今回の【試乗評価】は「新型 メルセデスベンツ CLAクラス CLA180」。
2013年に登場した、Mクラスの4ドアクーペ(ハードトップ・セダン)です。この他に「シューティングブレイク」と呼ばれるステーションワゴン(5ドア)もあります。
メルセデスベンツのモデル名には、「A」がAクラスベース、「CL」で4ドアクーペを表すというルールがあるんで、「CLA」だと「Aクラスをベースにした4ドアクーペ」という意味になります。
上級モデルの「CLS」はCクラスをベースにした4ドアクーペ。なもんで、「CLA」にとってはひとクラス上の兄貴分ということになります(ネーミングルールに則るなら、本来は「CLC」とすべきですが)。「CLS」で「4ドアクーペ」という金脈を発掘したメルセデスベンツとしては、「二匹目のドジョウでもうひと稼ぎ」といったところです。
「4ドアクーペ」というジャンルは、見ようによっては「どっちつかずで中途半端」な感じもしますが、セダンの実用性とクーペの美しさ、どっちも手に入れたいという欲張りな人には唯一無二の貴重な選択肢となります。こんなところも、人気の理由でしょう。
「新型 メルセデスベンツ CLAクラス CLA180」の概要
ボディサイズは、Aクラスを基本に全長を35mm拡大して全高を抑えた感じになってます。上級モデルのCクラスセダンと比較すると、全長が45mm短くて、全幅は30mm狭い。逆に全高は5mm高めなんですが、クーペライクなスタイリングのせいで実際よりも低く見えます。ローアンドワイドで、カッコいいスタイリングを表現しています。メルセデスベンツらしい上質感もあるんで、車に明るくない人ならどちらが上級モデルか見分けられないかもしれません。
FF車のAクラスをベースにすることで、車格の割に安い価格とダイナミックなスタイリングを実現。ということで、今までメルセデスベンツが取りこぼしていた、「Aクラスだど小さすぎるけど、Cクラスまでいくと高すぎて手が出ない」なんて若者層がメインターゲットになります。Cクラスを乗り継いできた中間層にも、「ダウンサイジングモデル」としてアピールできそうです。AクラスとCクラスの間にあって、「Aクラスほどカジュアルじゃないけど、Cクラスほど落ち着いているわけでもない」といった感じで絶妙にバランスが取れてます。
試乗車は「ベースグレード」ですが、現在はカタログから落とされ、「CLA 180 AMG Style」というグレードに置き換わってます(つまり、現在はこっちが事実上のベースグレード)。
プラットフォームなど
車の基本となるプラットフォーム(車台)には、AクラスとかBクラスにも使われるエンジン横置き前輪駆動(FF)用の「NFAプラットフォーム」を使ってます。成り立ちとしては、コンパクトなAクラスをベースに全長を伸ばして、美しい4ドアクーペボディを載せた感じです。
これに「1.6リッター・ダウンサイジングターボ」と、デュアルクラッチを使った「7速DCT」が組み合わされてます。
ライバルは
車格としてはDセグメントの「プラミアムコンパクト」になりますが、「CLA」はスタイリングを重視した「4ドアクーペ」なんで、そういった意味でのライバルはいません。
単純に「プレミアムコンパクト」と捉えれば、「BMW・1シリーズ」や「アウディ・A3セダン」あたりがライバルになります。
マイナーチェンジ情報
2016年にマイナーチェンジ。フロントバンパーやリアバンパー、リアコンビランプ形状が見直され、ヘッドライトには状況に応じて配光モードを切り替える「LEDパフォーマンスヘッドライト」が装備されました。内装関係ではセンターディスプレイの大型化(8インチ)や、メーターまわりの一部デザイン変更も実施。使い勝手が良くなってます。
「CLA180」グレードには新しいダンパーが採用され、前期モデルに比べると快適な乗り心地です。
2017年。ベースグレード「CLA180」は廃止され、その代わり「AMGスタイリングパッケージ」を標準装備した「CLA180 AMG Style」というグレードが追加されてます。
外観
ボディサイズ、全長4645mmX全幅1780mmX全高1440mm。ホイールベース、2700mm。
フロント
低く身構えたフロントノーズに、ダイナミックなスポーツグリル。複雑な曲線で構成されたLEDヘッドライトを装備。
フロント周りはメルセデスベンツらしい力強いスタイリング。Aクラスに近いイメージが与えられながらも、よりスポーティでエレガントなディティールが施されています。
サイド
ロングホイールベースに前後に長いキャビンを組み合わせた、伸びやかなサイドビュー。低いルーフと尻下がりのリアエンドによって、エレガントなクーペルックを構成しています。
キャラクターラインは、Aクラスのイメージによく似た軽やかな造形。2つのラインが折り重なって、エレガントな雰囲気を際立たせます。
リア
かつての「日産レパードJフェリー」のような尻下がりの上品なスタイリング。スポーティなAクラスに対して、CLAはエレガントな印象が強いです。
炎のように拡がるリアコンビランプと組み合わされ、CLAならではの強い個性も表現。多くの車であふれる大規模駐車場でも、見失うことはありません。
内装
Aクラスに準じるスポーティな内装。メタリックパーツや上質な本革ステアリング(レッドステッチ)も装備されます。
最近急激に質感を向上させたVWゴルフやアウディA3と比較すると、もうちょっとクオリティを上げて欲しいという気もしますが。このあたりはCクラスとの差別化もあるので難しいところです。
メーターナセルには、スポーティな二眼メーターとインフォメーションディスプレイを装備。インフォメーションディスプレイには、シフトポジションや走行距離といった基本情報のほかにレーダーセーフティパッケージの作動情報も表示されます。
