アルミニウムは軽量
アルミニウムという素材は鉄と比べると軽量なため、自動車のパーツに軽量対策として採用される事があります。ただ、剛性が低いとか精度が出しにくい、コストが高いといった欠点があり、下手に使うと鉄よりも重くなってしまいます。例えば、アルミホイールを作る場合ですが、鉄と同じ強度を持たせようとするとアルミの肉厚を厚くしてやる必要があります。そのため、設計や工作技術が低い場合は、鉄のホイールと重さが変わらないといった事が起こるのです。
そこで、一般的なエンジンの場合はヘッドにアルミニウムを使い、シリンダーブロックに鋳鉄を使う事でこの長所と短所を上手に使い分けています。
そうはいっても、アルミニウムの軽量という長所は大きな魅力です。例えば、一般的な2000ccエンジンの鋳鉄部分を全部アルミ化すれば、車重全体を1割以上も軽量化することが可能です。
これは、ネジ1本に対して数ミリグラムの軽量化を積み重ねている自動車会社にとって、とてつもなく大きな数字です。
そのため世界中の自動車会社では、このエンジンのアルミニウム化という技術を必死になって研究し、最近になってやっと一般的な技術として普及させる事ができるようになった所なのです。
アルミニウムはリサイクルしやすい
アルミニウムのもう一つの長所は、熱に溶かして何度でも使えるため、リサイクルがやりやすいという点です。しかも、何度も溶かして固めるというリサイクルの工程を繰り返している内に、徐々に素材としての性能も向上してくるという夢のような特性を持っています。
アルミニウムの欠点
ただ、溶かして使いやすいという長所とは裏腹に、熱に弱く、精度が狂いやすいという欠点も併せ持ちます。少し前の性能の低いシリンダーヘッドでは、一度エンジンがオーバーヒートを起こすと、わざわざ治具で修正してやる必要がありました。
また、最新のエンジンでも高い強度と精度の必要な「クランクシャフト」には、依然としてアルミニウムを使うことはできません。その場合は、マグネシュウムやチタンという特殊な金属を使えば代替可能ですが、それではコストが大幅に跳ね上がってしまいます。
このように、アルミニウムは万能な素材ではありませんので、精度や強度、コストなどを総合的に考えて使う必要があるのです。
アルミニウムは昔からある素材ですが、長らく普及車のシリンダーブロックに素材として使われなかったのには、こういった事情があるのです。
その他に、アルミニウムがよく使われているエンジン以外のパーツは、トランスミッションとディファレンシャルのケース、アルミホイールなどです。ただ、トランスミッション内部のギアには、高い精度と強度が要求されるため、未だにアルミニウムは使われていません。
また、一部の高価なスポーツカーや高級車に限られますが、ボディ外板全体にアルミニウムを使うという車も登場しています。この場合、一度ぶつけると修復が難しく、修復のためには高額な費用がかかってしまうという欠点があります。