今回の【試乗評価】は、「新型 ジープ・ラングラー アンリミテッド サハラ(3代目・JK)」。
2007年にモデルチェンジした、本格的クロスカントリーSUV(5ドア)です。
「ジープ」と聞くと、誰でも一瞬で「形」を思い出せるほど有名な車です。その形は必要性から生まれた合理的スタイリングで、しかも個性的でカッコいいですから言うことありませんね。
1941年に登場した軍用車「ウィリスMB」がルーツで、米軍の決めた仕様書を元に、いくつかの会社が製造して納品するというスタイルを取ってました。
その後、第二次大戦が終わると「ウィリスオーバーランド社」が民生用モデルとして「ジープ」を製造するようになります。そこからさらに製造メーカーを転々として、1987年以降はクライスラー傘下のSUV部門として数々のSUVを製造しています。
「ラングラー」は、そんなクライスラー傘下の「ジープ」が製造するSUVの中でも、オリジナルジープ「ウィリスMB」の設計思想を色濃く残す直系の後継車種です。
ということで2007年に登場した今回の「ジープ・ラングラー」は、クライスラー傘下では「3代目」ですが、オリジナル「ジープ」から数えると「6代目」ということになります。ついこの前、生誕75周年モデルが登場してたんで、歴史としてもかなり長いもんがあります。
「新型 ジープ・ラングラー アンリミテッド サハラ(3代目・JK)」の概要
今回の「3代目ジープ・ラングラー」は、初代「ウィリスMB」の設計思想をそのまま受け継ぐキープコンセプトモデルです。頑丈なラダーフレーム構造に、パワフルな3.6リッターV型6気筒エンジン、新開発された5速ATを組み合わせました。本格派クロスカントリーモデルとして、とにかく抜群の悪路走破性と、その走りに耐えるだけの頑丈さを備えてます。
ボディデザインは、初代の特徴的なアイコンを活かしつつも、上手いこと現代的なアレンジを加えた感じです。ボディもひと回り大きくなって、使いやすさが向上しました。さらに今回のモデルから、ロングボディ・4ドア(5人乗り)仕様も追加。ショートボディと比べると、荷物や人が沢山積めるんで使い勝手が良いです。
「アンリミテッド サハラ」グレード
「アンリミテッド」は、そんなロングボディに付けられたサブネームです。ショートボディ・2ドア仕様も、そのまま基本モデルとして残ります。
その中でも「サハラ」は装備を充実させた豪華仕様で、その他にスタンダードな「スポーツ」もあります。
プラットフォームなど
プラットフォームは、頑丈なラダーフレーム構造に、前後、リジッドサスを組み合わせてます。本格的な悪路を走るための設計なんで、ちょっとやそっとのことじゃヘコタレません。
ライバルは
ジープは、個性あふれる唯一無二の存在ですから、ガチンコのライバルは存在しません。
値段とか、5ドア、SUVなんてキーワードで絞り込めば、「プジョー・3008」とか「シトロエン・AIRCROSS SUV」、「VW・ティグアン」なんかも入ってきますが、キャラクターが全く違います。
マイナーチェンジ情報
2012年にマイナーチェンジ。新開発された「3.6リッターV6エンジン」に、同じく新開発の「5速AT」を組み合わせました。前のエンジンからは200ccほど小さくなってますが、逆に最高出力(+40%)や最大トルク(+10%)は向上してます。
外観
ボディサイズ、全長4705mmX全幅1880mmX全高1845mm。ホイールベース、2945mm。
フロント
ウィリスMBの雰囲気を受け継ぐ無骨なフロントグリルに、シンプルな丸目ヘッドライト。力強く拡がるワイドフェンダー。誰が見てもひと目で「ジープ」だと分かる個性的なデザインです。
サイド
直線を基調にデザインされた箱型ボディ。ダイナミックなワイドフェンダーに、18インチ大径タイヤ。4ドア化するためホイールベースと全長が拡大され、無骨さの中にも伸びやかな印象があります。
まさに軍用車両といった雰囲気ですが、現在のジープ・ラングラーは一般車両としてのみ販売され、軍用としての納入実績はありません。
リア
巨大な四角いリアエンドに、フルサイズのスペアタイヤをそのまま装備。シンプルな角型リアコンビランプと相まって、質実剛健、力強い後ろ姿を構成しています。
内装
重厚感のある樹脂素材に、メタリック調フィニッシャー。シンプルにデザインされた、アウトドアテイストあふれる室内です。
メーターナセルには、シルバーリングで縁取られた4眼メーター。クッキリとしたフォントで視認性は良好。
センターコンソール最上段には、ナビゲーションなどを表示するワイドディスプレイを装備。中段には、丸型のエアコン吹出口。フルオートエアコンは、手探りの操作もやりやすいダイヤル式です。
四角いボディとアップライト(目線が高い)な「コマンドポジション」によって、視認性は良好。ボディが大きく最小回転半径(7.1m)も巨大なため、運転がしやすいとは言えませんが、ボディの見切り自体はまずまずです。
