エンジンは車の個性を決める要素の一つですが、その中でも特に重要なのが「気筒数」と「排気量」です。
一般的に排気量が増えれば、それにともなってエンジン出力も増加します。
気筒数の場合は、4気筒から6気筒、さらに8気筒へと気筒数を増やせば増やすほど、どんどんエンジン回転もなめらかでスムーズになっていきます。
エンジンの出力軸と直結する「クランク」が2回転する間。4気筒エンジンは4回燃焼しますが、8気筒エンジンの場合は8回の燃焼がおこなわれます。つまり「8気筒エンジンの方が4気筒エンジンよりもトルク変動が小さく、力も出しやすい扱いやすいエンジンだ」というわけです。
さらに、同じ排気量なら気筒数の多い方が1気筒あたりの排気量も小さくなりますので、その分、燃焼効率も向上します。
ただし、気筒数が多ければ多いほど優れたエンジンかと問われれば、実際にはそう単純ではありません。気筒数には理論値から求められた最適な数というものがあるからです。
1気筒あたりの最適な排気量は、だいたい500cc前後
一昔前までは「1気筒あたりの最適な排気量」について、設計者の経験と勘によって大体これくらいというあいまいな基準しかありませんでした。
しかし、現在はコンピューターの解析技術が大きく向上して、それに対する理論的な数値が導き出されています。
その数値とは、ズバリ「1気筒あたり400ccから600cc」。大体「500ccくらい」と覚えておけば分かりやすいでしょう。
マルチシリンダー(他気筒)化すればエンジンは大きく重くなる
1気筒あたりの最適な排気量が「500cc」くらいなら、そのまま4気筒(2000cc)から6気筒(3000cc)、8気筒(4000cc)へと気筒あたりの排気量を固定したまま、気筒数だけをどんどん増やしていったらどうでしょう?
これなら気筒数の増加とともに排気量も増え、パワーとスムーズさが同時に向上していくはずです。この手法は多くの高級車で使われる伝統的な手法ですが、実はこれにもデメリットがあります。
気筒数が増えればそれに伴って部品点数も増え、エンジンの重量と体積が大きくなるのです。その分、当然コストも高くつきますから、スペースやコスト要件の厳しい大衆車には向きません。
現在普及している車の多くはFF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式です。FF車は、前輪の周りにエンジンやトランスミッション、ディファレンシャル、ステアリング機構やサスペンション、その他補機類など複雑な部品がぎっしりと詰まっているため、スペースに余裕がありません。大きなマルチシリンダーエンジンを搭載するには少々無理があります。
FF車は元々前輪荷重が大きいため、重いマルチシリンダーエンジンを搭載すると重量バランスを取るのも一苦労でしょう。
コストに優れた4気筒エンジンは大衆車向き
こういった場合にピッタリなのが4気筒エンジンです。4気筒エンジンはコンパクトで構造が簡単なため、小さなFF車のエンジンルームにも楽に入ります。コストも安いため、価格の安い大衆車やコンパクトカー用エンジンとして使っても無理がありません。
ホンダ・オデッセイ(5代目)には、コンパクトで軽量な2.4リッター4気筒エンジンが使われています。オデッセイの車格を考えると3.0リッター6気筒エンジンあたりを積みたいところですが、この4気筒エンジンには6気筒に迫るスムーズで力強いフィールがあります。最近の4気筒エンジンは燃焼解析が進んでいるせいか、結構スムーズで静かです。
僕のレガシィB4(5代目)も、4気筒エンジンです。水平対向エンジンなので単純には比較できませんが、こいつにもまろやかでスムーズなフィールがあります。
マルチシリンダーエンジンは高級車向き
コスト要件が緩く車格も大きい、加えてエンジンルームに余裕のあるLクラス高級サルーンなら、大きく重い大排気量マルチシリンダーエンジンを積んでもそれほど問題はありません。逆に高級車ならではの上質なフィールやパワーを思う存分表現することができます。
しかし、最近は環境意識の高まりとともに、高級車の領域にも4気筒ダウンサイジングターボの導入が増えています。ハイブリッド技術などと組み合わされることも多く、パワーや上質感もまずまずです。もちろん、精密なマルチシリンダーエンジンのフィールには及びませんが。