電気自動車自体は全く化石燃料を消費していませんので、排気ガスやCO2などの環境汚染を引き起こすことはありません。
しかし、電気自動車で使う電気をどうやって作っているかによっては、ガソリン自動車と同じように二酸化炭素や窒素酸化物などの汚染物質を排出することになります。
例えば効率の悪い古い火力発電を動かして大量に電気を発電すれば、ガソリン車以上に環境に悪影響を与えることになります。
逆に汚染物質をあまり吐き出さない原子力発電や、風力発電、太陽光発電などの比率が増えれば、環境に優しいクリーンな乗り物となります。
国によって発電方式のシェアが違う
この電気自動車のクリーン度を測る時に便利な指標が、国による電力発電方式のシェアです。
フランスは国内で使用される年間の電力のうち原子力発電の占める割合が突出して高く、カナダは水力発電の割合が多いという特徴があります。こういった国では、自然エネルギーの割合が高くなるためCO2の排出量も僅かですみます。
逆に発展途上国から先進国へと急成長している中国やインドは、古い火力発電の割合が非常に高くCO2の排出量も多いのが特徴です。
火力発電が多ければ電気自動車を増やしても意味がない
発電によるCO2排出量の多い国では、いくら電気自動車を増やしてもCO2や大気汚染を減らす事にはなりません。CO2を減らすには同時に火力発電の割合を減らし、クリーンな発電方式に置き換えていくことが必要です。
日本では発電方式の多様化が進んでいる
その点、日本では石油ショック以降より発電方式の多様化が進み、原子力発電や天然ガス発電などCO2排出量の少ない発電方式の割合が高いのが特徴です。そのため、このまま電気自動車の普及を進めてもある程度のCO2削減効果が見込めます。
ただ、日本全体の発電設備容量は約3億kWですが、すべてのガソリン車が電気自動車に置き換わった場合は足りません。電気自動車の普及と合わせてクリーンな発電方式の拡充も進める必要があります。
クリーンエネルギーへの繋ぎはPHEV
その繋ぎの技術として有望なのが、電気自動車とハイブリッドカーの合わせ技ともいうべきプラグインハイブリッドカー(PHEV)です。
仮にプラグインハイブリッドカーの発電容量が50kW、バッテリーの容量が10kWとすると、すべての車をPHEVに置き換えた場合、総発電容量が35億kW、蓄電量は7億kWに及びます。
これを現在の電気発電インフラと組み合わせた場合、自動車のエネルギーを賄うだけではなく、家庭用の電気として使うこともできます。
また、自宅で充電する際には風力発電や太陽光発電を併用して使えば、クリーンエネルギーの問題も解決できます。災害時は緊急用の電源として、各家庭のPHEVが重要なインフラとなるでしょう。
将来の発電インフラはこういった技術の組み合わせで、各家庭の発電システムと大規模発電所がAIによって大規模に結び付けられることになります。