山間の細い道を走っていると、「落石注意」という標識を見かけることがあります。
こんな時、多くの人は「今まさに上から落ちてこようとしている石に注意しろなんて無理だ!」と感じながらもビクビクと通過しているのではないでしょうか。
実はこの落石注意の標識、落ちてくる石に対して「注意しろ」といっているわけではなく、落石により路上に散らばっている石に対して注意喚起しているにすぎません。
当然ながら、これから落ちてくる石を予測しながら回避できるような芸当は、プロのF1ドライバーであっても不可能なのです。
前回「道路の欠陥が原因で事故が起きた場合、責任は誰に?【交通事故の相談】」の記事で、国や県、市町村などの「道路管理者」は道路を安全に維持管理する義務があるという事を説明しました。
そこで今回は、「落石注意」の標識によりドライバーに十分な注意喚起が行われているような場所で、「落石によって事故に遭った時、事故の責任は誰にあるのか」という事について解説したいと思います。
事故の責任は「道路管理者」にある
同じ注意喚起の標識でも、枝道から本線に入る前の「一旦停止」では、ドライバーが一旦停止して左右を確認することで十分な安全を確保することができます。
これに対して先程の「落石注意」では、いくら落石に注意しながら徐行していたとしても、いつ落ちてくるか分からない落石の危険を完全に取り除くことはできません。
そのため、万が一不意の落石により事故に遭った場合、その事故の責任はドライバーではなく、その道の「道路管理者」である国や県、市区町村などに負わされることになります。
つまり「道路管理者」は、その道で「落石注意」の標識を出すだけでは十分ではなく、石の落ちてきそうな岩壁をコンクリートで固めたり、頑丈なネットでカバーしたりといった保全対策を行う義務があるのです。
ドライバーに過失があれば、その分を損害賠償額から過失相殺される
ただし、岩壁をコンクリートで固めるといっても、相手は自然そのものです。雨や風化、地下水の影響などでどういった状態に変化するか全てを把握するのは事実上不可能と言わざるをえません。
そのため、「常識の範囲内で十分な安全対策が行われている」と客観的に裁判官が確認できれば過失を問われるというような事はありません。
また、「ドライバーが前方をよく見ていなかった」とか、「スピードを出しすぎていた」などの過失がある場合、その分を過失相殺されて損害倍書額から減額されることになります。