僕が若い頃(20年以上前)は、「新車を買ったらしばらく慣らし運転をする」というのが常識でした。しかし、最近の自動車は耐久性が向上しているため、普通に運転している限り特別な「慣らし運転」は必要ありません。
ただし、「自分の愛車をなるべく長く調子の良い状態で乗り続けたい」と考えている人は、ある程度の慣らし運転をしておいた方が良いでしょう。
そんな車を購入したばかりの人に向け、今回は「新車の寿命を延ばすための慣らし運転」について解説します。
新車の寿命を延ばすには「エンジン回転を低く抑える」
慣らし運転で一番大切な要素は、「急ハンドル」や「急ブレーキ」、「急加速」など、とくかく「急」の付く運転をしない事です。
こういった運転を防ぐには「エンジン回転を上げない」という事が大切。目安としては「エンジン回転をレッドゾーンの半分程度までに抑える」と覚えておいてください。
例えば、レッドゾーンが6000〜8000回転の場合。クルマを新車で降ろしてから走行距離が1000kmまでは、エンジン回転を3000回転以下に抑えて走ります。
その後は、走行距離が1000km増えるごとにエンジン回転も1000回転ずつ上げていき、走行距離が5000kmになるまで続けてください。
しかし、最近は「タコメーター(エンジン回転計)」の付いていない車も多いです。そんな車の場合は、「走行距離が5000kmになるまでは、なるべくゆっくりと加速する」という意識を持つだけで十分でしょう。
タイヤの状態を目安に「慣らし運転」をする
慣らし運転の目安としては「エンジン回転を参考にする」という方法の他に、「タイヤの状態を目安にする」という方法もあります。
新品のタイヤをよく見ると、表面に小さなポッチが付いています。これは、工場でタイヤの金型に溶けたゴムを流し込んだ時にできるのですが、1000km程度走ることで自然に消えてしまいます。
そこで、このタイヤ表面のポッチが消えるまでを目安として、「急ハンドル」や「急発進」、「急加速」、「急ブレーキ」などの「急」の付く運転を控えるのです。
こうすれば、タイヤの状態に合わせた最適な「慣らし運転」が行えます。
ブレーキの「慣らし運転」は、じわっと丁寧に
新車のブレーキパッドおよびブレーキディスクは、接触面に十分なアタリが付いていないため、そのままではブレーキ本来の性能を十分に発揮できません。
その状態で急ブレーキを繰り返せば、ブレーキの寿命を短くしてしまう可能性もあります。
慣らし運転の間はブレーキパッドに十分なアタリが付くよう、優しく丁寧なブレーキ操作を心がけましょう。
ATの寿命を延ばす「慣らし運転」
最近のトランスミッションは耐久性が向上しているため、普通に操作している限りそうそう壊すことはありません。
ただし、無理な力を掛け続けることは厳禁です。トランスミッションは一度壊れると修理に大きなお金が掛かるため、新車の時から優しく扱うクセを付けておきましょう。
特に「P」から「D」、「D」から「R」、その逆の「R」から「D」など、トランスミッションへ大きな力が掛かる操作は慎重に行います。
例えば、シフトを「D」から「R」へと切り替える時、「R」ポジションへシフトを入れてすぐにアクセルを踏み込む人がいます。これでは、トランスミッションが完全に切り替わっていない状態で、過大な力を掛ける事になり、トランスミッションの寿命を縮めたり故障の原因を作ることにもなります。
シフトの切り替えは、ゆったりと一呼吸の間をおいて、完全にトランスミッションが切り替わってからアクセルをゆっくりと踏み込んでください。
ステアリングの寿命を延ばす「慣らし運転」
ステアリングの慣らし運転も、とにかく優しく操作するという基本は同じです。
ただし、車が完全に停止している状態でステアリングを操作すると、ステアリング機構やタイヤに無駄なダメージを与えてしまいます。俗に言う「据え切り」という操作方法です。
特に狭い駐車場では前後スペースに余裕が無いため、車を動かさずにすむ「据え切り」を使う人が多いです。こういった場所では、前後に僅かずつでも構いません。なるべく車を動かしながらステアリングを操作してください。
凸凹した道を走らない
サスペンションやダンパーなどの足回りパーツにも「慣らし運転」が必要です。
新車の内はサスやダンパーの動きが渋く、ゴツゴツとした衝撃を伝えがち。この状態で凸凹した道を激しく走れば、足回りにダメージを与えてしまいます。
「慣らし運転」の間はなるべく凸凹した道を避け、どうしても凸凹した道を走らないといけない場合は、速度を落としてゆっくりと通過しましょう。
特に「毎朝、駐車場の大きな段差を右タイヤで踏んで出勤している」という人は注意してください。同じ右側ばかりに大きな衝撃を与え続けると、足回りのバランスが崩れ、真っ直ぐ走れなくなったり、スムーズなコーナリングが難しくなることがあります。
こんな場所を通過する時は、とにかく速度を抑え、ジワッと徐行で進むしかありません。