現代のラリーでは、ターボチャージャーはごくありふれた技術ですが、この技術が始めてラリーカーに装備されたのは、スウェーデンの「サーブ・ターボ(サーブ 99 ターボ ラリー)」からです。
このサーブ・ターボは、1978年12月に開催されたRCAラリーに、G4仕様のラリーカーとして参加しています。
G4仕様はエンジンの改造幅が幅広く認められたカテゴリーであったため、ターボによる強力なエンジンを積むことが可能だったのです。
このエンジンにはターボ過給によって255馬力という強力なパワーが与えられていたのですが、フロントのドライブシャフトがこのパワーに絶えきれず、この年はあえなく途中リタイアという結果に終わっています。
ターボエンジンで初のラリー優勝
しかし、このサーブターボは再び翌年のスウェーデンラリーにも参加し、今度は総合優勝を飾っています。
この年のマシンは前年と異なり、最高出力240馬力に最大トルクが35.0km/mという僅かにデジューンされたエンジンが搭載されていました。
ドライブシャフトの強化と共にエンジンの出力特性を変え、最高出力よりも常用される中低速トルクを充実させていたのです。これによってマシンの耐久性を上げながら、実際のレーススピードも向上させるという一挙両得が可能になっています。
この時のエンジン出力は、よりカテゴリーの低いG2仕様に近いスペックでした。にも関わらず、その他のライバルを押さえつけて優勝を飾っているのですから、マシンの速さには最高出力よりも「そのステージに合った最適な出力特性の方が大切なんだな」とあらためて感じさせられるエピソードです。
その後のラリーにおけるターボエンジン
その後ラリーにおけるターボエンジンは、アウディ、ポルシェ、ルノーなどによって幅広く採用されていき、今ではWRCの標準的な技術となっています。
全盛期の「三菱・ランサーエボリューション」や「スバル・インプレッサWRX」なども、個性的で魅力あふれるターボエンジンが印象に残っています。
現在発売されている「スバルWRX」は、メーカーが直接サポートするラリーカーとしては扱われていません。しかし、当時の技術を使った魅力的なターボカーとして現在にその技術を脈々と伝えています。
ヤリスWRCに搭載されるターボエンジン
今年からWRCに再び挑戦を開始したTOYOTA Gazoo Racingの「ヤリスWRC」にも、380馬力の1.6リッター直噴ターボエンジンが搭載されています。
このヤリスWRCには、市販されるロードバージョンが予定されていますが、ロードバージョンには210馬力前後のターボエンジンが搭載されるのではという噂です。
コンパクトなヤリスのボディに、210馬力に過給されたターボエンジン+マニュアルトランスミッションとくれば、これはもう間違いなく楽しいに違いありません。
ラリーカーのターボ技術を手軽に楽しむ事のできる「ヤリスWRC」の市販、待ち遠しくて仕方がありませんね。
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