車はたくさんのパーツを組合せて作られた精密な機械です。乱暴に扱えば消耗や劣化が進みやすく、逆に大切にすればそれに応じて寿命を伸ばせます。
一度あなたの周りにある車をじっくりと観察してみてください。乱暴に扱われることの多い営業車は痛みやすく、大事にされている自家用車はいつまでもピカピカで調子も良いはずです。
そんなパーツの中でも「ターボエンジン」は、普通の自然吸気エンジンと比べるとさらに構造が複雑で、受ける負荷も大きめ。昔に比べれば丈夫になりましたが、それでも停車してすぐにエンジンを切るとか、暖機運転をせずに走り出すなんてことを繰り返せば寿命が短くなります。
今回はそんな「ターボエンジン」について、どのように扱えばエンジンの寿命を伸ばすことができるのか詳しく解説していきます。
ターボエンジン搭載車の暖機運転
ターボエンジンはその構造上、高い負荷をエンジン内部に与え続けます。特に始動直後はエンジン内部に十分なオイルが循環していませんので、なるべく高い負荷を与えないように穏やかに走ってやる必要があるのです。
といっても昔のターボエンジンのように、5分から10分に渡って長々と暖機運転をする必要はありません。エンジンを始動したらメーター内部の警告表示を確認し、周りの安全を確かめるだけで十分な暖気運転が終わります。
安全確認が終わったら、アクセルを踏み込んで走り出しましょう。といっても、ここで急激に加速してはいけません。ゆっくりと加速しながら、10km/hから30km/h程度で徐行。周りの流れに乗ったら、それに合わせて穏やかに走ります。その後、水温計の張りが動き出せば、普段通りに加速しても構いません。
ミッションや足回りの暖機運転
暖機運転が必要なパーツには、エンジンだけでなく、トランスミッションや足回りも含まれます。
走り始めは急激なミッション操作や、ガタガタ道など衝撃の多い場所の走行は避けてください。どうしても大きな段差を通過しなければならない場合は、「微速前進でゆっくりと進む」などの配慮が必要です。
駐車場の出入り口に大きな段差がある場合は、「その場所を通過する時だけ同乗者に降りてもらう」といった工夫も大切です(もちろん、安全に乗り降りできる場合に限られますが)。
AT車の場合、信号で停車する度にシフトレバーを「D」から「N」、もしくは「P」に入れる人がいます。しかし、これではトランスミッションに無駄な負荷を与えてしまいます。信号で停車したらシフトレバーを「D」のままにしておき、フットブレーキを踏んでその場に留まってください。
じわじわと前進するクリープ減少を無理やりフットブレーキで抑え込んでいると、なんだかトランスミッションにダメージを与えているような気がします。しかし、実際は逆で、無駄なシフト操作をする方が遥かにトランスミッションに与えるダメージが大きいのです。
ターボエンジンを停止する時の注意点
ターボエンジン搭載車の場合は、エンジンを始動する時だけでなく、停止する時にも注意が必要です。
ターボエンジンで高速道路を延々と走り続けたり、長い坂道を登り続けたようなケースでは、エンジンも高い負荷にさらされ続け、内部のタービンが真っ赤に加熱されている事があります。
このような状況で急にエンジンを切れば、タービンは真っ赤に熱せられた状態のまま長時間に渡って放置されることになります。これでは、わざわざ「エンジンを壊してくれ」と言っているのと変わりません。
ターボエンジンで全開走行をした後は、急にエンジンを切るのではなく、しばらくエンジンを掛けっぱなしにしてターボエンジンをしっかりと冷却してやりましょう。時間としては、およそ1分もあれば十分です。
「エンジンを掛けたまま、1分も待つのは面倒だ」という人には、自動的にエンジンを設定した時間で停止する「ターボタイマー」が便利です。
一般的なターボタイマーにはリモコンが付いていて、寒い日に家の中から車のエンジンを始動して、暖機運転を行うと同時に車内を十分に温める(夏は逆にクーラーで冷やす)という機能も装備されます。エコの観点から考えるとちょっと微妙な機能ですが、車の快適性を高めるには大きな効果があります。