F1レースの走行距離については、FIAのレギュレーションにより厳密に規定されています。ほとんどのサーキット場の場合は、「走行距離が305km以上で、最短の周回数」となります。
この規定だと、ちょうど一周が5kmのサーキットを61周する計算ですが、実際のサーキットの場合はこんなキレイな数字にはなりません。
例えば、日本GPが行われる鈴鹿サーキットの場合は、一周が5.807kmですから、一日のレースで53周走ることになります。第一戦が行われるオーストラリアGPが、一周5.303kmですから、一日のレースでサーキットを53周。第13戦のイタリアGPでは、一周が5.793kmで、日本GPと同じ53周という具合です。
一般道に当てはめて計算すると
この走行距離を身近な地図に当てはめて考えると、東京、日本橋から常磐自動車道を経由して福島県相馬市まで最短距離で向かうと291km、そこからさらに足を伸ばして、宮城県亘理郡というところまで走ればちょうど305kmとなります。
これを2時間以内で走ってしまうのですから、F1マシンがどれだけすごいスピードで走っているのか簡単に想像がつきますね。しかも、F1マシンの走るコースはダラダラとした直線ではありません。急なコーナーや高速コーナーが連続しており、息をつく暇もありません。加えて高速で走るライバルたちの間を、正確なハンドリングで交わしながら走ることも求められます。これを1時間から2時間に渡って連続的に行うのですから、F1ドライバーの精神力と体力には凄まじいものがあります。
その他のレース規定
また、レース時間が二時間を超える場合は、二時間でレースが打ち切りとなります。ただし、途中にアクシデントや気象変化によりレースの中断があれば、その分はレース時間から差し引かれます。また、セーフティカーの先導により周回をしている場合は、その分の周回数を全体の周回数から引いて計算します。
先頭でフラッグを受けたチャンピオンカー以外については、その時点で90%以上の周回数をこなしていれば完走とみなされます。
例外的に走行距離が短いモナコGP
ただし、このレースの走行距離と周回数の規定には例外があります。それは、1929年より国際レースの開催されているモナコGPです。モナコGPは狭い公道を仕切ってコースを設置しているため、極端にコースが小さく、全開走行をする区間が非常に短いです。そのため、レースの最高速度も150kmから160km程度とF1GPとしては非常に遅いです。ただ、遅ければ安全かというと単純にそうともいえません。軽くアクセルを踏み込むだけですぐに次のコーナーへと接近してしまうため、コーナーの端に設置されたガードレールが次々と自分の方に飛び込んでくるように感じられます。
F1ドライバーに言わせると、「モナコGPの体感速度が一番速く感じられる」という程です。そのため、レース中には他のサーキットでは感じられない、強烈なストレスとプレッシャーに常にさらされ続ける事になります。こんな極限状態でレースを続けていたのでは、いくら強靭な肉体と精神を持つF1ドライバーでも持ちません。
そこでモナコGPでは、レースの走行距離を「260km以上で、最短の周回数」というふうに短く定めています。走行距離としては他のF1GPよりもかなり短くなりますが、ドライバーの消耗度を考えるとちょうどいい距離となるわけです。