フィアット クーペフィアット(1998年式)【旧型試乗】美しく個性的なボディと荒々しい乗り味 [E-175A3]

今回は「フィアット クーペフィアット(1998年式)」を試乗レポートいたします。
このクーペフィアットは前輪駆動による2ドアスポーツクーペで、1994年にブランニューモデルとして発売されました。

ベースとなるプラットフォームには、当時のフィアット・ティーポと共通のものが使われています。

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外観

全長4250mmX全幅1765mmX全高1355mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2540mmとなります。

クーペフィアットのスタイリングは現代から見てもユニークで美しいものですが、この車が登場した当時は、それまでのカーデザインの文法に全くそぐわないそのスタイリングに、世界中の人々があっと言わされました。

日本においてもこのスタイリングの評価は高く、1995年にはグッドデザイン金賞が与えられ、三菱自動車からはこのスタイリングに大きな影響を受けた「三菱FTO」が登場したほどです。

フィアットにはデザインを専門に扱う部署が設置されており、当時、この「フィアット・デザインセンター」には世界中から有能なデザインが集まっていました。その中でも、このクーペフィアットをデザインしたのは、その後ドイツのBMWでも活躍する事になるアメリカ人のクリス・バングル氏です。

クーペフィアットのスタイリング選考の際、最終選考にはこのクリス・バングル氏の案と、ピニンファリーナによるデザイン案が残り、バングル氏の案で最終決着したという経緯があります。そのため、外観デザインはバングル氏の案となりましたが、内装デザインについてはピニンファリーナ案が使われています。

それまでの教科書的なスタイリング文法から見ると少々アンバランスな部分がありますが、そのアンバランスな部分をじっくりと時間をかけて調和させているため、かえって魅力あふれる非凡なスタイリングとなっています。

フロント

大きく盛り上がった風防に覆われたヘッドライトは、出目金のようなユーモラスさがあります。フロントグリルからフェンダーにかけて、えぐられるように切り上がるキャラクターラインがこのフィアットクーペを大きく特徴付けています。

フロントノーズが長く、ヘッドライトが大きいために少々頭でっかちな院長ですが、小さく見えるキャビンが与えられることでスポーティに引き締まって見えます。このアンバランスなデザイン手法は、現在のアルファロメオ「ジュリエッタ」や「ミト」にも使われる手法です。

サイド

フロントノーズからフェンダーにかけて切り上がるキャラクターラインは、リアフェンダーでも反復され、リズミカルな面白さを作り出しています。

フロントオーバーハングが長すぎると全体のプロポーションが崩れるものなのですが、フィアットクーペでは小さなキャビンをぐっと後ろにレイアウトし、リアのオーバーハングを大きく切り詰める事で大胆なバランスを成立させています。

リア

リアエンドは、フロントから流れるように続くラインを、トランク後端でバッサリと裁ち落としたようなスタイリングです。これまで、フロントで施されていたキャラクターラインやフェンダー処理は、すべてこのリアエンドの為に用意されていたかのように、すべての辻褄がこのリアエンドの処理で絶妙に収束しています。

そのため、リアコンビランプに凝ったデザイン処理は必要なくなり、クラシックな丸型レンズを4つ並べるだけで十分に美しいデザインを実現しています。

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内装

内装デザインはピニンファリーナによるデザインが施されています。

外板色を内部に取り込んだ、ちょっとクラシカルな印象のデザイン手法が取られてています。それに対して樹脂パーツはモダンに仕上げられているため、その対比が面白い効果を生んでいます。

シート

フロントシートには乗用車的なサイズと厚みのたっぷりとしたシートが装備されます。クッションには適度なたわみと硬さが与えられているため、長距離移動も快適です。

リアシートには、そのスタイリッシュな外観から想像する狭苦しい印象はなく、適度なサイズが確保されています。クッションにも適度な硬さがあり、中距離(30km程度)の移動なら可能です。ただし、頭回りと膝回りに圧迫感があるため、長距離移動は厳しいでしょう。

荷室

しっかりとしたトランクルームを持つため、2人で1泊旅行程度なら余裕でこなす事ができます。

静粛性

静粛性というものとは無縁な車です。マイナーチェンジでエンジンが刷新されていますが、荒々しさは変わりません。

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エンジンとミッション

1996ccの直列5気筒DOHCターボエンジンに、5速MTが組み合わされます。
エンジンは、220ps/5750rpmの最高出力と、31.0kgf・m/2500rpmの最大トルクを発揮します。

車両重量は1330kgとなります。

エンジン

このクーペフィアットには、当初、2リッターの4気筒DOHCターボが搭載されていました。これは、ランチア・カッパに搭載されていたエンジンと同じものですが、スポーツエンジンとしては少々がさつでスムーズさに欠けていました。

そこで、フィアットは5気筒DOHCターボエンジンを搭載してフィールの改善を行い、スポーツエンジンらいしい上質で力強い走りを実現しています。ただし、依然としてドッカンターボの傾向は残ります。

トランスミッション

乗用車的なフィールを持つ、ストロークの長いマニュアル・トランスミッションです。マツダ・ロードスターに近いものをイメージしているとガッカリさせられます。

足回りとハンドリング

前輪にマクファーソンストラット式サスペンション、後輪にはトレーリングアーム式サスペンションが装備されます。

足回り

エンジンのフィールが向上したとはいうものの、前輪駆動に200馬力のパワーでは少々荷が重すぎるのも事実です。アクセルを乱暴に踏み込めば、タイヤは簡単にグリップを失います。コーナリングでは、シャーシー性能を超えないように慎重なアクセル操作が求められます。

兄弟車のアルファロメオGTVでは、さすがにこの足回りでは不安だと考え、サスペンションを中心に高価なパーツが使われています。GTVは当時440万円ですから、おそらく足回りだけで100万円近くのコスト差があるものと思われます。

ハンドリング

足回りはティーポをベースに固められているため、繊細さや走る喜びといったものは希薄です。大味でただなんとなく曲がって行くセッティングです。乱暴にアクセルを踏み込めば、トルクステアを発生することもあります。

評価のまとめ

クーペフィアットはスタイリッシュなボディに、強力な2Lターボエンジンを搭載した安直な成り立ちの車ですが、この車の魅力はそのスタイリングにあると言っても過言ではありません。

対象となるユーザー

そのため、大味なフィールを納得済みで、この先進的なスタイリングに一目惚れしてしまったという人なら、大きく後悔することはありません。普通の日本車のスタイリングは4年ほどで賞味期限を迎えますが、このクーペフィアットは「20年経た現代でも十分美しいスタイリングを持つ」という事実からもそれは明らかです。

価格

新車当時の価格 | 3,300,000円

ABOUTこの記事をかいた人

クルマ好きの40代男性。現在病気のため療養中です。

ブログは暇つぶし&リハビリ。週2で短時間のアルバイトをしていますが、普通の人のように毎日フルタイムで働くことはできません。

ブログの内容はあくまで秋ろーの個人的見解です。実際に車や商品、サービスを購入する際は、自分で試乗や調査をして確かめることをオススメします。

記事更新の時間は、大体、午後11時から12時頃にかけてを予定しています。

修正ばっかりしてると新記事の投稿ができないんで、新記事3に対して修正1くらいの割合でやってます(2019年6月〜)