「圧縮」「燃焼(爆発)」「排気」を行う部屋と、下部にクランク室という「吸気」のみを行う2つの部屋も持っています。
2ストロークエンジンの工程
それでは、2ストロークエンジンの工程を説明します。
最初の工程では、「吸気」と「圧縮」を同時に行います。
先ほどエンジン内の部屋が上下2つに分かれているという説明をしましたが、これが同時に2つの工程を行う革新的構造の秘密です。
まずピストンが上昇すると、上部シリンダー室では混合気が圧縮されます。それと同時に、下のクランク室では混合気の吸気が行われます。
次の工程では、「燃焼(爆発)」「排気」を同時に行います。
シリンダー内で圧縮された混合気にプラグから着火、燃焼(爆発)を起こします。
ピストンは下降を始めこれにより、燃焼を終えた混合気は排気されます。
この時同時に、クランク室にある未燃焼の混合気がシリンダー内へ送り込まれます。
この説明からも分かる通り、2ストロークエンジンは「排気」と共にクランク室から混合気を同時に吸入しているため、どうしても未燃焼の混合気を外に排気してしまうことになります。
これが原因で燃焼効率の悪さや、排ガス処理のしにくさ等の欠点を持っているのです。
逆にメリットとしては、エンジンが小型軽量で、高出力を得やすく構造が簡単といった事があげられます。