イギリスの伝統ある自動車会社「ジャガー」は、クラシックカーをベースにして作られた電気自動車「ジャガー E-Type Zero」を発表しました。
The powertrain of the future has met one of motoring past’s most iconic cars as Jaguar has created the E-Type Zero.
クラシックカーが美しいのはなぜ?
最近発売される自動車は、安全技術に対する制約や空力性能への配慮から、どうしてもズングリとしたフォルムになりがちです。
これに対して、こういった技術的制約のあまり無かった時代に作られた、クラシックカーやネオ・クラシックカーと呼ばれる古い車は、シャープで優雅なラインが与えられ非常に美しいスタイリングをしています。
そんなこともあって、中高年以上の車好きを中心に「昔のスタイリングをそのまま活かして、中身だけを最新にしてくれたら最高なのに・・・」といった声が聞かれます。まあ、これには多少自分の青春時代に対するノスタルジーも含まれるのですが、最近の車がズングリとしているのは疑いようもない事実です。
こんな事を考える自動車好きはイギリスにもいるようで、ジャガーは1968年製の古い「ジャガー E-Type ロードスター」をベースに、電気モーターとバッテリーを取り付けて電気自動車に改造した「ジャガー E-Type Zero」というプランを発表しています。
ベース車輌の「ジャガー E-Type ロードスター」について
ベース車輌の「ジャガー E-Type ロードスター」は、1961年から1975年にかけて製造販売されていた2座のオープンスポーツカーです。
ジャガーXKの実質的な後継車で、アメリカではその美しいスタイリングと優雅な乗り味、スポーティなハンドリングが受けて大ヒットを記録しています。
アメリカでの安全基準を満たすため、3度のマイナーチェンジが行われていますが、今回の「ジャガー E-Type Zero」は、そのうち2度目のマイナーチェンジを受けた「シリーズ2」がベースとなっています。
この美しいスタイリングはかつて1950年から1960年代にかけてジャガーに在籍していた名デザイナー、マルコム・セイヤーによるものです。
「ジャガー E-Type Zero」の動力性能
この「ジャガー E-Type Zero」のフロントノーズには、オリジナルの「4235cc直列6気筒エンジン」とほぼ同じサイズと重量の電気モーターと、40kWhのリチウムイオン電池バッテリーがそのまま収まります。
5.2秒で時速62マイル(時速99.8km)まで加速することが可能で、満充電からの航続可能距離は170マイル(273.6km)となります。
外観と内装
外観を眺めるとほぼオリジナルの状態がそのまま維持されています。ただし、リアにまわると横型の薄いリアコンビランプは廃止され、縦型の近未来的なLEDリアコンビランプが装備されています。リアコンビランプの間にはフューエルリッドを模した蓋が取り付けられ、その中には充電用のコンセントが格納されています。
運転席に座ると、構造自体はオリジナルをそのまま流用しているものの、パネルにアルミやカーボンが多用され、クラシックな趣と近未来的な印象が上手に溶け合っています。
眼前に装備されるステアリングはオリジナルのままの美しい木目が印象的です。ただし、メーターナセル内にはデジタル式の近代的なメーターが装備され、ダッシュボード中央には大きな液晶画面によるインフォメーションパネルが装備されます。
内装には現代的なデバイスが多用されていますが、全体のクラシックな印象を損なうことはなく、クラシックカーを使ってエアカーに仕立てたような、近未来感あふれる面白さがあります。
「ジャガー E-Type Zero」の目的
この「ジャガー E-Type Zero」は、そのまま市販車として販売されたり、実際のクラシックカーを電気自動車に仕立てる為のサービスではありません。
電気自動車が主流となった近未来社会においてクラシックカーが生き残るには、どのような可能性があるのか調査するのが主な目的です。