もし、その車が持つ絶対的なパワー(馬力)だけが、車をスポーティかどうか決める唯一の物差しだとすれば、380馬力を発生する「いすゞ Gカーゴ 25トン」のほうが、308馬力を発生する「スバル WRX STi」よりも断然スポーティな車だということになります。
しかし、これが正しくないという事は、車に詳しい人でなくてもなんとなく分かりますね。
停止状態からタイヤを鳴らして急加速していくWRXに対して、トラックの場合は、ノロノロと加速していくことしかできません。信号機からのゼロスタートでは、ちょっと元気な軽自動車にも置いていかれるほどです。
馬力と車重の関係
これには、車をスポーティかどうか決める要素「パワーウェイトレシオ」が深く関係しています。
パワーウェイトレシオとは、車の車重をパワーで割った数値のことです。例えば、「いすゞ Gカーゴ 25トン」の車重は10765kgですから、これを最高出力の380馬力で割ると、パワーウェイトレシオは、28.3kg/psとなります。つまり、「いすゞ Gカーゴ 25トン」の場合は、1馬力で28.3kgの重さを引っ張っているということです。
これに対して、「スバル WRX STi」の車重は、1490kgです。ここからパワーウェイトレシオを計算すると、なんと4.8kg/psとなり、1馬力で引っ張る重さはたった4.8kgとなるわけです。同じ馬力で引っ張る重さがこれだけ違えば、どちらがスポーティな動きをする車かは考えるまでもありませんね。
普通車として適切なパワーウェイトレシオは?
トヨタ ヴィッツの場合は、車重1010kgに対して、最高出力99ps/6000rpmですから、パワーウェイトレシオは、10.2kg/psとなります。普通の乗用車をごく普通に走らせようとすれば、この10kg/psあたりが目安となります。つまりこれくらいのパワーウェイトレシオが出ていれば、日常領域では十分なパワーがあるということが分かります。カタログ数値からその車の素性を推測する時に使ってみてください。
また、その車がスポーティかどうかを判断するには、パワーウェイトレシオに限って言うと、7kg/psあたりが目安となります。スバルBRZの車重は1250kgに対して、最高出力は207pd/7000rpmですから、パワーウェイトレシオは、おおよそ6kg/psくらいです。つまりパワーウェイトレシオ上からみれば、十分にスポーティな車だという事になります。
スポーティな車を決める要素は、パワーウェイトレシオだけではない
この他に、車をスポーティかどうか決める要素としては、軽快感があります。動きの素直さやダイレクト感、トルクの出方といった要素も重要です。
つまりスポーティな車とは、何も速い車の事だけを指す言葉ではないのです。マツダロードスターのように非力なエンジンを使い切って、キビキビと気持ちよく走る車も十分スポーティな車といえます。
逆に、いくら直線加速がすごくても、コーナーを曲がる時に思ったラインを走ることができなかったり、ステアリングの接地感が足りなかったり、気持ちの良いリズムの作ることができない車はとてもスポーティな車とは呼べません。まあ、このあたりはその人の趣味もありますので一概には言えませんが。