F1GPでは、予選の順位に合わせて多くのマシンが狭いスタート地点に並びます。
スタート時間になれば、この状態のまま全てのマシンが一斉に走り出す事になりますが、こんな時は、多くのマシンが我を争って次から次へと狭いコーナーへとなだれ込む「大混戦状態」となるのが普通です。
当然ながら事故や接触の起きる可能性も高く、このタイミングがF1レースの中でも一番危険な時間といわれています。
スタート時点のトラブルに備えるメディカルカー
といっても、ラリーのように順番に時間を開けてスタートしたのでは、F1レースの醍醐味が失われます。かといって、一台一台の車両感覚を開けるのにも限界があります。まあ、どうせスタートを切れば、一斉に狭いコーナーへとなだれ込むのですから、いくら車間を開けてもあんまり意味はありません。
そこで、取られている苦肉の安全対策が、「F1マシンの最後尾から医者を乗せたメディカルカーを追走させる」という方法です。この方法は、「未然に事故を減らす」ということよりも、「事故が起きた時、いかに早く怪我人を救助できるか」というポイントに重点が置かれた安全対策です。
マシンを追走する事で、迅速な救急活動を行う
F1GPの場合は、スタートの前にコースとマシンの確認を兼ねて、フォーメーションラップと呼ばれる試走が行われます(この段階ではまだメディカルカーはコース内にいません)。このフォーメションラップが終わると、それぞれのマシンは予選で獲得したスタートラインに付きますが、この時、ピットレーンの端に待機していたメディカルカーがコース内へと進入、スタートラインに並ぶF1マシンの最後尾につきます。
この後、スターティングフラッグが振られると、各マシンは一斉にスタートを切り、狭いコーナーへと我を争ってなだれ込みます。メディカルカーはマシン集団を追うかたちで少し遅れてスタート、安全な距離を保ってマシン集団を追走していきます。
このまま無事にスタートが終われば、メディカルカーはコースを一周したところで本来のピットレーン端に移動し、そのまま次の不測の事態に備えて待機します。
ただし、不幸にも事故や接触により怪我人が発生した場合は、メディカルカーはその現場に停車して怪我人の救助および治療にあたります。
メディカルカーにはスポーティな車が採用されていますが、それでもF1マシンに比べれば大したパワーはありません。治療やトラブルに対処しながらコースを周回していると先頭集団に追いつかれる可能性もあります。こんな時は近くの退避レーンからコース外へと脱出、コース外の道を使ってピットレーンへと戻ります。
事故の治療は、1分1秒を争う
このようにメディカルカーがマシン集団を後方から追走することで、万が一のトラブルによって怪我人が発生しても、迅速な治療が行えるようになりました。
F1の事故に限らず、怪我人の治療には何よりも迅速な対応が必要です。特にトラブルや事故の多いスタート時は、F1レーサーにとっても非常に神経を使う恐怖の時間帯です。こんな時に、後ろから医者を乗せたメディカルカーが追走してくれれば、いくらかでも安心感を持ってレースに挑むことができるのです。