自動車評論家や一部のレーシングドライバーが、「運転技術を磨けば安全性を高めることができる」という事で、積極的にドライビングスクールやセミナーを開いていますが、ドライビングテクニックだけに頼った安全性向上には限界があります。
もちろん、もしもの時のパニックブレーキやスリッピーな路面でのコーナリングなど、普段から学んでおくことには十分な意味があります。
ただ、世の中の多くのドライバーはこういった講習を受けたことのない人がほとんどです。また、この人たちすべてにスクールを受講させようと思えば、膨大な時間と費用がかかり現実的ではありません。
そこで注目を集めているのが、「自動ブレーキ」をはじめとする一連の「先進安全技術」です。
目次
- アクティブセイフティとパッシブセイフティ
- 自動車とスピード
- スピードと危険は隣り合わせ
- ドライバーの技能向上で安全性を高める?
- 先進安全技術の可能性
アクティブセイフティとパッシブセイフティ
自動車の安全技術を大まかに分類すると、「アクティブセイフティ」と「パッシブセイフティ」に分けることができます。
アクティブセイフティは「予防安全技術」のことで、「自動ブレーキ」や「トラクションコントロール」、「ABS」など事故を未然に防ぐために考えられた技術です。
対するパッシブセイフティは「受動安全技術」のことで、「エアバッグ」や「クラッシャブルボディ」、「シートベルト」など事故が起こった後に乗員を保護するための技術です。
自動車とスピード
この安全技術を語る上で、最も重要な要素のひとつが「スピード」です。スピードが遅ければ遅いほど乗員が助かる可能性は高まります。いくら最新技術を満載した自動車であっても、100km/hで強固なコンクリート壁に激突すれば、乗員が無傷で生還するということはありません。
ただ、だからといって無闇に制限速度を抑えて安全性を高めようという考えにも賛同し兼ねます。スピードは自動車を考える上での大きなリスクファクターであると同時に、自動車最大のメリットでもあるからです。自動車を最初に考えた人たちも、「馬車よりも早く目的地に着けたらどんなに便利だろう」と夢想しながら開発したに違いありません。
スピードと危険は隣り合わせ
もちろん、道幅が狭く、児童が毎日の登校に使っているような市街地では、制限速度を抑えるのはもちろんのこと、時間を設定した上での通行制限などが必要です。
また、自動車のスピードを上げれば上げるほど、事故にあった時の生還率がぐんぐん下がるのも事実です。そのため、自動車のスピードというメリットを生かした上で、安全性能を向上させていく必要があるのです。
ドライバーの技能向上で安全性を高める?
その中で有力な方法とされているのが、ドライバーの技術向上です。現状でもドライビングに興味のある人たちは自腹で費用を払い、レーサーや自動車評論家の主催するドライビングスクールや自動者教習所が主催する安全講習を受講しています。
ただ、社会全体の安全技術をこの方法で向上させようとすれば、膨大な時間と莫大な資金が必要になります。世界中に存在する何十億という自動車の安全性能を一気に向上させる方法としては現実性にかけます。
また、どんなにドライビングテクニックの優れている人であっても、人間である以上、その日の体調や精神状態により実現出来るテクニックにも大きな差が生じてしまいます。
先進安全技術の可能性
そこで最近目覚ましい技術進化とともに注目を集めているのが、「先進安全技術」と呼ばれる一連の安全技術です。この技術の進化には、カメラやセンサー、コンピューターの飛躍的な進歩が影響しています。
少し前では考えられなかったような高度で複雑な処理を、高速かつ正確に処理することができるようになっているのです。そのため、ベテランドライバーが判断するよりも上手な判断が行えるという場面も増えています。まだまだ発展登場の部分も大いにありますが、このまま進化していけば近い将来には「完全な自動運転」に到達する日も近いでしょう。
日本では政府の規制が強く中々開発が進んでいませんでしたが、東京オリンピックに合わせたロードマップが策定され、官民を挙げて一気に巻き返しを図ろうとしています。ただ、すでにグーグルやメルセデスベンツなど、この分野で先行する企業たちとは大きな差が生じているのも事実です。
日本政府は膨大な債務を抱えているため、無駄な出費には反対する人も多いのですが、こういった将来を担う可能性のある分野へは積極的に予算を投入してもらいたいものです。