シート
フロントシートは、ストロークのたっぷりとしたクッションにしなやかな表皮が組み合わされ、重厚感のある座り心地。ラフロードからの衝撃もしっかりと吸収します。
リアシートは、やや平板な作りでクッションも薄め。座面の前後長が短く、体を支えにくいです。ただし、足元、頭上空間は十分で、大人二人で座っても窮屈感はありません。
荷室
ロングボディの採用によって荷室スペースも拡大。室内がスクウェア(四角い)な事もあって、かなりの荷物が積めます。家族4人なら、荷物のかさばるキャンプ遊びからバーベキューまで自由に楽しめます。
静粛性
角ばったボディによって、風切り音は大きめ。ただし、高められたボディ剛性と静粛性を増した新開発エンジンが組み合わされ、総合的な静粛性は高いです。
エンジンとトランスミッション
3604cc・ V型6気筒DOHCエンジンに、5速ATが組み合わされます。
エンジンは、最高出力284ps/6350rpm、最大トルク35.4kgf・m/4300rpmを発揮。
JC08モード燃費は、7.5km/l。車両重量、2040kg。
エンジン
3.6リッターのV6エンジンで4輪を駆動(フルタイム4WD)。低速からフラットなトルクを発生する力強いエンジン。2t強のボディをスムーズに加速させます。車重が重いため、鋭い加速感はありません。
SUV用のエンジンとしては意外に高回転型で、4000回転以上まで気持ちよく吹け上がります。といってもシルキー6やVTECのような「すべらかさ」は無く、クロスカントリーSUVにふさわしい荒々しさを伴います。
巡航時にはエンジン回転を高めにくく、結果的に室内は静かです。
トランスミッション
新開発されたトルコン式の5速AT(マニュアルモード付き)によって、動力性能が大幅に向上。エンジンの美味しいところを引き出して、必要十分以上のパワーを絞り出します。スムーズで賢いトランスミッションです。
乗り心地とハンドリング
前後輪ともに、コイルリジッド式サスペンションを装備。
乗り心地
装着タイヤは、255/70R18。
クロスカントリーSUVとしては、意外と乗り心地も快適。といっても独立懸架サスペンションを持つ「チェロキー」のような乗用車的乗り味ではありません。
大型SUV独特のユサユサとした揺すられ感を伴う、大らかでゆったりとした乗り味です。オンロードよりもオフロードでこそ、本当の真価を発揮します。
ロングホイールベースに、ストロークのたっぷりとしたサスが組み合わされ、高速域での安定性も上々。4つのタイヤが巧みに上下してボディをフラットに維持します。轍やうねりのある路面でもステアリングを取られにくいです。
ハンドリング
重厚感あふれるゆったりとしたハンドリング。ラフロードでの取り回しを重視して、ステアリングの反応は鈍いです。
最小回転半径は、7.1m。狭い路地では何度も切り返す事になります。日本の狭い林道やラフロードに持ち込むなら、ジムニーのようなコンパクトSUVが最適です。
その他
頑丈なラダーフレーム構造や、スタビリティコントロールなどが採用され、基本的な安全性能は高い。ただし、今流行りの「先進安全技術」の類は装備されません。
【試乗評価】のまとめ
「新型 ジープ・ラングラー アンリミテッド サハラ(3代目)」は、伝説の名車「ウィリスMB」の系譜を受け継ぐ、本格的なクロスカントリーSUV。
3代目へのモデルチェンジに伴って、ボディサイズを一回り拡大。加えてロングボディ・4ドアモデル「アンリミテッド」もラインナップに加わります。
パワフルな3.6リッターエンジンによって、2t以上にもなる重量級ボディをスムーズに加速させます。オフロードを中心に設計されているため、ハンドリングは鈍くゆったりとしたフィール。乗り味も大型SUVに多い、ユサユサとした揺れをともなう大らかなモノです。
快適性が向上したといっても、そのオフロードに特化した乗り味には独特のクセがあります。ボディも大きく取り回しもしにくい。日本の狭い路地では常に気を使って運転する事になります。
「四角いボディが気に入った」とか、「おしゃれに乗りこなしたら格好いいかも」といった気楽な気持ちで購入すると後で後悔するでしょう。それでも「このクルマが以外に次の愛車は無い」というほど気に入ってしまった場合は、一度ディーラーで試乗してください。それでも買う気持ちがブレないなら、ラングラーはあなたのためのクルマです。
「趣味や仕事でオフロードにガンガン入っていく機会が多い」、しかも「荷物や人をたくさん積む」なんて人にはこれ以上無い最適のクルマとなります。
中古車市場では
2017年式「ジープ・ラングラー アンリミテッド サハラ(3代目)」で300万円台後半。2014年式で300万円台前半(2018年6月現在)。
新車価格
4,276,800円(税込み)