センターコンソール最上段には、マイナーチェンジによって拡大された8インチワイドディスプレイを設置。その下には大きなエアコン吹き出し口が3つ。離れた後席にも快適な空気を届けます。エアコンは手探りの操作もやりやすいダイヤル式。
シート
フロントシートは、がっしりとしたフレームにコシのある上質なクッション、しなやかな表皮を組み合わせた快適な構造。やわらかなタッチを伴って、少し身体が沈んだところでしっかりと身体を支えます。体圧がキレイに分散されるため、長時間ドライブも苦になりません。
リアシートもフロントに準ずる快適なシート。前後長のある座面に高さのある背もたれが組み合わされ、ホールド感は十分。なだらかなルーフ形状によって、やや頭上に窮屈感がありますが、ルーフに頭がつくことはありません。
静粛性
プレミアムセダンとしてはややエンジンノイズが気になりますが、コンパクトカーとしては充分以上。
荷室
Aクラスよりもボディの前後長が長いため、その分、荷室スペースにも余裕があります。
特徴的なリアコンビランプ形状によって開口部はやや窮屈ですが、容量自体は大きく家族4人であれば2泊3日旅行も可能。後席の背もたれを倒すことで、さらに容量を拡大できます。
リアバンパーの下に足先を入れるだけで、自動的にテールゲートを開閉。荷物で両手が塞がっている時に便利です。
エンジンとミッション
1595cc・直列4気筒DOHCターボエンジンに、7速DCTが組み合わされます。
エンジンは、最高出力122ps/5000rpm、最大トルク20.4kgf・m/1250-4000rpmを発揮。
JC08モード燃費、17.4km/l。車両重量、1470kg。
エンジン
1.6Lのツインカムターボで前輪を駆動(FF)。やや出足にいもっさりとした印象があるものの、低速からフラットなトルクを発生する扱いやすいエンジン。日常域では充分なパワーがあります。
選んだモードに応じて「エンジン」「トランスミッション」「ステアリング」「サスペンション」の特性を変化させる「ダイナミックセレクト」を装備。
「Eco」モードでは燃費を重視したセッティングとなるため、ちょっと物足りませんが、「Sport」を選択すると1.5t弱のボディを物ともせずにグイグイと加速。スポーティな走りを楽しむ事ができます。
プレミアムセダンとしては、ややエンジン音に上質さがたりませんが、1.6Lのダウンサイジングターボですからある程度は仕方ありません。
トランスミッション
デュアルクラッチを搭載した7速AT「7G-DCT」を装備。
DCT最大の魅力は、なんといってもトルコン式やCVTでは感じられないダイレクトな変速感ですが、その半面、低速域ではギクシャクとしやすいというネガもあります。
CLAに搭載されるDCTはそのネガを嫌って、低速域ではクラッチを滑らせ気味に制御しています。そのおかげにギクシャク感は解消され、スムーズな変速フィールを実現していますが、同時にダイレクトな変速フィールも薄れてしまいました。
足回りとハンドリング
前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはマルチリンク式サスペンションを装備。
乗り心地
スポーティに引き締まった硬めの乗り味。リアの接地性が高く、高速域では安定した姿勢を維持。フラットな走りでわだちや横風の影響を受けにくいです。
マイナーチェンジによって、乗り心地を重視したコンフォートサスを装備。不快な衝撃は最小限に抑えられています。
荒れた路面ではバタバタと乱れがちですが、比較的キレイな路面では路面に吸い付くような走りをみせます。
ハンドリング
ダイレクト感あふれるスポーティなハンドリング。ドライバーの意図を忠実に再現して、狙ったラインを外すことはありません。前輪のグリップを使って、グイグイと曲がる感じが楽しいです。
低級な微振動も最小限。重さを伴ったしっとり感もあり、プレミアムクラスにふさわしい上質なフィール。
その他
先進安全技術は、「レーダーセーフティパッケージ」を搭載。
このパッケージには、衝突を検知して自動的にブレーキを作動させる「アクティブブレーキアシスト(衝突被害軽減ブレーキ)」。
前車との適切な距離を保ちながら設定された速度で追従する「ディスタンスパイロット・ディストロニック」や、危険を検知してシートベルトを自動的に巻き上げたり、サイドウィンドウの自動クローズやシートポジションの自動調整を同時に行う「PRE SAFE」、斜め後方の死角にいる車をドライバーに知らせる「ブラインドスポットアシスト」、車線逸脱をドライバーに知らせる「レーンキーピングアシスト」といった機能が含まれます。
【試乗評価】のまとめ
ハッチバックボディを持つAクラスと比較すると、後輪へ掛かる車重が増えリア周りの剛性感も向上。軽快な走りの楽しいAクラスに対して、CLAは重厚感を伴った硬めの乗り味。といっても、基本骨格は同じですからそう大きな違いではありません。Cクラスセダンには及びませんが、価格なりの質感も備えています。
前後に長いボディになだらかなルーフが組み合わされ、クーペライクな美しいスタイリングを実現。後席はやや頭上空間がせまく窮屈感がありますが、大人二人が座るには充分です。トランクスペースも大きく容量はAクラス以上。
FRレイアウトを生かしたメルセデスベンツ流の上質な走りを味わうなら、ちょっと無理をしてでもCクラスを買うしかありませんが、「価格なりの高級感とメルセデスベンツのステイタス、カッコいいスタイリングがあれば充分」という人にはこのCLAがピッタリとハマります。
中古車市場では
2017年式「メルセデスベンツ CLA180」で、300万円前後。2013年式の初期モデルなら、200万円台前半(2018年5月現在)。
新車価格
3,790,000円(税込み)
※現在このグレードはカタログから落とされ、「CLA180 AMG Style(404万円)」に変更されています。