今回の旧型レポートは「初代 トヨタ ヴィッツ F(2000年)」です。
このトヨタ・ヴィッツは、1999年にデビューしたコンパクトな5ドアハッチバックです。
欧州市場を中心に世界展開される目的で設計され、ボディや足回りにはしっかりとした作り込みが行われています。
外観
全長3610mmX全幅1660mmX全高1500mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2370mmとなります。
ギリシャ人デザイナーにより、存在感溢れる魅力的なスタイリングが与えられています。
フロント
ワンモーションフォルムの現代的スタイリングに、大きな涙型のヘッドライトが組み合わされ、独特の存在感を感じさせます。小さなグリルにヴィッツのオリジナルエンブレムが装備されます。
サイド
ボディの四隅ぎりぎりまでタイヤを追いやる事で、室内スペースを最大限に拡大しています。四隅に踏ん張るタイヤは、このヴィッツに力強い存在感を与えています。
フロントからリアに向けてなだらかにキャラクターラインが立ち上がり、ずんぐりした外観をスポーティにまとめています。
リア
リアバンパーとリアコンビランプはU字型に一体化しており、力強い立体感を表現しています。
内装
未来の宇宙服のようなカッコイイデザインのインテリアです。大きな弧を描くラインが有効に使われ、小物入れやグローブボックスの「合せ目」としても機能しています。
宇宙服のヘルメット部分にはセンターメーターが設置され、少しドライバー側に首を傾けるようにしてレイアウトされています。なんだか見つめられているような気がして少し気になります。
シート
フロントシートは小ぶりながら重厚感のある座り心地です。体圧が極端に腰に集中してくるので、長時間乗っていると腰と首が疲れてきます。中距離(30km)用途では問題ありません。
リアシートは、平板なデザインで、シートバックの高さも足りません。フロント同様、中距離用途の使い方がオススメです。ホイールベースがたっぷりと取られているため、意外に室内空間には適度な容量が確保されています。
荷室
室内空間に最大限の容量が割り振られているため、荷室容量は必要最小限です。家族4人で1泊旅行くらいならなんとかなるでしょう。
静粛性
コンパクトカーとしては標準的な静粛性を持ちます。きつい上り坂ではエンジンが苦しそうな唸り声を上げます。
エンジンとミッション
997ccの直列4気筒DOHCエンジンに、4速ATが組み合わされます。
エンジンは、70ps/6000rpmの最高出力と、9.7kgf・m/4000rpmの最大トルクを発揮します。
車両重量は840kg。10モード/10・15モード燃費は、19.6km/lとなります。
エンジン
このヴィッツのために新開発された1.0Lエンジンが搭載されます。街中など市街地モードでは十分なパワーを持ちますが、ATと組み合わせるには少し低速トルクが足りません。坂道や合流では力不足を感じます。
トランスミッション
トランスミッションの選定においては最新型のCVTも検討されましたが、コストと燃費性能のバランスを考え、オーソドックスなトルクコンバーター式トランスミッションが搭載されています。
オートマチックと組み合わさせるには、少しエンジンパワーが小さく、坂道では苦しそうな唸り声を上げます。
これに対してマニュアルトランスミッション版のヴィッツは、エンジン回転をしっかりと上まで使い切り、キビキビとした軽快な走りを楽しむことができます。
足回りとハンドリング
前輪にストラット式サスペンション、後輪にはトーションビーム式サスペンションが装備されます。
足回り
足回りがしっかりとしているため、高速走行では欧州コンパクトカー並の高い安定性をみせます。
ハンドリング
軽量高剛性のボディにスポーティなサスが組み合わされ、キビキビとした気持ちの良いハンドリングです。微小舵領域から正確に舵が効き始めるため、ノーズは自然に向きを変え始めます。
評価のまとめ
しっかりとした作り込みが行われ、欧州車のライバルと較べても遜色のないバランスの取れた車です。
加えて、日本車ならではの耐久性や燃費性能の良さもあり、このクラスではトップクラスの完成度を誇ります。
それまでの日本のコンパクトカーや大衆車は、フワフワとした乗り心地重視の頼り無い足回りが大半でした。このヴィッツに初めて乗った時、重厚感溢れる乗り味に「これがコンパクトカーか?」と驚いたことを思い出します。
価格
新車当時の価格 | 1,055,000円