トルク特性とは
トルク特性とは、エンジンがどの回転域で最大トルクを出しているのか、トルクの出力曲線がどのような形を描いているのか、といったエンジンの出力の特性のことです。また、トルクとはエンジンが車の軸を動かす、ねばりの強さのことです。
例えば、自動車で常用される回転域は、3000回転以下が多いといわれています。
つまり、最大トルクがこの3000回転以下で発生して、なおかつ緩やかな山型、もしくはなだらかな台形のトルク曲線を描いている場合は、扱いやすい「トルク特性」のエンジンだといえます。
常用する回転域の全域で、大きな力を発生している事を示す事になるからです。
また、逆に低速ではトルクが細く、高回転になると急激にトルク曲線が上がるようなエンジンは、最大パワーは大きいですが、常用域で力の少ない、扱いにくい「トルク特性」のエンジンと言えます。
かつての馬力競争
かつて2Lぐらいのエンジンをターボで過給してやり、自主規制いっぱいの280馬力を絞り出すという事が、メーカー間で盛んに行われていました。
しかし、馬力というのは「仕事率」の事で、最高スピードには関係していますが、日常的に使う低速域ではあまり関係のない数値です。
この当時生まれたエンジンのなかには、馬力ばかり大きくて、低速でトルクの出ない使いづらいトルク特性の車が結構ありました。
これを、「ピーキーな特性でマニア好みの味付け」などといってありがたがっていましたが、本当はただ単に技術的に未熟なだけで、大したエンジンではありませんでした。
ストロークを伸ばすより、ボアアップの方が簡単
カタログを飾る大きな馬力を生み出す為には、エンジン回転を上げてやるのが一番の近道です。
これに伴い、低速トルクも稼ごうとすると、エンジンの「ロングストローク化」という排気量の拡大方法が必要になります。
しかし、このロングストローク化では、お金と手間が掛かりすぎ利益が出にくくなります。
また、回転数も上げにくいため、馬力を上げる事も困難になります。
そこであまり手間もかからず、回転数も上げやすい「ボアアップ」という排気量の拡大方法が盛んに行われるようになり、馬力は大きいが低速トルクは少ないというエンジンばかりが増えていったのです。
ドイツ車のトルク特性
これは、現在の日本の大衆車にも言える事です。
カタログを見れば分かりますが、多くの場合3000回転以上で最大トルクを発生しています。
これはカタログを飾る馬力を、コストを掛けずに出そうとしたのがその原因です。
しかしドイツの大衆車を見ると、エンジンにはしっかりした低速トルクが与えられています。
今は、ダウンサイジングターボエンジンが主流になり、単純に比べるのはフェアでありませんが、このエンジンが普及する以前から、VWのポロという安い車にも、3000回転以下でフラットな低速トルクを発生するエンジンが搭載されていました。
つまり、馬力を追い求めることを止めれば、適正な価格で使いやすい、低速トルク型のエンジンが可能になるという事です。