今回は「新型 三菱 デリカ D:2 ハイブリッドSZ ナビパッケージ(2代目)」を試乗レポート。
2015年にフルモデルチェンジした、コンパクトな5ドア・ハイトワゴンです。
スズキ自動車が製造するOEM供給車で、ベースとなる「スズキ・ソリオ」との違いはエンブレムなどの細かいパーツに限定されます。
発表当初は「マイルドハイブリッド」のみのラインナップでしたが、2017年のマイナーチェンジでパラレル方式を採用した「フルハイブリッド」が新たに加わっています。
外観
全長3710mmX全幅1625mmX全高1745mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2480mmとなります。
フロント
がっしりとした短いノーズにメッキ装飾されたグリル、大型ヘッドライトが組み合わされ、重厚感あふれるフロントフェイスを形づくっています。外観はソリオと全く同じなんですが、三菱マークがつくことで意外と三菱っぽい車にみえてしまうのが不思議です。
サイド
背の高いボディに短いノーズ、直線的に切り立ったリアエンドが相まって重厚感のあるサイドビューを構成しています。加えて、ショルダーライン(サイドウィンドウ下端)がリアエンドにかけて切り上がるように配置され、全体の印象をスポーティに引き締めています。
リア
リアエンドの高い位置にリアコンビランプが直線的に配置され、単調になりがちなリア周りに絶妙なアクセントを加えています。道具感あふれる端正なリアビューです。
内装
しっとりとした質感の樹脂に、カクカクとしたメカニカルなデザインが与えられています。といっても決しておもちゃっぽいということはありません。明快で質感の高い内装です。
メーターはダッシュボード中央に配置されるセンターメーターです。しっかりとしたフォントで速度が刻まれ、視認性も良好です。
四角いボディと高いアイポイントにより、ボディの取り回し、見切りともに問題はありません。
シート
四角い大きなフロントシートが装備されます。ややクッションが薄いのですが、しっかりとした硬さとコシが与えられ疲れにくいシートに仕上がっています。
リアシートのクッションはフロントよりもさらに薄く平板です。シートバックの高さも低めですが、中距離(30km)程度の使用なら問題ありません。足元、頭上には広大なスペースが確保されており、シートを限界まで下げればLクラスセダン並のゆとりが生まれます。
荷室
シートを限界まで後ろに下げると、荷室のスペースは最小限となります。この状態では手荷物程度しか置けません。しかしシートを前にスライドさせることで、荷室を拡大することができます。このモードであれば家族4人で2泊3日旅行程度の荷物なら十分に積むことができます。さらにここからシートバックを折り畳むと、ステーションワゴンなみの広大な荷室を作り出すことが可能です。
静粛性
マイルドハイブリッドモデルよりも静粛性が向上しています。ハイブリッドシステムを有効に活用してエンジン回転を抑えれば、さらにエンジン透過音は小さくなります。
エンジンとミッション
1242ccの直列4気筒DOHCエンジン+電気モーターに、5速ATが組み合わされます。
エンジンは、91ps/6000rpmの最高出力と、12.0kgf・m/4400rpmの最大トルクを発揮します。
また電気モーターは、14psの最高出力と、3.1kgf・mの最大トルクを発揮します。
車両重量990kg。JC08モード燃費は、32.0km/lとなります。
エンジン
1.2Lのツインカムエンジンと電気モーターによるフルハイブリッドシステムで前輪を駆動。既存のマイルドハイブリッドシステムに、走行用モーターとリチウムイオンバッテリーを加えたスズキ独自のフルハイブリッドシステムです。
走行用電気モーターによるトルクが加わり、出足から中速域まで力強い加速が可能です。坂道や合流ポイントでイライラさせられる事もありません。
トランスミッション
アルトに搭載されるロボタイズドMTに、電気モーターによるアシストを加えてスムーズな変速を実現しています。
「ロボタイズドMT」は「デュアルクラッチトランスミッション」と同じで、基本的にはマニュアルトランスミッションに近い構造をしています。ただし、クラッチが一つしかないので、デュアルクラッチのような連続的な変速ができず、どしても変速の間に空走感やギクシャク感が発生してしまいます。
しかし、今回のソリオやD:2はその変速の間に電気モーターによるアシストを加え、違和感の無いスムーズな変速を実現しています。ロボタイズドMTならではのダイレクト感もあり、完成度の高いATに仕上がっています。
足回りとハンドリング
前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはトーションビーム式サスペンションが装備されます。
足回り
フルハイブリッド化にともなって重量が増加していますが、重量物がボディの低いところに集まっているため、上屋がふらついて不安定になるような事はありません。
重量の増加によって適度な重厚感が加わり、従来モデル以上のしっとりとした乗り味を得ています。
ハンドリング
適度な重厚感のあるしっとりとしたステアリングフィール。重量物が車体の低い部分に集められているため、ロールが大きくなるようなこともありません。
逆に低重心化が進んで、マイルドハイブリッドモデル以上の安定したコーナリングが可能になっています。ドライバーの操舵に対して素直に反応する扱いやすい車です。
評価のまとめ
がっしりとしたスタイリングに広々とした室内。スズキ独自のハイブリッドシステムによる力強い走り。何よりも面白いのは、ギクシャクとなりがちなロボタイズドMTに、走行用モーターによるアシストを介入させたスムーズかつダイレクトな変速フィールです。
限られた資源を有効に活用して、誰も思いつかないような事をサラリとやってしまうのがスズキのスゴイところです。
「普段は通勤や通学に使い、週末は広い室内を活かして趣味やドライブに使う」といったシュチュエーションにピッタリな車です。また、広い室内と荷室、見切りの良い使い勝手の良いボディを活かして、子育て世代が子どもの送り迎えや買い物に使うのにも最適です。
ただし、フルハイブリッド化に伴って価格が20万円ほど上昇しています。その価格差を燃費で取り戻すには10年10万キロでは全く足りません。つまり、この車に「経済性」だけを求める人は、よりお安い価格のマイルドハイブリッド版のほうがオススメという事になります。
もちろん、フルハイブリッド化によって、走りは力強くなり乗り味も上質に変化しています。こういった部分に価値を見いだせる人は、上級モデルとして「フルハイブリッド版」を選んだ方がより高い満足感が得られます。
価格
価格 | 2,282,040円(消費税込み)