自動車のシートは、パーツの中で一番ドライバーとの接点が多い重要なパーツです。特に乗り心地や疲労度に対する影響は大きく、シートの出来によって自動車自体の印象も変わります。
適度なコシのある快適なシートであれば何キロ乗っても疲れるような事はありませんが、逆に身体が沈み込んで体圧が集中しやすいシートの場合は、少し運転しただけですぐに腰が痛くなってしまいます。
今回はこういった「座り心地の良いシート」と逆に「疲れやすく座り心地の悪いシート」について、座り心地の因果関係を分析しながら、どのようなシートを選べば疲れにくいのか詳しく解説したいと想います。
日本車のシートは疲れやすい
僕は若い時から腰が悪く、作りの貧弱なシートに座っているとすぐに腰が痛くなります。
三菱ギャランのシート
最初の車、三菱ギャランはシートの作りが悪く、腰痛を誘発しやすいシートでした。ちょっと座ってみた感じはどっしりとしていて快適なんですが、しばらく座っているとすぐに腰のあたりが沈み込んできて、ズキズキと腰が痛み始めるのです。一応「ランバーサポート」という腰回りの圧力を調整する機能を装備していましたが、気休め程度にしかなりませんでしたね。
といっても昔の日本車は大体こんな感じです。腰回りの圧力コントロールがおかしく、変に腰が落ち込む構造のシートが多かったような気がします。ちょっと近場に移動するくらいならフワッとしていて快適なんですが、長距離移動には全く向かない代物です。
マツダ・ランティスのシート
その後、ホンダ・プレリュード、マツダ・ランティスと乗り継ぎましたが、マツダ・ランティスのシートは設計がバブル時代だったこともあって、作りのしっかりとした疲れにくいシートでした。ただ、このシートは表皮が特殊で、ファブリックに滑り止めとしてラバーが編み込んであります。シート表皮に適度な滑りが無いため、ルーズな姿勢で座ると疲れやすかったです。
このあたりで「腰痛を防ぐにはシート構造が重要だ」と考えるようになり、試乗の際はシートについてもじっくりと選ぶようになります。
スバル・レガシィのシート
その後、BH、BMと二台のレガシィを乗り継ぎますが、どちらのシートもコシのあるクッションに柔軟な表皮が組み合わされ、シート構造としてはかなり完成度が高いです。運転中に時々腰をズラして血行を良くしてやる必要はありますが、レガシィに乗るようになって腰痛の悩みからはほぼ開放されています。
このように、最近の日本車であれば、じっくりと選ぶことによって腰痛になりにくい快適なシートを見るけることができます。
といっても日本は畳の国です。一日の移動距離が多く、椅子生活の長い歴史を持つヨーロッパの車には今一歩及びません。
ヨーロッパ車のシートには一日の長がある
ヨーロッパといっても広く、それぞれの国やメーカーによってシートの作り方にも個性があります。
ドイツ車のシート
メルセデス・ベンツは、ガッチリとした硬めのシートを作り、乗り心地は高性能なサスペンションでコントロールするという思想です。重厚感あふれる快適な乗り味は、ここから生み出されています。
同じドイツでもVWは大衆車です。コストを掛けず重厚感と快適性を両立するため、ストロークのたっぷりとしたクッションに、厚めのゴムを組み合わせています。
フランス車のシート
フランスのルノーは、もっちりとした柔らかさとコシのある乗り心地を両立した独特のフィールが特徴です。この味の秘密は、ストロークのたっぷりとしたクッションに柔軟なラバーのコンビネーション。人間が体圧を掛けることによって、身体が少し沈んでキレイに体圧を分散させます。
同じフランス車といってもプジョーのシートは、どことなくドイツ車的な硬さを伴います。ただし、サスペンションにはしなやかな柔軟性があり、鋭い衝撃を車内に伝えることはありません。
古いプジョーの柔軟な乗り味を形容する言葉として「猫脚」がありますが、まさにこの猫脚が現代にも脈々と受け継がれている印象です。
良いシートの確かめ方
車のシートの良し悪しは、ドライバーの体型や好みにも大きく影響されるため、一概にこれが良いシートだとは言いにくい部分もあります。
実際にあなたが車を購入する時は、必ずディラーに行って目的の車の座り心地を確かめてください。「試乗をさせてください」といえば、大概のディーラーは気持ちよく乗せてくれるはずです。
ただし、ショールームに停車している車のシートと、自分がドライブしている時に感じるシートの印象は全く異なります。「自分でドライブしながらシートの座り心地を確認する」というのが重要なのです。
できれば1時間程度ドライブして印象を確かめたいところですが、ディーラー試乗ではせいぜい5分から10分程度乗せてもらえれば良い方でしょう。とても素人がその時間で車の本質を見抜けるとは思えません。
具体的なチェック項目
そこで最後に、具体的なシートのチェック項目につていくつか紹介しておきます。
その前に、まず、下の記事を参考に正しいドライビングポジションを取りましょう↓
正しいドライビングポジションを取ったら、シートが自分の身体に合っているか確認します。自分の身体よりも一回り大きいくらいが、運転しやすく乗り心地も快適だと思いますが、小さくてもしっかりと身体をホールドしていれば問題ありません。ただし、シートが小さく、サイドサポートがしっかりと立ち上がっている場合は、窮屈すぎてすぐに疲れてしまいます。
クッションには適度なコシと硬さがあり、身体が沈みにくいものが理想です。かといってガチガチに固められたシートでは疲れてしまいます。クッションにたっぷりとしたストロークがあれば、柔軟に衝撃を吸収してくれるでしょう。
これに対してシートの表皮には、ある程度のしなやかさや柔軟性が求められます。表皮にしなやかさが無いと、身体の表面が痛くなるからです。
後は、座面の前後長が適正でしっかりとお尻から太ももの裏に掛けて支えているか、背もたれの高さが適切で肩周りから腰に掛けて均一な圧力で支えているかなどをチェックします。
僕のように腰痛持ちの人には、ある程度購入する車が決まった段階で、レンタカーを使った1時間程度のドライブをオススメします。これだけ念入りに確認しておけば、少なくともシート選びで失敗することは無いでしょう。