エンジンの気持ち良さ
エンジンの気持ち良さといえば、トルクの出方やエンジンサウンドなど色々な要素がありますが、やはり一番重要なのは「スムーズさ」と「レスポンス」です。
とくにレスポンスの良いエンジンは、アクセルをぐっと踏めば瞬時に回転が上がり、離せば一瞬で回転が下がるというのが理想です。
4気筒でこれをやろうとすると、フライホイールというエンジン回転のバランスをとっている部品を小さくする必要があります。
しかしフライホイールを小さくすると、今度はエンジンのバランスが崩れスムーズな回転ができなくなります。
といって逆に大きくすると、レスポンスが悪く「もわー」とした気持ち悪いエンジンになってしまします。
この辺のさじ加減がエンジン開発の難しいところでもあります。
このレスポンスとスムーズさの両立を見事にやってのけているのが、ポルシェのフラット6というエンジンです。
このフラット6エンジンは、バランスが非常に良く理論上はフライホイールを必要としません。
シャフトの重さだけで、十分スムーズに回転すると言われています。
この他にスムーズさとレスポンスの良さを両立しているすばらしいエンジンと言えば、ジャガーの12気筒やフェラーリの8気筒、12気筒等があります。
しかし、気筒数を増やせばスムーズになるのは当たり前ですから、技術的な優位性という事ではフラット6に及びません。
パワーとトルクの出方
その他にエンジンの気持ち良さを左右する要素といえば、各回転におけるパワーとトルクの出方があります。
ホンダの高回転型エンジンは、回せば素晴らしいフィーリングと音で、かつ高出力を発する気持ちの良いエンジンです。
しかし、低回転での出力が弱くサウンドも今ひとつです。
これがBMWのストレート6になると打って変わって、各回転域で上質かつスムーズな回転と音を発する気持ちの良いエンジンです。このエンジンは特別高回転型でもないのですが、トルクが低回転からなだらかな曲線を描くように上がってくる使いやすい特性のエンジンです。
BMWの場合、このエンジンの上質な「音」がフィーリングを作る上で重要な役割を果たしています。この上質なフィールのエンジンを称して、「シルキーシックス」とも呼ばれます。
絹のように上質でなめらかな回転フィールを持っているという意味です。
このエンジンは、4000回転以上まわしても上質で緻密な気持ちのいい音を発し、がさつな印象は全くありません。
カム等の補機類に、しっかりコストを掛けて高い精度を出していなければ、こういうフィールは作れません。
古いエンジンにも味がある
ただ、スムーズなエンジンだけが良いフィールを持っているかといえば、そんな事はありません。
古いトヨタセリカのG型エンジンは高回転型ではありませんが、そこを無理に回している感じがとてもスポーティです。
ヨーロッパフォードやオペルのラリーカーのような趣のあるエンジンフィールを持っていました。
大衆車のエンジン
レスポンスやスムーズさというのは確かに良いエンジンの大事な要素です。
しかし「フラット6」や「シルキー6」、「V12」や「V8エンジン」は確かに最高のエンジンですが、これを買えるのは一部のお金持ちだけです。
僕らが買える大衆車の場合は、ある程度割り切って作る必要があるので、むしろがさつさや騒音が独特の味になっていて、そこそこのレスポンスと使いやすい低速トルクを持っていれば、それはそれで素晴らしいエンジンだと言えます。