トヨタは人工知能を開発する新会社を、アメリカのカリフォルニアに2016年1月に設立すると発表しました。
会社名は「トヨタ リサーチ インスティチュート」で、アメリカのスタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学が連携して研究を進め、トヨタは1200億円を拠出する計画ということです。
現在の自動運転が抱える問題
このニュースはトヨタが今後の自動運転技術開発には、「人工知能研究」が重要な役割を担うと考えていることの現れです。
また、今後の自動運転を開発していく上で、この人工知能を含めて大きく3つの問題があるそうです。
一つ目が人工知能開発の問題
二つ目が3D地図の問題
三つ目がビジネスモデルの問題です。
一つ目の「人工知能の開発」は今回のニュースでも取り上げた問題です。
現在のコンピュータ技術は人間が教えたことは正確に行えますが、想定外の事態には対処しにくいといった特性があります。
たとえば、タクシーか普通の車かという識別をするとします。色や形をあらかじめ登録してある車種については、コンピューターは正確に判断できますが、いままで見た事がないような車だと全く判断がつかないという事です。
これを人工知能を使うことにより、人間に教えてもらっていないことでも「予測」「判断」「学習」という機能を使うことで、識別させようということです。
実際の路上では毎日予測出来ないことの連続ですから、自動運転を安全に行おうとすれば、どうしてもこの分野の研究が必要なのです。
二つ目の「3D地図の問題」というのは、自動運転には今までのナビゲーションに使っていた地図とはレベルの違う、より高精度で立体的な地図が必要になるというものです。
この地図の役割は、縁石や障害物を認識して自動運転に使うということと、自車の現在位置を地図上の立体的な建造物と照合することで、より正確に把握するということの二つです。
自動運転では、数メートルの大きさの車が物理的に制限のある路上を、ぶつからない様に走行するわけですから、街中の状況を完全に把握しておく必要があるのです。
この「3D地図」の開発を現在は各社がバラバラにやっており、効率化のためにも日本が自動運転のフォーマットの主導権を握るためにも、共同開発をする必要があります。
最後は「ビジネスモデルの問題」ですが、これは日本が一番不得意なことであると共に、事業収益をあげようとすれば一番重要な分野です。
自動運転が実現すれば、人々は車の中で自由な時間を得ます。その時間に映画を見たり音楽を聞いたり、自動車がスマートフォンのように情報端末化するということです。
また、個人で所有するという意識が薄れシェアし合うようになるかもしれません。
各企業は何を狙っているのか
ここで、Googleが考えているのはおそらく車の車内で広告を見てもらう、スマートフォンのようなビジネスモデルです。
また、トヨタなどの自動車メーカーが考えているのは、今までの自動車製造販売の延長線上にある、ハードの販売と車内コンテンツの販売で利益を得るというアップルのようなビジネスモデルでしょう。
どちらが成功するか今のところわかりませんが、主導権を取った方は自分の得意な分野を中心にしたビジネスモデルを構築して、相手を下請けのように使う事が出来るのです。
スマートフォンでいうと「アンドロイドOS」と「ハードメーカー」のような関係です。
こういう大きなビジネスチャンスを目の前にしている訳ですから、現在、各企業が必死になっているのも当然といえば当然です。