車が沢山走っていてストップ&ゴーの多い市街地では、低速域で力の不足しがちな「オーバードライブ」を使うより、いっそ「オフ」にしたほうが走りやすく燃費にも良いです。
オーバードライブが「オフ」なら、アクセルを踏み込むだけですぐに必要なトルクが立ち上がりますし、その結果エンジン回転も低く抑えられます。つまり少ない燃料で走れるというわけです。
オーバードライブとは
オーバードライブは、3速ATなら3速、4速ATなら4速、5速ATなら5速とそのトランスミッションの一番高いギアに割り当てられてます。多くの場合、ATに装備されている「オーバードライブ」スイッチをオフにすることで一番高いギアがキャンセルされ、オーバードライブより一段下のギアから1速ギアまでを使って走るようにシフト設定が変更されます。5速ATの場合で言うと、「1速から4速の間でギアが自動変速されるようになる」ということですね。
シフトがオーバードライブに入ると駆動輪に伝達されるトルクが減る代わりに、高速巡航時のエンジン回転が低く抑えられます。その結果、「燃費が良くなる」とか「エンジンからのノイズやバイブレーションが減る」なんてメリットが得られます。
要は「高速巡航時に最適なギア」ということです。
「オーバードライブ」は市街地走行に不向き
5速ATのオーバードライブを「オン」にしたままストップ&ゴーの多い市街地を走る場合、アクセルを踏み込んで加速する時は4速や3速にシフトダウンされ、ある程度スピードが乗ってくると5速のオーバードライブにシフトアップされます。しかし、市街地で5速のまま長時間走行するような状況は滅多にありません。すぐに信号機や渋滞で減速、もしくは停止、さらにそこから再加速するため、ギアも5速から4速や3速、それ以下のギアへと頻繁にシフトチェンジを繰り返すのが普通です。
例えば、巡航から徐々に減速して再び加速しようとすると、ギアがオーバードライブに入ったままなんで、必要なトルクが得られず人によっては無駄にアクセルを踏み込んでしまいます。もちろん、こんな時はコンピュータが判断して適切なギアへシフトダウンしますが、無駄なアクセル操作やその後の急加速による余計な燃料消費によって燃費が悪化することは避けられません。
シフトの制御プログラムに合わせてジワッとアクセルを踏み込めば、それほど燃費が悪化することもありませんが、キビキビと走りたい人やせっかちな人には難しいでしょうね。
オーバードライブを「オフ」にして燃費を向上させる
そんな無駄すぎる燃料消費を抑えるには、始めからATのオーバードライブを「オフ」にしておくのが一番です。
オーバードライブが「オフ」になっていれば、中低速域から加速しようとアクセルを踏み込んでも、ATは常に低いギアにあるので瞬時に力強いトルクが得られます。
結果的に「無駄なアクセル操作が減って燃費が向上する(市街地走行時)」という寸法です。
オーバードライブを「オフ」にしてキビキビと走る
ATのオーバードライブを「オフ」にしておけば、燃費を向上させるだけでなく、キビキビとしたメリハリのある運転にも繋がります。
車や人、信号機や一旦停止の多い市街地では、「一定の速度で巡航する」ということはほとんど無くて、普通は頻繁に加減速を繰り返してます。こんな状況でオーバードライブが「オン」になっていると、アクセルを踏んでも加速するための十分なトルクがすぐには立ち上がりません。車はゆったり、もしくはノロノロと加速しますから、混雑している時は周りの車に多少の迷惑をかける時もあるでしょう。
こんな時は、ATのオーバードライブが「オン」にしてみましょう。これなら始めから「低目のギア」を使えるんで加速するための十分なトルクが瞬時に得られます。車はキビキビとメリハリのある走りとなり、周りの車に迷惑を掛けることも少なくなります。
「オーバードライブ」のスイッチが装備されていない場合は
ただ、最近はATに「オーバードライブ」のスイッチが装備されていないことも多いです。そんなATには、積極的に低いギアを選んで走る「スポーツモード」や、マニュアルトランスミッションのように自分で好きなギアを選んで走る「マニュアルモード」、および操作するための「パドルシフト」なんて装備が付いている事があります。要は低いギアを使って瞬時に加速できれば良いわけですから、キビキビと走りたい人はこんな装置を活用してください。操作方法に関しては、それぞれの車によって多少異なります。時間のある時にでも、愛車のマニュアルを引っ張り出してきて読むのが確実です。
ベテランドライバーの場合
ベテランドライバーの中には、「市街地でもオーバードライブを”オン”のままにしておき、アクセルを急激に踏み込むことで瞬時にシフトダウン、低いギアを使ってキビキビと走る」なんて走り方をする人がいます。その後、「目的の速度まで一気に加速したら、素早くアクセルをオフにしてオーバードライブに移行、巡航速度で燃費を稼ぐ」なんて合わせ技も使いこなします。
一見、シフト制御プログラムを巧みに活用したクレバーな走り方ですが、オーバードライブやマニュアルモードを積極的に活用するほどの燃費向上は見込めません。かえって必要以上の加減速を繰り返すことになりますので、安全上のリスクなんかも高まっちゃいます。「キビキビとしたメリハリのある運転」というよりは、「ちょっと乱暴な運転」といった方が近いんじゃあないでしょうか。