今回の試乗レポートは「ランチア デドラ 2.0 i.e」。
1989年から1999年に渡って製造販売されていた、Mクラスの4ドアセダンです。この他に5ドア・ステーションワゴンがあります。
ランチア・プリズマの正統な後継車種であると共に、フィアット・テムプラや、アルファロメオ155とはプラットフォーム(基本骨格)を共有する兄弟車の関係にあります。
1999年に製造が終了し、その後は、後継車としてランチア・リブラが販売されています。
外観
全長4345mmX全幅1715mmX全高0mmのボディサイズを持ち、ホイールベースは2540mmとなります。
イタリアの名門デザイン・カロッツェリア「I.DE.A」がスタイリングを担当。直線で構成されたシンプルなスタイリングですが、線と面のバランスが絶妙で、なんとも言えない気品と美しさをたたえています。
フロント
直線ベースとしながらも、ボディの角に緩やかな丸みが与えられた優雅なフロントノーズに、角型のヘッドライト、格調高いシルバーモールドで縁取られた縦型のグリルが組み合わされ、気品漂うエレガントなフロントノーズを構成しています。
サイド
がっちりとした分厚いボディに、背の高いルーフと立ち気味のピラー(柱)が組み合わされ、質実剛健で力強いサイドビューです。
リア
ハイデッキ化されたトランク形状が、リアエンドで直線的にカットされ、エレガントでありながら力強いリアビューを形づくっています。
内装
直線基調で構成されたインパネに、上質な木目パネルがはめ込まれ、モダンで品のある室内空間です。横長のメーターナセル内には、見やすいフォント(文字)で5連メーターが装備されます。
アップライトなポジションと見切りの良いボディによって、運転のしやすい車に仕上がっています。
シート
前席には、しっかりとしたパイピングの施された、頑丈なシートが装備されます。表面には適度なたわみがあり、座って体重を掛けることでしっかりとしたコシと硬さが立ち上がります。体圧がキレイに分散するため、長時間ドライブでも疲れが少ないです。
後席にも、前席同様にがっしりとしたシートが装備されます。座面の長さ、シートバックの高さと角度も適正で、長距離ドライブを快適に過ごすことができます。足元、頭上空間ともにたっぷりとしたスペースが確保されており、成人男性二人がすわっても窮屈さを感じることはありません。
荷室
スクウェア(四角)な形状の広々とした荷室が装備されます。荷室容量も大きく、家族4人であれば2泊3日旅行も可能です。
静粛性
エンジン透過音、ロードノイズともに適度に抑えられています。音のチューニングが良いため、気持ちよくドライブをすることができます。
エンジンとミッション
1995ccの直列4気筒DOHCエンジンに、4速ATが組み合わされます。
エンジンは、110ps/5750rpmの最高出力と、15.9kgf・m/3300rpmの最大トルクを発揮します。
車両重量1280kg。10モード/10・15モード燃費は、–km/lとなります。
エンジン
2.0Lのツインカムエンジンで前輪を駆動。低速からフラットなトルクを発生する扱いやすいエンジンです。MT仕様の場合はFF車特有のガクガクとした揺れがありますが、このAT仕様車の場合はトルクコンバーターで揺れが吸収され、スムーズで力強い走りをみせます。ランチアにふさわしい上質なパワーユニットです。
トランスミッション
トルコン式の4速ATを装備。低速トルク型のエンジン特性を十分に活かして、スムーズかつダイレクトな変速を行います。
足回りとハンドリング
前輪にマクファーソン・ストラット式サスペンション、後輪にはトレーリング・アーム式サスペンションが装備されます。
足回り
しっとりとしたしなやかさを持つ上質な乗り味です。目地段差を通過しても不快な衝撃を車内に伝えることはありません。
高速域での安定性も高く、フラットな姿勢を維持してまっすぐに直進します。
ハンドリング
ゆったりとしたハンドリングスピードながら、ドライバーの操舵に対して素直に反応します。狙ったラインを正確にトレースする、気持ちの良いステアリングフィールです。
最小回転半径がやや大きく、狭い路地での切り返しに苦労します。
評価のまとめ
シンプルながら上品でエレガントなスタイリングに、力強く扱いやすいエンジンとトランスミッション。しっとりとした上質な乗り味と素直なハンドリングが組み合わされ、伝統あるランチアの名前にふさわしい高級車に仕上がっています。
しかも室内には広々としたスペースが確保され、荷室容量にも十分な余裕があります。上質な世界観をたっぷりと味わいながら、日常での高い合理性も持ち合わせているわけです。
引退した高齢者や中年期を迎えた人が、大人の価値観を車で表現したいと考えた時、大きな選択肢のひとつとなります。その価値観とは、「大人の色気」とか「エレガント」、「上質さ」といった言葉で表されるものです。
ただし、古いイタリア車ですから、維持管理にはそれなりのお金とランチアに詳しい整備工場が必要となります。
中古車市場では
発売当初から壊れやすいと言われていたランチア・デルタですが、製造終了から20年近くが過ぎ、通常の中古車市場で見かける機会は少ないです。
価格
新車当時の価格 | 3,800,000円