今回の旧型レポートは「3代目 いすゞ ジェミニ イルムシャー(1992年)」。
1990年にモデルチェンジしたコンパクトな4ドアセダンです。アメリカ市場では「いすゞ・スタイラス」として販売されていました。
この他に3ドアハッチバックと、2ドアクーペの「ジェミニ・クーペ」や「ピアッツァ」、ヤナセが販売していた「PAネロ」などがあります。
また、2ドアクーペのボディをほぼそのまま使って、GMブランドから「ジオ・ストーム」というモデルも販売されていました。
外観
全長4195mmX全幅1680mmX全高1390mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは1450mmとなります。
フロント
なだらかなボンネットフードと極端に倒れこんだフロントウィンドウ。逆スラントしたノーズ先端が組み合わされ、大人っぽいスポーティなフロントフェイスです。
サイド
極端に倒れ込んだAピラー(一番前の柱)、しっかりと立ち上がったCピラー(前から3番目の柱)が一体となって、ジェミニならではの特徴的なシルエットを構成しています。
見切りの悪いドライバーズシート、頭上空間にしっかりとした余裕のある後席は、このサイドビューを見ると因果関係が一目瞭然ですね。
リア
しっかりと立ち上がったリアウィンドウに、小さく切れ上がったヒップライン、左右に一体化されたリアコンビランプが相まって、欧州車的な趣味の良さを感じさせます。
内装
欧州車風のシンプルなインテリアデザイン。機能がしっかりと整理されているため、使い勝手も良好です。
ただ、目線に対してボンネットフードが高いため、ボディの見切りはいまいちです。
シート
スポーティな形状のセミバケットシートが装備されます。体圧が集中しがちですが、中距離(30km)程度の移動であれば問題はありません。
リアシートはさらにコシありません。そのため少し乗っているだけで腰が痛くなります。先代からボディサイズが拡大されたため、後席の居住スペースには広々とした余裕があります。特にCピラーがしっかりと切り立っているため、頭周りには適度な余裕があります。
荷室
コンパクトなボディにしっかりとした居住空間を確保しているため、相対的にトランクスペースは小ぶりです。といっても家族4人で2泊3日旅行程度なら充分にこなせます。
リアシートを畳むことで、後席をトランクスペースと繋ぐこともできます。
静粛性
ロードノイズ、風切り音ともに大きめで、上質感はいまひとつです。
エンジンとミッション
1588ccの直列4気筒DOHCエンジンに、5速MTが組み合わされます。
エンジンは、140ps/7200rpmの最高出力と、14.5kgf・m/5600rpmの最大トルクを発揮します。
車両重量1060kg。10モード/10・15モード燃費は、12.2km/lとなります。
エンジン
1.6Lエンジンで前輪を駆動します。かなり高回転型のエンジンですが、マニュアルでしっかりと回してやる事で、キビキビとした楽しい走りを楽しめます。
トランスミッション
シフトストロークの大きなマニュアル・トランスミッション。剛性感が高く、手応えもしっかりとしているため、スポーティな走りを阻害する事はありません。
足回りとハンドリング
前後ともにマクファーソン・ストラット式サスペンションが装備されます。
足回り
剛性感のある引き締まった足回り。若干ゴツゴツとした衝撃を車内に伝えますが、大きな違和感はありません。
ハンドリング
前輪駆動でありながら後輪駆動のような動きをする「ニシボリック・サスペンション」が装備されます。このセッティングは当時不評を買いましたが、日常域でゆったりと運転しているだけなら、ドライバーの意図に素直に追従する扱いやすいハンドリングです。
小回り性能も高く、路地裏など狭い場所でも、簡単に切り返すことができます。
評価のまとめ
GMの強い意向によりコストをぎりぎりまで押さえ込んだため、ライバル他車に対して際立つ魅力を失ってしまいました。バブル経済の崩壊と重なったこともあり、大した売上を記録することができず、ジェミニはこの代で実質的に消滅してしまいます(4代目ジェミニはホンダからのOEM)。
先代の2代目ジェミニは、欧州車的な趣味の良さと都会的センスを併せ持った魅力的なセダンでした。コストダウンが推し進められたとはいえ、この3代目ジェミニにもその伝統はしっかりと受け継がれています。
質感がいくらか落ちたとはいえ、後輪駆動を模した「ニシボリック・サスペンション」には、市街地をゆるゆると走るだけなら充分な楽しさがあります。
高回転型エンジンをマニュアルトランスミッションでしっかりと回せば、ジェミニならではの楽しい世界観を味わうことができます。
価格
新車当時の価格 | 1,590,000円