最近の高級車には、ドライバーごとにシートポジションを記憶する事のできる「シートメモリー機能」とか、「シートポジションメモリー機能」などと呼ばれる仕組みが組み込まれています。
これは、体型の異なるドライバーごとに「最適なシートポジション」を記憶して、「スイッチひとつでそのシートポジションに復帰させる」という便利な機能です。
しかし、一般大衆車やコンパクトカー、古いクルマにはこのような便利な機能はありません。そのため家族で一台のクルマを共有している場合、ドライバーが変わる度に手動でシートポジションを調整する事になります。中にはポジション調整が面倒だからという理由で、身体の小さい人に合わせたシートポジションのまま運転する人もいます。しかし、これでは万が一の時、正確な操作や出来ず大きな事故やトラブルの原因となってしまいます。
ドライビングポジションを見れば、その人の運転着用が分かる
クルマの運転が上手な人の場合は、例外なく自分の体型にピッタリと合ったドライビングポジションを取っています。逆にいえば巧みにうんちくを語る「自称ベテランドライバー」がいたとしても、そのドライビングポジションを見る事だけで、その運転が下手か上手かすぐに分かってしまうという事になります。シートをふんぞり返るほど極端に倒して、片手でステアリングを操作しているような人に運転の上手な人はいないのです。
正しいドライビングポジションが取られていれば、ステアリングやブレーキ、アクセル等、どのようにクルマを操作してもしっかりと身体はシートバックに固定されています。
このようなシートポジションであれば、常にドライバーの身体はシートにしっかりとはまり込んでいますから、クルマの小さな挙動や振動、前輪や後輪の荷重移動といった情報を正確に得ることができます。
日常のドライブから高度なスポーツドライビングまで、完全にクルマの動きを制御するためには、こういった正確な情報がとても大切です。
間違ったドライビングポジション「クルマの先端を覗き込むような姿勢」
シートポジションのおかしい人の中には、シートを限界まで前に出して、ノーズの先端を覗き込むように顔を突き出して運転している人がいます。こういった人は、自動車の先端に大きな死角がある事が不安でしょうがないのかもしれません。しかし、50km/h以上で走るクルマのわずか数十センチ先が見えたところで、クルマの運行には何の益もありません。
かえって不安定なドライビングポジションで運転する事によって、咄嗟の場合に正確な操作が出来なくなります。正面から他のクルマや壁に衝突した場合は、シートベルトやエアバックが充分に働かず、大きなケガを負ってしまう可能性も高いです。
また、シートバックにしっかりと身体が密着していないため、クルマの挙動から正確な情報を読み取ることも出来ません。
間違ったドライビングポジション「シートバックを極端に倒してレーサー気分」
間違ったドライビングポジションには、その他にシートバックを極端に倒しこんで、のけぞるような姿勢で運転する人もいます。こういったドライビングポジションを好む人は、なぜか「車好き」とか「ベテランドライバー」といった事を自称する人が多いです。
確かに、極端にシートバックを倒して運転していると、スポーツカーを運転しているような低い目線になり(実際のレーシングカーはしっかりとシートバックが立っていますが)、ちょっとしたレーサー気分が味わう事ができます。
しかしこのようなドライビングポジションでは、咄嗟の場合、腕や足に充分な余裕が無いため正確でスムーズな操作ができません。万が一他のクルマとぶつかった場合は、シートからお尻が滑り出してエアバックやシートベルトの恩恵を充分に受ける事もできません。
また死角も多くなるため充分な安全確認ができなくなります。ちょっとしたレーサー気分を味わうために事故に遭っていたんでは、命がいくつあっても足りません。
ただしいドライビングポジションは、運転をスムーズかつ安全にして、さらに運転の疲労を軽減する効果もあります。上手な運転をするベテランドライバーから、免許を取り立ての初心者まで、一番に身に着けておきたい嗜みの一つといえます。